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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日平成18年5月24日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生


1.案件名

1-1.被供与国名
 パラグアイ共和国

1-2.案件名
 「アスンシオン大学病院移転及び整備計画」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
(1) 1919年に外交関係樹立。我が国から1936年にパラグアイへ移住が開始され、現在は約7,000人が在住している(本年は、移住70周年を迎える)。この日系人の存在及びパラグアイ社会への農業面での貢献及び経済・技術協力を背景とした友好協力関係が維持されており、南米随一の親日国と言われている。
(2) パラグアイ政権は、ドゥアルテ大統領の指導力の下、民主主義の強化、汚職撲滅及び財政・司法制度の改善等の諸改革を推進し、パラグアイ経済の安定等を導くなどの成果をあげている。
(3) 我が国は、近年パラグアイへの最大の援助国であり、保健医療と教育、環境保全と天然資源の持続的開発分野を中心に経済協力を実施してきている。
(4) 2005年10月には、ドゥアルテ大統領が訪日し、日・中南米間の「協力」及び「交流」を柱とする「日・中南米 新パートナーシップ構想」に則り、日・パラグアイ関係を一層強化することが確認されている。

2-2.対象国の経済状況
(1) 所得水準(1人あたりのGNI)は1,019ドル(2003年)
(2) 主要産業は農牧林業で、輸出総額の約半分を占める。95年1月に発足したメルコスール(南米南部共同市場)の加盟国。
 2000年以降、ブラジル及びアルゼンチンの経済低迷を背景にパラグアイ経済も低迷し、国民所得の大幅な低下を経験するとともに、債務支払不履行となる可能性も予測された。このような事態に有効な対策を打ち出せなかった前政権に対し、経済チームに適材適所の人材配置を行った現政権は、発足早々IMFとのスタンドバイ協定締結に成功。右に基づき、マクロ経済諸指標の改善、税制改革、新税関規則の設定等の様々な改革に着手し、IMFや世銀等の国際機関が高く評価する実績を上げた。しかし、これが所得や雇用の拡大等にあまり結びついていないことから、成果の敷衍が焦眉の課題とされている。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1) パラグアイは、南米の中心に位置し、周囲をブラジル、アルゼンチン、ボリビアに囲まれた内陸国であり、産業構造は対GDP(2003年)では、農業27.2%、工業24.2%、サービス業48.5%となっており、その中でも農牧業が主要産業であり、綿花及び大豆等の農産物が輸出総額の約半分を占めているが、同産物は国際価格に大きく影響を受ける。
(2) パラグアイは1995年、南米南部共同市場(メルコスール)に加盟以後、域内経済統合の流れに十分対応できず、経済は低迷し1996年にGNP/C 1,945ドルであったが、2003年には1,019ドルに落ち込んでいる。
 これに伴い、国民の経済状態も悪化しており、1999年から2004年までの間で貧困層が全人口の34%から49%へ、極貧層は16%から25%へ拡大している状況が発生している。
(3) パラグアイ政府は、2003年に「2003~08年国家開発計画」を発表し、イ)行政機構の近代化、ロ)投資に関する経済環境整備、ハ)持続的経済成長の推進、ニ)貧困、汚職の撲滅と治安対策を掲げており、ニ)の中で、「保健医療システムの確立」、及び「保健医療サービスの向上」を進めている。また「2003~08年国家保健計画」を策定し、保健医療分野での社会的保護の拡大及び公正化という総合目的を立て、a)保健医療サービスにおけるケアの改善、b)貧困層に対する質の高いサービスの提供を特定目標とし、優先的取り組み事項として、i)レファラルシステムの強化、ii)国立病院の整備、iii)保健医療従事者の研修・育成を掲げている。
(4) 国立アスンシオン大学病院は、教育病院であると共に、第4次レファラル病院としての機能も果たしている病院であるが、その施設は115年を越える建物で、施設・機材は老朽化しており、その機能を十分果たせない状況となっている。
 かかる状況を受け、パラグアイ政府は、1997年に同病院を市内中心部のサホニア地区から新市街のサン・ロレンソ地区に移転・整備することを決定した。まず、第1弾として、母子センター部分が我が国の無償資金協力の支援を受け建設され、産婦人科及び小児科部分が移転した。
(5) その後も、アスンシオン大学の移転計画は継続されており、パラグアイ側も病棟、リハビリテーション部門建設等の努力しているところであるが、資金が十分でないこともあり、「アスンシオン大学病院移転及び整備計画」を策定し、我が国に無償資金協力を要請したきたところである。

2-4.我が国の基本政策との関係
 対パラグアイODA重点分野である「貧困層を主な対象とした保健医療と教育の充実」に合致している。

2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
 パラグアイ政府は本件計画の実施を高い優先順位を付して要請してきている。
 貧困層を含む患者へ医療サービスを提供するアスンシオン大学病院整備を目的とする本件計画は、パラグアイの基礎生活分野改善に資することとなり、実施することによる効果は大きい。
3.案件概要

3-1.本プロジェクトの目的
 本計画は、 アスンシオン大学病院の病院施設の建設及び各施設への医療機材の供与を行い、同大学病院の医療サービスの向上及びを目的としている。

3-2.実施内容
 供与限度額は13億7,000万円であり、アスンシオン大学病院の病院施設(管理・外来診療棟、検査・画像診断棟、救急診療・ICU棟、機械棟)の建設及び各施設への医療機材(内視鏡、透視撮影X線機材、滅菌器等)の供与を行うものである。

3-3.環境社会配慮など留意すべき点
 以下の事項がパラグアイ政府により実施される必要がある。
(1) 本計画により整備された施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること
(2) パラグアイ政府負担の工事を適切に行うこと

3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
(1) 老朽化した施設・機材が更新されるとともに、病院機能を1ヶ所に集約することで、統合的な医療サービスの提供が可能となる。
(2) 施設・機材の整備に伴い、手術件数、内視鏡検査件数等(2000~04年の平均はそれぞれ、5,211件/年、1,308件/年)が増加し、医療サービスの量と質の向上が図れる。
(3) 大学病院としての教育機能の強化により、研修医の患者診療実習回数(2005年は20回/月・人)の増加等の医学教育レベル向上が図れる。

3-5.外交的効果
(1) 本案件は、パラグアイ政府のトップレベルの関心も非常に高い案件でもあり、我が国の顔が見える案件として、外交的インパクトが大きい。
(2) また、本案件の実施は2005年のドゥアルテ大統領訪日に確認された「日・中南米 新パートナーシップ構想」を具体化するものと位置づけられるものであり、我が国とパラグアイの協力関係をより強固にするものである。

4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1) パラグアイ政府からの要請書
(2) JICAの基本設計調査報告書(平成18年5月)(JICAを通じて入手可能)
(3) 第26回無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/kaikaku/ugoki.html


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