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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成23年4月22日
評価責任者:国別開発協力第三課長 石塚英樹

1.案件名

1-1.供与国名

ヨルダン・ハシェミット王国

1-2.案件名

南部地域給水改善計画

1-3.目的・事業内容

ヨルダン南西部タフィーラ県の送配水システムの安定化と効率化を目的に,配水池の建設,ポンプ場の増改築とともに,ポンプ設備,送水管,減圧装置,配水測定設備等の整備を行う。送配水の測定システムを併せて構築することで,維持管理技術の移転を図る。(供与限度額19.11億円)

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

(1)本件は,大規模揚水,用地取得,住民移転などは発生しない上水道案件であるため,JICA環境社会配慮ガイドラインにおいてカテゴリーC(環境社会への影響が最小限)に分類される。

(2)案件実施に際し,ヨルダン側にて必要な予算措置・人員割当てを含む先方負担事項が実施され,案件完了後も適切な維持管理がヨルダン側にて図られる必要がある。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)ヨルダンの1人あたりの水の利用可能量は,世界平均の7,700立方メートル/年に対し150立方メートル/年に留まる。2007年発表の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次報告では,中東地域全体が気候変動により水利用の可能性が減少する地域に特定されているが,同域内においてもヨルダンの水資源量は極端に少ない。

(2)本計画の対象地域タフィーラ県は,起伏が激しい南部地域の高原に位置し,年間降水量は100ミリメートル以下に留まっている。この地域は,井戸を水源とした配水池から給水されているが,起伏が激しく適切な配水管理が難しい地形となっており,送配水時の無駄が多く,取水量の47%は途中で失われている。一部地区では給水が週1~3日に制限される事態が恒常化しており,水配分の公平性も大きな課題となっている。

(3)ヨルダン政府は,安定的な給水のため効率的な水道システムの整備に取り組んでおり,本計画の対象地域においても,2025年を目標年とする送配水網改善の基本計画を策定している。しかし,ヨルダン政府の財政状況の悪化から新規公共事業の実施が困難な状況にある。また,山岳地帯にある本件対象地域は,同一配水区内で最大275メートルの高低差があるため,配水管工事等で高い施工技術が求められる。

(4)本件は,我が国の対ヨルダン支援の重点分野である貧困削減・社会的格差の是正にも合致し,我が国の技術を活用しつつ漏水等の水の無駄を減らし,取水量の抑制と給水量の増加に寄与するものである。

2-2.効率性

(1)当初要請にあった対象地域のうち,給水状況が比較的良好で,設備の整備ではなく管理の適正化によって水の無駄が軽減できると判断された地域については,本件計画の対象から除外した。これにより,本件協力は,際立って起伏が激しく,減圧施設の設置等の高い施工技術が求められる地域に特化することとなった。

(2)特に高い品質が求められない資材類(コンクリート,パイプ等)については,コスト削減のために現地調達を計画している。

2-3.有効性

(1)対象地域(人口約4.8万人)への送配水が安定化し,1人1日あたりの利用可能な水量の改善(84リットル/2010年→96リットル/2015年)が図られる等,これまで無駄になっていた年間35.2万立方メートルの水を有効利用できる(適応策)。

(2)送配水のエネルギー効率が向上することにより,年間消費電力が3,438メガワットアワー抑制され,年間2,132トンのCO2が削減される(緩和策)。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)JICA基本設計調査報告書

(2)2003年度対ヨルダン国別評価報告書
 (www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/gai/jordan/kn03_01_index.html

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