評価年月日:平成22年3月26日
評価責任者:国別開発協力第二課長 小野日子
(1)供与国名
パキスタン・イスラム共和国
(2)案件名
全国基幹送電網拡充計画
(3)目的・事業内容
パンジャブ州(チスティアン、グジュラート、ラホール)及びシンド州(シカルプール)において送電線及び変電所の新設・増設を行うもの。
(イ)主要事業内容
(ロ)供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
233.00億円 | 1.2% | 30(10)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(イ)EIA(環境影響評価):チスティアン及びグジュラートの変電所及び関連送電線については2008年12月にパンジャブ州環境保護庁により承認済み。ラホール及びシカルプールの変電所及び関連送電線については、2010年4月までに作成し、2010年7月までに該当する州の環境保護庁から承認を得る予定。
(ロ)用地取得:約58ヘクタール、住民移転:発生しない
2011年6月までに用地取得・補償の手続きが完了する予定。
(ハ)外部要因リスク:特になし。
(1)必要性
(イ)開発ニーズ
パキスタンでは過去10年において年率7%増という電力需要の急増により需給ギャップが急激に拡大していることを背景とし、2009年夏期に4,000~5,000メガワットの需給ギャップが発生し、全国規模で1日計約10時間の計画停電が行われている。これらの需給ギャップに対応するため、発電能力を拡大するとともに、送配電設備を整備することが急務となっている。このような状況を踏まえると本計画のニーズは大きい。
(ロ)我が国の基本政策との関係
2005年2月に策定した我が国の対パキスタン国別援助計画においては、経済協力の方向性を、(a)人間の安全保障の確保と人間開発、(b)健全な市場経済の発達(c)バランスのとれた地域社会・経済の発達としており、特に、(b)においては、市場経済活性化と貧困削減を支援する経済インフラの拡充と整備を重点分野の1つに掲げている。加えて、エネルギー分野での支援は昨年11月に発表した「アフガニスタン・パキスタンに対する日本の新たな支援パッケージ」における重点分野でもあり、本計画は、送配電設備の整備という観点から、我が国の基本政策とも合致する。
(2)効率性
1)本計画により整備される送変電施設については、実施機関等の維持管理能力向上を図る技術協力プロジェクトを今後実施する予定としており、効率的な維持管理が図られる。
2)また、これまで水利電力開発公社により行われてきた慣例的な手続きについては、実質的に機能しなくなったため、事業の効率的な実施のために廃止する他、役員会の開催までに多大の時間を要していたものを、持ち回りでの役員会承認にするなど、入札手続きのプロセスの短縮により効率姓を高めている。
(3)有効性
拡大を続けるパキスタンの電力供給に対して、安定的かつ効率的な送電網を拡充することにより、既存の変電施設及び送電線の負荷を低減し、パンジャブ州及びシンド州における対象地域の経済の活性化及び生活基盤の改善が期待される(完成2年後(2015年)見込み:送電端電力量10,637ギガワットアワー)。また、パキスタンの経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。
要請書、これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html )、その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。