評価年月日平成18年4月20日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生
1.案件名
1-1.供与国名
ラオス人民民主共和国
1-2.案件名
ビエンチャン市上水道施設拡張計画 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
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ラオスは1951年8月に対日平和条約に調印し、1955年3月5日に外交関係を樹立した。仏教、稲作等の文化面での共通の背景を有していることから我が国への親近感が強く、明治維新や第二次世界大戦後の復興に対して高い関心を有している。2005年は、外交関係樹立50周年を記念した各種事業が両国で行われ、要人往来も近年活発化している等、両国関係は良好である。 |
(2) |
1975年12月の革命でラオス人民民主共和国が成立し、ラオス人民革命党が政権を担っている。革命以来、カイソーン党議長を中心とする指導体制の下、農本主義的な社会主義路線が模索されたが、内戦によって荒廃した国土の復興は容易ではなく、86年の第4回党大会において、改革・開放路線の導入が決定された。92年のカイソーン党議長死去に伴う党首脳の交代、97年のアジア経済危機の後も、基本方針としての改革・開放路線は踏襲されてきた。なお、2006年3月に開催された第8回党大会においても、右方針の維持が決議されている。また、91年8月に制定された新憲法を中心として、法体系の整備が進められており、2006年4月30日には、第6回国民議会総選挙が予定されている。 |
(3) |
我が国は91年以降ラオスへの最大のバイの援助国であり、BHN、農業・農村開発、インフラ、人造り分野を中心に経済協力を実施してきている。 |
(4) |
近年ハイレベルの人物往来が活発化している。(我が国要人のラオス訪問:99年秋篠宮同妃殿下、2000年故小渕総理大臣、2002年塩川財務大臣、2003年川口外務大臣、 2004年小泉総理大臣、町村外務大臣、2005年逢沢外務副大臣。ラオス要人の訪日: 2001年ソムサワート副首相兼外相、2002年ブンニャン首相、2003年及び2005年ソムサワート副首相兼外相、2005年サマーン国民議会議長。) |
2-2.対象国の経済状況
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1人当たりGDPは491ドル(2005年)であり後発開発途上国(LDC)の一つ。 |
(2) |
75年以来の計画経済が行き詰まり、86年に「新経済メカニズム」とよばれる経済改革に着手、銀行制度、税制、外国投資法の制定、国営企業の民営化等幅広い分野での措置を通じ、市場経済の導入、開放経済政策を推進している。同国は、日用品から機械・燃料に至るまで輸入に依存しており、その約65%がタイからであることから、アジア経済危機の際、国内マクロ経済運営のまずさも手伝い、高率のインフレ及び為替レートの下落に直面したが、現在は緩やかな回復基調を辿っている。また、第7回党大会(2001年)において2020年までのLDC脱却を長期目標として掲げ、第8回党大会(2006年)では、より具体的な中期目標として、2010年までの年平均成長率7.5%以上、一人当たりGDP約800ドルの達成を打ち出している。 |
(3) |
ラオス政府は長期目標としての「2010年・2020年社会経済開発戦略」で(1)市場経済の促進および産業全部門における経済発展の推進」、(2)地域経済構造の改善と発展、(3)農村開発の推進、(4)経済協力の拡充と外国からの投資推進、を掲げている。また、「国家成長・貧困削減戦略(NGPES)」を包含する形で策定された「第6次社会経済5ヶ年計画(2006-2010)」において、農業分野の重点的開発を通じた貧困削減、経済・社会インフラの拡充といった、これまでの基本方針を踏襲すると共に、物質的・文化的な生活向上が目標として掲げられている。 |
(4) |
主要産業は農林水産業、木材加工、水力発電事業であるが、うち農林水産業がGDPの約5割、労働人口の約8割を占める。主要輸出品は木材、縫製品、コーヒー、電力(主にタイ向け)であるが、貿易は恒常的に輸入超過になっており、輸出389百万ドル、輸入607百万ドルで、約2.2億ドルの赤字であった(2004年)。主要な貿易相手国は、タイ・ベトナム・中国・豪州である。
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2-3.対象国の開発ニーズ
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ラオスの国家開発計画では上下水道等の社会インフラ整備に重点が置かれており、1999年9月発令の首相令「水道セクターの管理と開発に関する首相決定(No.37)では、都市部給水率を2020年までに80%まで引き上げる目標を掲げており、首都であるビエンチャン市が最優先順位に位置づけられているものの、財政的制約から開発目標通りには進んでいない。 |
(2) |
ビエンチャン市の水道状況は人口増、生活水準の向上、工場および住宅地域の拡大等に伴って水需要が増加していることから、既設2浄水場は処理能力を超える過負荷運転を余儀なくされており、機器等に支障が出ている。また既設浄水場は改修工事後20年以上を経過しており、構造物・機械・電気系統の機能低下が著しい。更に送・配水系統が明確に分離されていない、配水池の容量が不足している等の問題を抱えている。
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2-4.わが国の基本政策との関係
1998年に派遣した経済協力調査団等によるラオス側との政策対話を踏まえ、(1)人造り、(2)基礎生活分野(BHN)支援、(3)農林業、(4)インフラ整備を重点分野としている。本案件は対ラオス支援の基本政策に合致している。
2-5.無償資金協力を実施する理由
ラオスにおける水道セクターの開発計画の中で、本プロジェクトの対象地域であるビエンチャン市の水道整備は最も重点が置かれており、同国政府より最優先順位を付して要請されている。 |
3.案件概要
3-1.本プロジェクトの目的
経済成長に伴い、急速に変化している首都ビエンチャン市における現状の水不足および既存浄水・送・配水システムの問題を解決するため、浄水場能力の拡張、老朽化した既存浄水場の改修、既存浄水場の改良および既存増圧ポンプ場の改修、さらにこれらのシステム整備によって必要となる送・配水管の敷設を行うことによって、生活に必要な十分な量の水を安定して供給できるようにすることを目的とする。
3-2.実施内容
既設浄水場(カオリオ浄水場、チナイモ浄水場)の拡張・改修、増圧ポンプ場の改修、送・配水管の敷設、機材調達(水質測定試験器具一式)、ソフトコンポーネント(浄水場運転管理・体制整備及び送配水運転・制御等)
3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
次の事項がモンゴル政府によって確保される必要がある。
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管路敷設工事によって、交通や市民生活を極力阻害しないよう配慮する。 |
(2) |
以下の事項がラオスにより実施される必要がある。
1)本計画により整備された浄水場等の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
2)必要な運営経費(人件費、事務費等)について必要な予算措置を行うこと。
3)政府及び市民による節水の励行。
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3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
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給水状況が改善される((1)一日平均給水量 78,251m3/日→105,001m3/日 (2)給水人口 約252,000人→約351,000人 (3)給水普及率 38.5%→45.6%)。 |
(2) |
配水池の新設、送・配水管分離及び増圧ポンプ場の改修により、需要の時間的変動に対応した安定給水が確保される。 |
(3) |
ソフトコンポーネントの実施により、浄水場の技師、オペレータが浄水システム・送配水システムについて理解を深め、適正な浄水場や送配水運転・維持管理が実施できるようになる。 |
(4) |
ビエンチャン市での公衆衛生環境の改善に寄与するとともに、インフラ整備による同地区での社会・経済活動の活性化が期待される。 |
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4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
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