評価年月日:平成18年12月14日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広
1.案件名
1-1.供与国名
ニジェール共和国
1-2.案件名
「マラディ州及びザンデール州小学校教室建設計画」
1-3.目的・事業内容
本プロジェクトは、マラディ州及びザンデール州における小学校の建設・建替え、便所の建設と学校施設機材等の調達により、生徒収容能力の増大及び衛生的な学習環境が確保されるとともに、マラディ州における学校施設の維持管理のための技術指導が行われることによって、適切な学校運営と共に初等教育の学習環境の向上に貢献することを目的とする。供与限度額は10億1,800万円であり、マラディ州及びザンデール州の小学校における284教室の建設及び建替え、277便房の建設、生徒・教員用机椅子、収納棚等の整備、施設維持管理の技術指導を行うものである。
1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がニジェール共和国政府により実施される必要がある。
(1)本計画により建設された教室、便房及び機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。
|
2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
(1) |
ニジェール基礎教育・識字省はPRSP及び教育基本法を上位計画とするセクタープラン「教育開発10ヵ年計画(PDDE)」を2001年に策定し、2003年から実施している。同計画の中 で、1)教育へのアクセス向上、2)教育の質の向上、3)組織・制度改善の3大目標を掲げており、初等教育に関しては、就学率の増大、教育方法と教材の改善、教育費用の地域共同体による分担を目標としている。 |
(2) |
PDDEでは就学機会の拡大を目的に、就学率を70%まで向上させる目標を立てている。同国全体における就学率は同国政府、他ドナーによる教室建設により、1990年後半の29%(1995年)から2004年の52.4%に改善した。このうち、都市の就学率は98.0%であるのに対し、農村部では36.8%と就学率の地域間の格差が大きく、本案件対象地域のマラディ州においては都市部では65.6%であるのに対し農村部では45.4%、ザンデール州における都市部では75.2%であるのに対し農村部では41.4%と依然として農村部では就学率が低い水準にある。 |
(3) |
ニジェール全国の現存の教室の約1/4は、地域住民の建設等により建てられた屋 根、壁の建替えを毎年必要とする藁葺き教室であるため、地域住民の負担が大きい。さに、老朽化した藁葺き教室では、風による砂の侵入、降雨などに対処できず、午後は特に暑くなり2部授業の実施は困難であるとともに授業効率が著しく低い状況であるため、恒久的な施設への建替えが求められている。これに加え、元来教室数が少ないだけでなく、急速な人口増加(年率3.2%増)に伴い増え続ける学齢児童数に必要とされる教室整備が追いついていない状況にある。 |
(4) |
このような背景のもと、ニジェール共和国政府は、上記問題に対処するために本件計画を策定し、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。 |
(5) |
なお、本案件はコミュニティ開発支援無償を活用して実施される。学校施設建設及びその運営・維持管理の実践による教育環境の改善を通して、地域コミュニティにより構成される学校運営委員会の活性化に貢献し、コミュニティの開発に資する案件である。 |
2-2.効率性
(1) |
本件は、コミュニティ開発支援無償を活用して実施される案件であり、小庇及び天井の設置などを省くといった現地仕様に基づく施工及び現地業者・資機材の積極的活用を図ることで、コスト削減を目指すものである。
|
(2) |
本件を実施するにあたり、要請対象校の教室及び便房の数量設定は、教育状況、サイト状況、費用対効果等のデータについて学校調査票を定量的に評価することで各地域における優先整備校リストの作成を行い、要請対象校における適正規模を設定した。
|
2-3.有効性
(1) |
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
・教室の建設、建替え、施設設備の調達により、生徒収容数が増加する。
・便房の建設により、対象校における衛生的な学習環境が整備される。
・学校施設の維持管理のためのガイドラインが策定され、技術指導により地域住民の学校運営維持管理に対する意識向上が図られ、適切な学校運営体制が確立される。
|
(2) |
また、同国のPRSPでは、基礎的生活分野である教育、水供給、保健医療、村落開発を重点分野としており、同国における就学率の拡大の達成に貢献する本案件は、同国における開発効果が大きい。 |
(3) |
教育分野においては、我が国はこれまでに1993年度に「小中学校建設計画」、1996年度に「小学校建設計画」、2003年度に「ドッソ県・タウア県小学校教室建設計画」を実施している。また、無償資金協力案件対象校において、2004年~2007年まで技術協力プロジェクトとして「住民参画型学校運営改善計画」を実施しており、地域別研修「初等教育行政研 修」及び青年海外協力隊のグループ派遣と連携した支援を行っており、本案件の実施は同国教育分野に対する我が国の一環した協力方針を維持強化するものである。
|
|
3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
|