評価年月日 平成23年5月20日
評価責任者:国別開発協力第1課長 清水茂夫
キリバス共和国
ベシオ港拡張計画
本計画は,ベシオ港の定期外国貿易貨物コンテナ船が直接接岸できる係留施設を整備することにより,現状の沖取り荷役を解消するとともに,効率的な港湾荷役機械の導入及び船舶の安全航行に不可欠な航行支援施設の更新を行い,港湾の安全性及び効率性を向上させるものである。供与限度額は,30億5,200万円であり,係留桟橋,連絡橋,港湾荷役機械,航路標識の整備を行う。
以下の事項がキリバス共和国政府により実施される必要がある。
(1) 管理運営体制の整備と要員の配置転換
(2) 施設の安全管理
(3) 施設の適正使用と維持管理
(1) キリバスは,広大な海域に33の環礁が散在しており,太平洋島嶼国の中でも,国土の拡散性及び国際市場からの地理的隔絶が最も顕著である。また,国土は一部を除き,平坦な環礁からなり,農耕に適さないことから,食料品をはじめ,大部分の生活物資を輸入に依存しており,海運分野の開発は同国国民の生活及び経済活動を支える生命線となっている。そのため,同国の第8次国家開発計画(2008~2011)では,1)人的資源の開発,2)経済成長と貧困削減,3)健康,4)環境,5)ガバナンス,6)インフラ整備を重点分野とし,そのうち経済成長と貧困削減及びインフラ整備において,経済基盤としての空港,道路,海運,通信等の整備・改善を挙げている。
(2) 同国のベシオ港は,外国貿易貨物を扱う同国で唯一の国際港であり,また散在する島嶼部を結ぶ国内海上輸送の拠点としても重要な役割を果たしている。しかし,国際貨物のコンテナ化の進行とベシオ港の構造上の問題により,荷役作業の遅延によるコンテナ船の在港時間の長時間化が輸送コストを上昇させ,国内の物価上昇の一因となっている。また,コンテナ船が海上輸送の主流となっている現在,周辺国でも,直接コンテナ船が着岸できる岸壁を有していないのは同国のみであり,ベシオ港の整備が急務となっている。
(1) 要請書では,桟橋の位置を計画水深が得られる位置に設置する案と,桟橋は陸寄りに設置して前面海域の浚渫(しゅんせつ)により計画水深を確保する案が提案されていたが,両者を比較検討した結果,桟橋の全面海域の浚渫を行う場合には,維持浚渫が不可欠となること,浚渫時の土砂攪拌に伴う濁りの発生が環境影響の観点からも負の影響を伴うことから,桟橋の沖合いでの建設の案を選定した。
(2) 荷役用機材については,係留桟橋及びコンテナヤードでの新しい荷役システムを考慮し,コンテナ船の輸送能力及び港湾公社による調達数も勘案して最小限の機材を整備することとした。
(3) 航路標識については,既存の航路標識の設置状況を基本として,老朽化あるいは流出したものを更新するともに,沈船位置を示すための障害物表示標識や係留桟橋の位置を示す必要最小限の標識を整備することとした。
(1) 本件の実施により,以下のような成果が期待される。
(イ)コンテナ運搬距離の短縮(海上1,500メートル及び陸上200メートルから陸上600メートルに短縮)及び沖取り荷役の解消により,コンテナの荷役効率が向上し,コンテナ船のベシオ港係留時間が従来の平均44.4時間から15.2時間(約3分の1)に短縮される。
(ロ)コンテナ船の係留時間が短縮されることで,キリバス国内に流通する輸入物資の価格に占める輸送コストの低減が図られ,物価抑制への波及効果が期待される。
(ハ)航路標識の整備によって,夜間にベシオ港への航路を航行する船舶の安全性が向上するとともに,夜間の出入港が可能となる。
(1)キリバス共和国政府からの要請書
(2)JICAの事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)