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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成18年5月15日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生


1.案件名

1-1.供与国名
 モーリタニア共和国

1-2.案件名
 「ヌアクショット・ヌアディブ小中学校建設計画(2/3)」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
 我が国は従来よりモーリタニアと良好な二国間関係を有しており、特に同国にとって、我が国はこれまで主要輸出相手国や主要経済協力国であることから、大きなプレゼンスを示してきた。また、モーリタニアは現在軍事政権であるが、今後の民主化プロセスにコミットしている。これまでの良好な二国間関係維持や我が国のプレゼンス確保のためにも、民主化プロセスを積極的に支援することが重要である。
 また、我が国は1月に石油関連調査ミッションをモーリタニアに派遣するなど、モーリタニアの豊富な石油資源(今年から一日あたり75,000バレル輸出予定)は、我が国の安定的なエネルギー資源の確保の面からも注目されている。

2-2.対象国の経済状況
 経済は、農業、漁業及び牧畜を基盤とし、外貨収入は水産物(タコ及びイカ)及び鉄鉱石の輸出に依存。ただし、ヌアクショット沖合で相当量の石油と天然ガスの埋蔵が確認されたところ、今後は石油開発による安定した収入が得られる可能性がある。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1) モーリタニア政府は、2000年に国家開発計画「貧困削減戦略ペーパー(2000~2015年)」を策定し、貧困削減と経済発展の基礎となる人材育成を重要な政策課題として位置付けている。また、この計画に則って「教育セクター開発プログラム(2001年~2010年)」を策定し、小中学校における教員1人当たりの生徒数の減少、中学校へのアクセスの拡大、中学校での理科教育の充実化を重要目標としている。
(2) 1975年以降、モーリタニア政府は、2000年に至るまでの教育計画を順次策定(第1次~第5次教育計画)し、特に基礎教育インフラ整備に重点を置いた取組を進めてきた。その結果、初等教育の就学率は1990年/91年度の46.8%から1998/99年度には85.5%、中等教育の就学率は同じく14.7%から20.4%と大幅に改善されたが、この就学率の向上は、年平均2.6%という高い人口増加率と相俟って小中学校の就学人口の急増をもたらした。特に、地方からの人口流入が著しい首都ヌアクショットと、第二の都市ヌアディヴでは、教室建設が追いつかず、1教室当たりの生徒が全国平均の44人に対して70人以上となっている。また、理科教育を行うための特別教室も未整備である。
(3) こうした状況の下、モーリタニア政府は、過密状況の緩和とアクセスの改善を図り、学習環境を改善することを目的とし、老朽化が著しい教室や仮設教室の建て替えに必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。

2-4.我が国の基本政策との関係
 我が国は、モーリタニアの基礎生活の向上を図るため、無償資金協力については、農業分野での食糧援助及び食糧増産援助を実施している他、基礎教育分野、水産分野での援助を重点分野として実施してきており、本件援助も右重点分野に合致するものである。

2-5.無償資金協力を実施する理由
 同国における基礎教育分野への支援は、同国に対する支援の重点分野でもあり、同国政府ハイレベルからも本件支援につき再三強く要請されている案件である。
 また同国は、暫定政府による民主化への移行を目指しており、政党、市民社会は完全な代表性を持つ機関により選挙が実施されることとなる。国際社会の一員としてこの動きをさらにバックアップすべきであり、次代の民主化の鍵を握る青少年の基礎教育を支援することは重要である。
3.案件概要

3-1.目的
 本計画は、ヌアクショット及びヌアディブの小中学校において、老朽化が著しい教室や仮設教室を建て替え、恒久的な学校施設を整備することによって、過密状況の緩和とアクセスの改善を図り、かつ学習環境を改善して、より適切な学習環境と見なされる常設教室で授業を受けられる生徒の増加に寄与することを目的とする。

3-2.実施内容
 本計画の供与限度額は10億7300万円であり、ヌアクショットの小学校20校、中学校6校を建設するとともに、学習支援機材等の供与を行うものである。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
 次の事項がモーリタニア政府によって確保される必要がある。
(1) 造成工事、既存建物撤去等が行われること。
(2) 電力・市水引き込み工事を行うこと。

3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) 小学校1教室当たりの生徒数が全国平均の約44人に対してヌアクショットとヌアディブでは70人以上という教室の極端な過密状況が緩和され、学習環境が改善される。
(2) 二分制、二校制の解消により、公平性が確保され、学習効率が向上する。
(3) 中等教育の受入能力の低い地域での進学ニーズに応えることが可能となり、中等教育へのアクセスが改善される。
(4) 本計画の実施により我が国とモーリタニアの友好関係の発展が促進される。

3-5.外交上の効果
(1) 基礎教育に対するアクセスの改善は、モーリタニア国内における教育水準の向上に資するものであり、同国の民主化促進にも肯定的影響を及ぼすことになる。
(2) 我が国の顔が見える案件として、その外交的インパクトが大きい本件の実施は我が国とモーリタニアの友好関係を増進するものである。
(3) また、昨年4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議において小泉総理大臣が表明したアフリカ支援の観点からも、アフリカ地域全体における我が国のリーダーシップと友好関係を強化するものである。

4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等

(1) 先方政府からの要請書。
(2) 基本設計調査報告書(JICAより入手可能)。
(3) )第26回無償資金協力実施適正会議にて検討。(同会議の内容については外務省ODAホームページを参照
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/kaikaku/ugoki.html


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