評価年月日 平成20年3月18日
評価責任者 有償資金協力課長 宮原隆
1.案件概要
(1)供与国名
ベトナム社会主義共和国
(2)案件名
フエ市水環境改善計画
(3)目的・事業内容
本計画は、ベトナム中部の主要都市のひとつであるフエ市のフォン川流域市街地において、新市街地側の下水道施設及び排水施設を整備するもの。
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
208.83億円 | 0.55% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(4)環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
(イ)EIA(環境影響評価):2007年12月にトゥア・ティエン・フエ省政府の承認済み。
(ロ)用地取得及び住民移転:約10ヘクタールの用地取得が発生する見込みであり、国内手続きに従い進められる予定。住民移転は発生しない見込み。
(ハ)外部要因リスク:特になし。
2.資金協力案件の評価
(1)必要性
(イ)開発ニーズ
ベトナムは工業化及び都市部への人口集中に伴い、都市部の産業廃水及び生活排水が増大する一方、下水道システムの整備が進んでおらず、汚水が直接河川に放流されているため水環境汚染が深刻である。
フエ市では、近年の人口増加による生活排水の増加や病院・ホテル等の公共施設からの排水の流入により、市街地の中央を流れるフォン川や城郭内の水路は水質汚濁が進行しており、かつての水の都の様相は失われている。更に、市街地は主に平坦な低地に立地していることに加え、水路網の不備等に起因して、過去10年の記録では年間1~7回の浸水に見舞われており、市民生活や世界遺産である旧市街地への影響は避けられない状況となっている。このような状況を踏まえると、本案件のニーズは大きい。
(ロ)我が国の基本政策との関係
我が国は、対ベトナム国別援助計画において、1)成長促進(投資環境整備、中小企業・民間セクター振興、経済インフラ整備(運輸交通、電力、情報通信)、成長を支える人材育成、国営企業改革などの経済分野の諸改革)、2)生活・社会面での改善(教育、保健・医療、農業農村開発/地方開発、都市開発、環境)、3)制度整備(個別セクターに関連した制度整備、法制度整備、行政改革(公務員制度改革、財政改革))を3つの重点分野としている。本計画は、4)生活・社会面での改善に該当し、我が国の基本政策に整合する。
(2)効率性
本案件の実施において進捗状況を適切に監理することにより、案件の効率性が確保される。
(3)有効性
本計画により、汚水処理能力の向上及び浸水被害の軽減が図られる。また、長期的には、フエ市の生活衛生環境の改善、フォン川の水質改善に、ひいては二国間関係の緊密化に寄与することが期待される。
3.事前評価に用いた資料、有識者等の知見の活用
要請書、環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/archives/jbic/index.html )、その他国際協力銀行より提出された資料。
案件に関する情報は、交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html)、借款契約締結後公表される国際協力銀行のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/archives/jbic/news.html )及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html )を参照。
なお、本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力銀行が行う予定。