評価年月日 平成18年12月8日
評価責任者:無償資金・技術協力課長 和田充広
1.案件名
1-1.供与国名
キリバス共和国
1-2.案件名
「南タラワ水産業関連道路整備計画」
1-3.目的・事業内容
本プロジェクトは、ベシオ地区・バイリキ地区・ビケニベウ地区の道路改修により、安全かつ円滑な流通・交通が確保されるとともに、機材供与により十分な維持管理が行われることによって、南タラワの流通・交通が活性化されることで、水産業の振興に貢献することを目的とする。供与限度額は12億8,500万円であり、ベシオ地区、バイリキ地区、ビケニベウ地区の合計約10.6キロメートルの道路の改修、及び道路補修のための機材の供与を行うものである。
1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がキリバス共和国政府により実施される必要がある。
(1)本計画により改修された道路及び機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。
(2)活動に必要な人的手当及び予算措置を行うこと。
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2.無償資金協力の必要性
2-1.必要性
(1) |
キリバスでは4年ごとに国家開発戦略を策定しており、2003年に第10次国家開発戦略(2004~2007年)が策定された。同戦略の中で、1)インフラ・生産施設への投資における官民協調、2)社会サービスと経済の平等な分配、3)公共部門サービスの改善、4)国家・コミュニティ・個人レベルでの社会・経済改革の実現、5)天然資源及び自然の持続的利用、6)経済開発に対する財政資金の有効活用を掲げており、この中で、経済成長のために水産業の発展とその発展を支えるためインフラを整備することが重要であるとしている。 |
(2) |
同国南タラワにおいては、全世帯のおよそ75%(約3,400世帯)が漁業活動を行っており、漁業は重要な雇用源であるほか、水産物は重要な動物性タンパク質の供給源となっていることからも、水産業は唯一の産業として経済及び国民生活に密接な関係を持っている。また、同地区の交通インフラについては、島民の生活や一般の経済活動はもちろん、水産物流通や漁業者の移動に重要な役割を果たしている。 |
(3) |
他方、南タラワの道路は1960~1970年代に整備されたため、老朽化が進んでいるとともに、大型車交通の増加により、損傷が拡大している。さらに、配水構造物が設置されていないため、降雨時等の冠水により道路の基盤が痛んでいる状況である。同国は応急処置的な補修を行っているが、必要な機材も不足しており、すぐに路面が痛み、補修の頻度が多い。このため、路面状況が悪いことから走行性が低下し、水産物の荷痛みや輸送時間の増加・交通事故の発生などの問題が生じている。 |
(4) |
このような背景のもと、キリバス共和国政府は、上記問題に対処するために本件計画を策定し、我が国に無償資金協力を要請してきたものである。 |
(5) |
なお、我が国は、政府開発援助の一環として、開発途上国の水産業の振興を通じ、我が国との友好関係の維持強化を図るとともに、長期的展望の下に我が国漁船の漁場確保等に資するため、水産無償資金協力を通じて、水産関係施設の建設等を推進しており、本件支援は同スキームによる支援である。 |
2-2.効率性
(1) |
本件を実施するにあたり、対象道路の路面状況(亀裂、ポットホール等の損傷状 況)、「路盤強度」を定量的に評価し、「改修の必要がないもの」から、「既存表面処理の撤去後、上層路盤を形成しアスファルトによる表層のコーティングを施すもの」まで改修タイプを区分した上で、各対象道路の改修タイプを決定したほか、路盤の厚さは各対象道路の大型車交通量から導き出している。
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(2) |
上記の設計方針に基づき、全ての区間に一律の補修を施すのではなく、現状を踏まえた必要最小限の補修を実施することにより、コスト削減を図り、本案件の効率性を高めている。
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2-3.有効性
(1) |
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
・主要道路の走行性が改善されることにより移動時間が短縮される。
・道路の改修及び歩道設置により、歩行者や路肩で販売する漁民との接触事故が減少する。
・移動時間の短縮等により、魚の輸送効率を高め、鮮度低下による商品価値の減少が無くなる。
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(2) |
また、同国の主要な産業は水産業であり、また国家開発戦略においても同国にとって重要な水産業の発展を支援するためにインフラ整備が必要であるとしており、交通インフラを整備する本案件は、同国との関係において外交的効果が大きい。 |
(3) |
水産分野においては、我が国かつお・まぐろ漁船がキリバス共和国水域で操業するほか、同国は2004年12月に国際捕鯨委員会に加盟し、我が国と立場を同じくする等、我が国はキリバス共和国との間で漁業分野で友好的な協力関係を有しているが、本案件の実施はこれを維持強化するものである。
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3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等
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