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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日平成18年5月24日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生


1.案件名

1-1.被供与国名
 タンザニア連合共和国

1-2.案件名
 「ザンジバル市街地給水計画」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
 タンザニアは東部、南部アフリカの安定勢力として近隣諸国との友好関係に努めており、対アフリカ外交上の拠点国と位置づけられることから対アフリカ援助の重点国として、その発展を支援し、良好な二国間関係のさらなる強化を図ることは、我が国外交上の資産ともなりうることから、従来より基礎生活(BHN)分野及び基礎的なインフラ整備の分野において、経済社会開発の面から優先度が認められるものについて積極的に援助を実施してきた。
 今後、セクター・プログラムや援助協調の動向に留意しつつ、(1)農業・零細企業の振興のための支援、(2)基礎教育支援、(3)人口・エイズ及び子供の健康問題への対応並びにその一環としての基礎的保健医療サービス向上、(4)都市部を中心とする基礎インフラ整備等による生活環境改善、の優良案件につき実施を検討していく。

2-2.対象国の経済状況
(1) 所得水準(1人あたりのGNI)は300ドル(2002年)
(2) 主要産業は、農業、観光業及び鉱物資源産業。
(3) 社会主義経済政策を推進していたが、石油危機や対ウガンダ戦争、旱魃の影響により、80年代に入り経済は危機的状態になり、86年以降、世銀・IMFの支援を得て経済改革に着手した。
 GDP成長率は2003年度7.1%、2004年度6.3%と順調であり、一人当たりGNPも97年の210ドルから2004年330ドルと順調に推移している。財政は歳出超過であるが、貧困削減戦略ペーパー(PRSP)の策定を終え、ドナーの協力を得つつ、その実施に取り組んでいる。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1) タンザニアでは、「国家水政策(1991年策定)」において、給水事業における住民参加促進、受益者による運営維持管理費用の負担、安全な水と衛生に関する啓蒙活動促進などを基本政策としつつ、全国的に衛生的かつ安全な飲料水の供給施設を整備することを目標としている。
(2) しかしながら、財政難により給水施設の老朽化が進行し、水の需要に対して供給能力が極端に不足している。本計画対象地域の水道への接続率は90%であるが、給水能力の不足から長時間の断水が余儀なくされるほか、汚水の流入等により水質が悪化しており、水質、水量とも不十分であり、衛生面においても劣悪な状況となっている。
(3) このような状況の下、タンザニア政府は、給水事情の劣悪なザンジバル州の給水環境を改善するために必要な給水施設の建設に必要な資金につき、我が国に対し無償資金協力を要請してきたものである。

2-4.我が国の基本政策との関係
 タンザニアは、アフリカにおける最重点援助国であり、また、従来より基礎生活(BHN)分野及び基礎的なインフラ整備の分野において、経済社会開発の面を重視しつつ積極的に援助を行う方針を掲げており、本案件は我が国の対タンザニア支援の基本政策に合致している。
 また、我が国の対アフリカ外交の基軸であるTICADプロセスにおいても、水分野を含む人間中心の開発を重点事項として位置づけており、本案件は我が国の対アフリカ開発支援策とも合致している。

2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
 タンザニアは本件計画の実施を高い優先順位を付して要請してきている。ザンジバル市街地は、財政難のため給水施設の老朽化が進行し、水の需要に対して供給能力が極端に不足し長時間の断水が発生している。給水事情改善を目的とする本件計画は、社会経済開発の改善に資することとなり、実施することによる効果は大きい。
3.案件概要

3-1.本プロジェクトの目的
 本計画は、ザンジバル都市部に深井戸、配水池及び配水管等の建設を行い、都市部の給水事情改善を目的としている。

3-2.実施内容
 供与限度額は12億3,000万円(第一期分)であり、ザンジバル州都市部の給水施設整備を行うものである。

3-3.環境社会配慮など留意すべき点
 以下の事項がタンザニア政府により実施される必要がある。
(1) 本計画により整備された施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること

3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
(1) 対象地域における給水能力の向上(40,100m3/日から54,100m3/日へ向上)。
(2) 配水システム改善による需要ピーク時への対応能力の向上(需要ピーク時の必要給水水圧が確保できる範囲が現在の50%から90%に向上)。
(3) ザンジバル都市部457,000人への裨益(安全な水の安定供給)。

3-5.外交上の効果
(1) 今回の協力は、昨年4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議において小泉総理大臣が表明したアフリカ支援の一環として実施されるものであり、我が国の顔が見える案件として、その外交的インパクトは大きい。
(2) 本件はザンジバル住民が実現を待望していた案件である。タンザニアはインド洋上の2島からなるザンジバル共和国と大陸部のタンガニーカ共和国からなる連合共和国であり、本件はザンジバルにおける水供給の状況の改善のために支援を行うものである。ザンジバル政府も本件実施のため水政策関係法案を制定したこともあり、本件をタイミングよく支援することは、我が国がザンジバルを含むタンザニア全土に対する支援を行っていることを示すことになり、そのことによる外交的効果は大きい。
(3) このように、本件の実施は我が国とタンザニアの友好関係を増進するのみならず、アフリカ地域全体における我が国のリーダーシップと友好関係を強化するものである。
4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1) タンザニア政府からの要請書
(2) JICAの基本設計調査報告書(平成17年8月)(JICAを通じて入手可能)
(3) 第26回無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/kaikaku/ugoki.html


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