評価年月日:平成18年4月1日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生
1.案件名
1-1.被供与国名
パキスタン・イスラム共和国
1-2.案件名
「国道二十五号線(カラロ-ワッド間)改修計画」 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
(1) |
我が国とパキスタンは、1952年の国交樹立以降、政治・経済・文化など様々な分野において、積極的に人物交流を展開してきており、両国の関係は98年の核実験時以外、極めて良好である。 |
(2) |
同国は、2001年の9.11以降、テロとの闘い及び「穏健かつ近代的イスラム国家」建設を目指した努力を行っている。 |
(3) |
我が国としてもこうしたパキスタンの努力を支えるべく積極的な支援を行ってきている。昨年4月の小泉総理の訪「パ」の際には、我が国が引き続き経済協力を通じた支援を行うこと及び円借款の再開を発表した。 |
(4) |
昨年10月に発生した大規模地震に際しては、わが国から約2億ドルの支援を表明し、現在まで着実に支援を実施している。
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2-2.対象国の経済状況
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所得水準(一人当たりGNI)は、520ドル(2003年数値世銀統計(2005年))。 |
(2) |
1990年代後半、財政の破綻、輸出の停滞等により、財政赤字と経常赤字が深刻化するとともに対内・対外債務が激増したが、99年のムシャラフ政権の発足以降、税収増加と慎重な支出管理により財政赤字の大幅な低減(2003年GDP比4.5%)に成功しているほか、貿易収支の改善、移転収支の増加等により、経常収支も黒字に転換した。 |
(3) |
外貨準備高の急増(約125億ドル超(輸入の約11か月分相当))に、財務省債務局の設置、財政安定化と公的債務削減を義務付けた財政責任・債務管理令の制定、高利子対外債務の期限前償還等の債務管理能力強化のための努力があいまって、累積債務残高及び債務管理能力は急速に持続可能なレベルに改善している。これら財政構造の改善に伴う開発予算の増加にもかかわらず、依然として貧困率は高く、継続して貧困削減のための取り組みが必要な状況にある。
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2-3.対象国の開発ニーズ
(1) |
パキスタンにおいては、全旅客輸送の約95%、全貨物輸送の90%を道路輸送が占めるなど道路は極めて重要な輸送インフラであり、整備が積極的に進められている。特に、カラチ港からバロチスタン州の州都クエッタ、更にはアフガニスタンのカンダハルに接するチャマンへ通じる道路である本件国道25号線は、バロチスタン州及びカラチ港の発展にとって重要なルートであるのみならず、近年は、アフガニスタン復興、さらには、地域全体の安定と発展の観点からも極めて重要なルートとなっている。 |
(2) |
今回の対象区間である国道25号線カラロ-ワッド間(96km)は、山岳地帯を越えるルートであるため急カーブが多く、狭隘な区間であり(最小幅員3.5m)、また、道路の損傷が激しいことから、死者・重傷者を伴う交通事故の発生数(年平均約50件)は距離割合でパキスタン全土の6倍を超えるほど交通事故が極めて深刻な問題となっている。今回の支援により、道路拡幅、構造物の改修、道路線形の改善を
行うことにより、交通事故防止が期待される。 |
(3) |
また、急カーブ、急勾配が改善され、道路幅が拡幅されることにより、同区間の通過時間が大幅に改善され(123分→78分(36%減))、急勾配における大型車の速度低下に起因する渋滞や事故車両や故障車両に起因する渋滞が減少することにより、交通のボトルネックとなっている同区間の状況が改善され、国道25号線の物流が円滑化し、ひいてはアフガニスタン復興の加速が期待される。 |
(4) |
このような状況を受けて、パキスタン政府は、国道25号線のカラロ-ワッド間の安全走行の確保及び物流の円滑化を目的として、道路拡幅、道路構造物の改修、道路線形の改修に必要な資金につき、わが国に無償資金協力を要請してきたものである。
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2-4.我が国の基本政策との関係
対パキスタン国別援助計画では、(1)社会セクター、(2)農業/灌漑、(3)投資/産業、(4)経済インフラ、(5)総合的地域開発を重点分野としているが、本計画は、上記(4)のうちの一項目である「貧困削減を支援する経済インフラの拡充と整備」に合致している。
2-5.無償資金協力を実施する理由
パキスタンは、高い人口増加率、低い識字率、失業の増大、エネルギーの不足等困難な経済社会問題に直面しながら積極的に国内開発・貧困削減に取り組んでおり、無償資金協力の必要性が高い。 |
3.案件概要
3-1.目的
本計画は、国道25号線を改善することにより、交通の安全性を向上させるとともに、交通のボトルネックを改善し、地域の物流を活性化させることを目的としている。
また、本道路はパキスタンのカラチとアフガニスタンを結ぶ最短の道路であることから、アフガニスタン復興への流通面での貢献も期待される。
3-2.案件内容
供与限度額は40億5,200万円。国道25号線カラロ-ワッド間(96km)の道路拡幅、道路舗装、路肩整形、道路構造物の改修を行うもの。
3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がパキスタン政府により実施される必要がある。
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本計画により整備される施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 |
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維持管理に必要な経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと。 |
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工事実施中の安全を確保するための交通整理や道路利用者への周知を行うこと。
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3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) |
道路が拡幅(最小幅員5.0m→7.3m)され、道路線形が改善(最大勾配10%→7%)されること等により、交通の安全性が向上し、交通事故が減少する。 |
(2) |
交通のボトルネックとなっている同区間の状況が改善され、地域の物流が活性化する(同区間の通過時間123分→78分(36%減))。 |
(3) |
病人の輸送、教師の通勤、乗合バスの運行が円滑に行われることにより、周辺住民の生活環境が改善される。 |
(4) |
アフガニスタン復興への流通面での貢献が期待され、パキスタン、アフガニスタン両国政府間の関係の改善及び両国と我が国の友好関係促進に寄与する。 |
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4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等
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