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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成18年5月18日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生


1.案件名

1-1.供与国名
 ラオス人民民主共和国

1-2.案件名
 ビエンチャン1号線整備計画(第2期)
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
(1) ラオスは1951年8月に対日平和条約に調印し、1955年3月5日に外交関係を樹立した。仏教、稲作等の文化面での共通の背景を有していることから我が国への親近感が強く、明治維新や第二次世界大戦後の復興に対して高い関心を有している。2005年は、外交関係樹立50周年を記念した各種事業が両国で行われ、要人往来も近年活発化している等、両国関係は良好である。
(2) ラオス人民民主共和国は1975年12月の革命以降、ラオス人民革命党が政権を担っている。革命以来、カイソーン党議長を中心とする指導体制の下、農本主義的な社会主義路線が模索されたが、内戦によって荒廃した国土の復興は容易ではなく、86年の第4回党大会において、改革・開放路線の導入が決定された。92年のカイソーン党議長死去に伴う党首脳の交代、97年のアジア経済危機の後も、基本方針としての改革・開放路線は踏襲されてきた。なお、2006年3月に開催された第8回党大会においても、右方針の維持が決議されている。また、91年8月に制定された新憲法を中心として、法体系の整備が進められており、2006年4月30日には、同憲法制定後4回目となる第6回国民議会総選挙が行われ、115名の議員が選出された。
(3) 我が国は91年以降ラオスへの最大の援助国であり、基礎生活分野(BHN)、農業・農村開発、インフラ、人造り分野を中心に経済協力を実施してきており、現在は、ラオス政府が、ドナーとともに2004年に策定した「国家成長貧困削減戦略(NGPES)」、及び我が国が本年3月に策定した「ラオス国別援助計画」を柱に、引き続きラオスの貧困削減と持続可能な開発を支援している。
(4) 近年ハイレベルの人物往来が活発化している。(我が国要人の訪「ラ」:99年秋篠宮同妃両殿下、2000年小渕総理大臣、2002年塩川財務大臣、2003年川口外務大臣、2004年小泉総理大臣、町村外務大臣。2005年逢沢外務副大臣。ラオス要人の訪日:2001年ソムサワート副首相兼外相、2002年ブンニャン首相、2003年及び2005年ソムサワート副首相兼外相。)

2-2.対象国の経済状況
(1) 1人当たりGDPは491ドル(2005年)であり後発開発途上国(LDC)の一つ。
(2) 75年以来の計画経済が行き詰まり、86年に「新経済メカニズム」とよばれる経済改革に着手、銀行制度、税制、外国投資法の制定、国営企業の民営化等幅広い分野での措置を通じ、市場経済の導入、開放経済政策を推進している。同国は、日用品から機械・燃料に至るまで輸入に依存しており、その約50%がタイからであることから、アジア経済危機の際、国内マクロ経済運営のまずさも手伝い、高率のインフレ及び為替レートの下落に直面したが、現在は緩やかな回復基調を辿っている。また、第7回党大会(2001年)において2020年までのLDC脱却、国民生活水準3倍増、経済成長率7%以上等を目指した長期目標を策定し、第8回党大会(2006年3月)においては、ラオス人民革命党による指導的役割の継続を確認するとともに、86年以来の「新改革路線」に基づく改革・開放路線の維持を打ち出した。また「2020年までに低開発国から脱却する」という第7回党大会で採択した目標の継続を確認し、中期行動指針としての第6次経済社会開発5ヶ年計画(2006~2010)を採択した。
(3) ラオス政府は「2010年・2020年社会経済開発戦略」と「第6次経済社会5ヶ年計画(2006~2010)」で 1)市場経済の促進および産業全部門における経済発展の推進」、2)地域経済構造の改善と発展、3)農村開発の推進、4)経済協力の拡充と外国からの投資推進を掲げており、右は第5次社会経済5ヶ年計画の継続、且つ実施の加速化となっている。
(4) 主要産業は農林業、水力発電事業、木材加工であるが、うち農林業がGDPの約5割、労働人口の約8割を占める。主要輸出品は電力(タイ向け)、木材、縫製品、コーヒー、であるが、貿易は恒常的に輸入超過になっており、輸出456百万ドル、輸入686百万ドルで、約2.3億ドルの赤字であった(2004-2005年)。主要な貿易相手国は、タイ・ベトナム・中国・豪州である。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1) ビエンチャン1号線は、ビエンチャン市における都市内道路網の骨格幹線であるばかりでなく、市中心部とラオスの2大玄関口であるワッタイ国際空港及びタイ国境のメコン河に架かる橋を結ぶ道路である(ラオス来訪者の6割は右のメコン架橋から、1割強はワッタイ国際空港から入国する)。
(2) しかし、ビエンチャン1号線の道路状況は極めて悪く、路面の劣化進行と各種車両の混在とが相まって、現在安全かつ円滑な交通、社会経済活動や日常生活行動等に支障を来している。加えて道路排水施設が不十分であるため、雨期には道路上および沿線において頻繁に洪水被害が発生し、舗装をさらに劣化させる原因となるとともに、処理されない廃水から悪臭が発生するなど、保健衛生上も問題があり、道路整備が緊急課題となっている。このような状況に対応すべく、ラオス政府は本件を最重要プロジェクトとして位置づけ、我が国無償資金協力による早期実施を要請してきたもの。

2-4.我が国の基本政策との関係
 2006年3月に取り敢えず事務レベルでまとまった「ラオス国別援助計画」において(1)貧困削減及び人間開発に向けたラオスによる自助努力を支援する、(2)グローバル経済及び地域経済統合に向けて、自主的・自立的且つ持続可能な経済成長を実現するためのラオスによる自助努力を支援する、という基本方針を掲げており、本案件は、右基本方針に合致している。

2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
 対象道路は、同国における最重要幹線道路であり、同国政府より最優先順位を付して要請されている。本案件の実施により安全な交通が確保され、生活道路としての機能が向上する。
3.案件概要

3-1.本プロジェクトの目的
 ラオスの最重要幹線道路であるビエンチャン1号線は、老朽化が進んで舗装状況が悪く、また排水設備の不備により都市部区間を中心に雨期に道路冠水が発生する。これにより、安全な交通に支障を来しており、また周辺地域の衛生環境悪化の原因となっていることから、当該道路及び道路排水設備の改修を行うもの。

3-2.実施内容
 本計画の供与限度額は、25億5,300万円(ビエンチャン1号線シカイ交差点~タナレン保税倉庫間(約28.9Km)の道路改良及び道路排水施設整備のうち本件は第2期13.2km分)。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点  
(1) 沿道家屋の移転を回避する。
(2) 工事中の周辺家屋、文化財への影響を最小限に抑える工法を用いる。
(3) 以下の事項がラオス政府により実施される必要がある。
1)本計画により整備された道路の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
2)本件道路の維持管理のための運営経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと。

3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
(1) 走行性が改善され、また低速車線又は混合車線を設置し、交通整流を図ることにより、都心部(シカイ~チナイモ間12.3km)の通過所要時間が短縮され(約30分→21分)、幹線道路としての機能が向上する。
(2) 歩道、バス停、駐車帯、横断歩道、信号機、街路灯、標識等の附帯設備が整備されることにより、交通事故の減少等安全な交通が確保され、生活道路としての機能が向上する。
(3) 冠水日数・時間が減少することにより、人および物の流通が改善される(現状冠水回数 平均73回/年、平均3時間/回)。
(4) 幹線道路として機能が向上することにより、物的・人的交通が促進され、社会・経済活動が活性化する。
(5) 冠水が減少することにより、沿道の保健・衛生環境が改善される。
(6) 本計画の実施により、我が国とラオスの友好関係が促進される。

3-5.外交上の効果
(1) 本件は、平成15年12月の日ASEAN特別首脳会議で打ち出されたメコン地域開発の一環として実施されるものであり、国際空港と首都中心部を結ぶ道路として、我が国の顔がラオスのみならずラオスを訪れるASEANはじめ各国の要人に具体的に見える案件として、その外交的インパクトは大きい。
(2) このように、本件の実施は我が国とラオスの友好関係を増進するのみならず、メコン地域全体における我が国のリーダーシップと友好関係を強化するものである。また、メコン地域内の経済統合、物流増進、我が国企業のメコン地域における貿易・投資活動増進にも資するものである。

4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1) 先方政府からの要請書。
(2) JICAの基本設計調査報告書(JICAを通じて入手可能)。
(3) 第21回無償資金協力実施適正会議(同会議の内容については外務省ODAホームページ参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/kaikaku/ugoki.html


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