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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日 平成23年12月9日
評価責任者:アフガニスタン支援室長 有馬 裕

1.案件名

1-1.供与国名

 アフガニスタン・イスラム共和国

1-2.案件名

 「中央高地3県における学校建設計画」

1-3.本プロジェクトの目的

 中央高地3県(バーミヤン,ゴール,ダイクンディ)において,体育設備を備えた学校70校を建設する(2階建て16教室の学校を県中心部に9校,8教室程度の学校を地方に61校建設)。教員等学校関係者の研修,衛生教育の実施。供与額は18.95億円。

1-4.環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

 円滑な事業実施のため,今後バーミヤン県,ゴール県,ダイクンディ県における治安状況が著しく悪化しないこと。

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)アフガニスタンでは,30年以上に亘る戦乱及び数年間続いた旱魃の影響を受け,教育インフラを含む国内の基幹インフラの大半が破壊された。2002年以降,アフガニスタン政府は,国際社会の協力の下,国家再建及び社会・経済発展のための復興・開発努力を続けており,教育分野においては,かかる努力により就学者数,学校数が増加しており,相当程度の改善が見られるものの,全国500万人の児童は未だ基礎教育へのアクセスが限られている。

(2)アフガニスタン政府はこうした状況を改善するため,「アフガニスタン国家開発戦略(ANDS)」,また,同戦略に基づき具体的な成果目標と活動計画を定めた「国家教育戦略5ヶ年計画(NESP)」を策定し,教育分野の改善に取り組んでいる。

(3)本案件対象地域である3県(バーミヤン,ゴール,ダイクンディ)は,国内で最も貧しい地域といわれており,中央高地というアクセスが困難な遠隔地域であること,また,比較的平和が保たれていたことから,アフガニスタン政府及び国際社会から十分な開発支援を受けられておらず,国内外からの支援を必要としている。
 同3県は,教育を通じた人材育成への熱意が高いことから就学率及び女子就学率が比較的高く,教育支援に対する高いニーズがある。

(4)また,本年7月に開始されたアフガニスタンにおける重要な政治プロセスである治安権限移譲の流れを不可逆的かつ円滑に進めていく上で,地域住民が開発の恩恵を実感することが極めて重要な課題の一つとなっている。本案件対象地域であるバーミヤン県,ゴール県及びダイクンディ県への支援は,かかる課題の達成に貢献するものである。

2-2.効率性

(1)「カブール市教育施設建設計画」(カブール市に51校の学校を建設)において,UNICEFと連携して支援を実施しており,UNICEFはアフガニスタンにおける学校建設における知見を有している。また,本件対象3県においては,草の根・人間の安全保障無償資金協力によって学校建設を行ってきており,本件との補完的な効果が見込まれる。

(2)人口の多い県都には2階建て16教室の学校を建設し,地方には現地の資機材を利用して建設する8教室程度の簡易な学校を建設するなど,現地のニーズに応じた学校建設を実施する。また,学校建設のプロセスにおいて,地域コミュニティとの協力を図ることにより,現地の事情に即した事業の遂行が可能となる。

2-3.有効性

 本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
(1)校舎のない学校に通う生徒や不十分な環境(テント教室や廊下での授業等)での就学を余儀なくされている生徒約50,000人が,よりよい環境の中で教育を受けられるようになる。

(2)校長,教師(約350人)への児童教育研修により,児童がより学びやすい環境が形成される。

(3)学校建設,運営能力に係る教育省関係部局の能力向上が図られるとともに,対象地域コミュニティにおいては,学校建設に係る技術的な知識及び経験が共有され,今後地方で学校を建設するための知見が蓄積される。

(4)学校が建設され,児童が安全に学べる環境が整備されることにより,地域住民が「平和の配当」を実感することができ,本件対象地域における不可逆的かつ円滑な治安権限移譲の進展の一助となる。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)UNICEFからの要請書

(2)平成20年度「カブール市教育施設建設計画」(UNICEF連携)進捗報告書
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