評価年月日:平成22年2月1日
評価責任者:国別開発協力第三課長 石塚英樹
(1)供与国名
イラク共和国
(2)案件名
中西部上水道セクターローン
(3)目的・事業内容
イラク中西部地域の3県(ニナワ県、アンバール県、サラハッディーン県)において、取水施設、浄水場の補修及び増設、送配水施設等の整備を行うことにより、上水供給状況の改善を図り、もって同地区及び同国の経済・社会復興に寄与するもの。
(イ) 主要事業内容
県 | 既存施設の補修 | 新規施設の増設 |
---|---|---|
ニナワ県 | 浄水場(41,400立方メートル/日)、 取水施設、送配水施設 |
浄水場(206,400立方メートル/日)、 取水施設、送配水施設 |
アンバール県 | 浄水場(32,400立方メートル/日)、 取水施設、送配水施設 |
浄水場(72,000立方メートル/日)、 取水施設、送配水施設 |
サラハッディーン県 | 浄水場(64,800立方メートル/日)、 取水施設、送配水施設 |
浄水場(110,400立方メートル/日)、 取水施設、送配水施設 |
(ロ) 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
412.74億円 | 0.65% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(イ) EIA(環境影響評価):本件計画は、環境に影響を及ぼしやすいセクター、影響を受けやすい地域には該当せず、本件計画による環境への望ましくない影響は重大ではないと判断される。
(ロ)土地収用及び住民移転:計画予定地は、一部を除き国有地である。住民移転を伴わない。
(ハ)外部要因リスク:対象地域の治安情勢は改善傾向にあるほか、事業実施に当たって安全確保に最大限の措置を講ずる。
(1)必要性
(イ)開発ニーズ
中西部地域では、湾岸戦争後、水道関連施設の整備が殆ど行われず、取水・浄水能力が低下し、上水供給量は需要を著しく下回る状況にある(ニナワ県バーシカ・ハムダニヤ地区:日最大需要量約138千トンに対し供給量約23千トン。アンバール県ハディーサ地区:日最大需要量約54千トンに対し供給量約18千トン。サラハッディーン県ベイジ・シニーヤ地区:日最大需要量約94千トンに対し供給量約36千トン。)。また、送配水設備の老朽化が進んでおり、漏水率は45%から60%程度と高いレベルにあると推定されるほか、配水管の老朽化に起因する下痢や感染症などの被害も各地で報告されている。イラク政府は、国家開発戦略(2007~2010)において、安全な飲料水へのアクセス率向上、漏水率の低下、配水網の改善等の上水分野の復興を重要課題に掲げ、その実施に取り組んでいる。かかる状況を踏まえると本件計画のニーズは大きい。
(ロ)我が国の基本政策との関係
我が国は、「生活基盤整備」を対イラク支援の重点分野の一つに設定している。本件計画は、右重点分野の中で重点課題「上下水道・環境の質向上」の下に位置付けられる「上水・都市衛生プログラム」に合致するものである。
(2)効率性
上水関連施設の運営・維持管理等の分野では、我が国はこれまで約250名のイラク人に対し研修を実施してきており、本件計画との高い相乗効果が見込まれる。また、本件計画の実施に際しては、進捗状況を適切に監理することで案件の効率性が確保される。
(3)有効性
本件計画の実施により、イラク中西部において、一日あたりの給水時間の増大(2009年12時間→2020年(事業完成2年後)20時間)、給水可能な世帯数約85,000戸増加(2009年約26,500戸→2020年(事業完成2年後)約111,500戸)が見込まれる。また、安全な水へのアクセス向上、生活の質の改善等を通じて、イラクの貧困削減に寄与することが期待される。
要請書、これまでの国際協力銀行環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html )、その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/anken/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html )及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。