評価年月日 平成20年6月18日
評価責任者 有償資金協力課長 宮原隆
(1)供与国名
イラク共和国
(2)案件名
クルド地域上水道整備計画
(3)目的・事業内容
本計画は、イラク北部クルド地域のハラブジャ市、スレイマーニーヤ市、エルビル市及びドホーク市において取水施設、浄水場の新設・拡張、送配水施設等の整備を行うもの。
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
342.66億円 | 0.65% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
注:コンサルティング・サービス部分は金利年0.01%。
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(イ)EIA(環境影響評価):2007年11月、クルド自治政府環境省により承認済み。
(ロ)用地取得及び住民移転:不要。
(ハ)外部要因リスク:治安の変化、経済情勢の変化。
(1)必要性
(イ)開発ニーズ
イラクにおける上水供給状況は、1991年の湾岸戦争以前には、近隣諸国の中でも良好であったが、その後の経済制裁や紛争等により十分な維持・管理、拡張等が行われず、状況は著しく悪化した。特にフセイン政権下ではクルド地域の水道関連施設の整備が殆ど行われなかったため、取水量・浄水能力が低下し、加えて送配水設備の老朽化が進んだ。その為、同地域は、給水制限を余儀なくされ、給水時間はスレイマーニーヤ県及びドホーク県では1日約1時間、エルビル県でも1日4~5時間と極めて不十分な給水状況となっている。2007年夏には、同地域においてコレラの症例が数多く発生したが、これは水質悪化及び水道関連施設の老朽化・不足がその主な原因とされており、クルド地域における上水道整備は喫緊の課題となっている。このような状況を踏まえると、本件のニーズは大きい。
(ロ)我が国の基本政策との関係
2003年の対イラク武力行使後のイラクが中東地域の安定勢力となるために、わが国を含む国際社会は、協調して平和の定着と国づくりへの支援を進めてきている。わが国はこうした国際的なイラク復興支援の枠組みの下、自衛隊派遣による人的貢献とODAによる支援を「車の両輪」としてイラク復興支援を実施してきた。ODAによる支援については、2003年10月のマドリッド会合において、当面の支援として電力、教育、水・衛生等イラク国民の生活基盤の再建及び治安の改善に重点をおいた総額15億ドルの無償資金供与、2007年までの中長期的な復興需要に対しては、上記の分野に加え、電気通信、運輸等のインフラ整備も視野に入れて、基本的に円借款により、最大35億ドルまでの支援を行うことを表明した。このうち、無償資金協力については、既にプレッジ額を上回る16.9億ドルの支援を実施済みであり、わが国支援は無償資金協力によるものから、円借款へと軸足を移しつつある。本案件は、このような状況の中で、円借款によりインフラを整備するものであり、わが国の基本政策に整合するといえる。
(2)効率性
本計画の実施において進捗状況を適切に監理することにより、案件の効率性が確保される。
(3)有効性
本計画の実施により、上水道供給能力の改善による民生の向上を図り、もってイラクの経済・社会復興に寄与することが期待される。また、日イラク経済関係が強化され、二国間関係の増進、さらにはわが国の安全と繁栄の確保に資することになる。
要請書、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html )、その他国際協力銀行より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力銀行のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/archives/jbic/news.html )及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力銀行が行う予定。