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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日平成18年4月5日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生


1.案件名

1-1.被供与国名
 エクアドル共和国

1-2.案件名
 「ワキージャス市及びアレニージャス上水道整備計画」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
 1918年に外交関係樹立。エクアドルは、これまで我が国との間で良好な関係を構築している。2002年にはノボア大統領(当時)が訪日した他、2003年にはエクアドルにおいて友好議員連盟が創設され、2005年に我が国による同連盟会長の訪日招待が実現し、今後とも両国の交流拡大が期待される。また、中南米第4位の原油埋蔵量を有する同国の石油部門においても、2005年より我が国企業の進出が開始されるなど、経済関係での動きが見られている。

2-2.対象国の経済状況
(1) 所得水準(1人あたりのGNI)は1,450ドル(2002年)
(2) 主要産業は、農業、水産業及び石油産業。
(3) 2000年、エクアドル政府は、ドル化を含む経済変革基本法(1ドル=25000スクレに固低)電力会社、電話会社の株式の51%までの売却、労働法の改正等)を成立させた。また同年4月にはIMFとの最終合意を達成し、世銀、IDB、CAFより、3年間で総額20億4,500万ドルにのぼる新規融資の道が開かれた。さらに年金・公務員給与の値上げ、燃料価格の引き上げ等を内容とした経済・社会政策を発表した。
 2003年1月、エクアドル政府はIMFと2億ドルのスタンドバイ取り決めに署名するための事前合意に達し、同2月、グティエレス大統領(当時)は、IMFとの趣意書に署名した。そして、IMFとの合意をベースに、徹底した緊縮政策を実施に移した。その結果、2004年についてはGDP6.6%増、インフレ率1.9%、財政黒字GDP比1.7%といずれも目標を達成している。しかしながら、依然石油輸出と移民送金に依存する体質からは脱却出来ておらず、現パラシオ政権においては、輸出競争力の強化、雇用促進、米とのFTA交渉の早期妥結などが主要な課題となっている。

2-3.対象国の開発ニーズ
(1) ワキージャス市及びアレニージャス市は、エクアドルの南部に位置する都市で、ペルーとの国境沿いに位置している。エクアドル政府は、「国家開発計画(2001~05年)」を策定し、上水道施設の普及・整備を最重要課題として位置づけ、特に「小規模自治体都市部の衛生状況改善計画」を優先的に推し進めている。
 同計画の中でも、「ワキージャス・アレニージャス両市上水道整備計画」は、エクアドル・ペルー両国間の国境紛争があったために開発が遅れていたエクアドル南部における案件であり、エクアドル政府内での優先度が高い。
(2) ワキージャス市は、深井戸6本を水源としているが、揚水量の減少により水量が安定しておらず、配水管の老朽化により、週1~2回程度の給水が確保されているのみである上、硫酸イオンの度合いの基準が高く水質の面でも問題がある。
 アレニージャス市は、河川水を水源としており1960年代に既存施設が建設されているが、施設の老朽化が進んでおり、水質が悪い上、揚水量が不安定、浄水場の機能の低下が進んでおり、1日6時間程度の給水制限がされているという状況である。
(3) このような状況のもと、エクアドル政府は、「ワキージャス市及びアレニージャス上水道整備計画」を策定し、わが国に対し無償資金協力を要請したものである。

2-4.わが国の基本政策との関係
 わが国は、1999年に実施した経協政策協議において、重点分野の一つとして、貧困対策(教育、医療、飲料水供給等)を掲げており、本案件は我が国の対エクアドル支援の基本政策に合致している。

2-5.当該案件に無償資金協力を供与する理由
 エクアドルは本件計画の実施を高い優先順位を付して要請してきている。ワキージャス市及びアレニージャス市は、ペルーとの国境地域に位置しており、国境紛争のために開発が遅れていた地域である。開発が遅れていた国境地域における上水事情改善を目的とする本件計画は、基礎生活分野の改善に繋がると共に国境開発にも資することとなり、実施することによる効果は大きい。
3.案件概要

3-1.本プロジェクトの目的
 本計画は、ワキージャス市及びアレニージャス市上水道施設(取水施設、配水池、浄水場等)を整備し、両市の上水事情改善を目的としている。

3-2.案件内容
 供与限度額は20億900万円(国庫債務負担行為。平成18年度 2億5,600万円、平成19年度 8億400万円、平成20年度 9億4,900円)であり、ワキージャス市及びアレニージャス市上水道施設整備を行うものである。

3-3.環境社会配慮など留意すべき点
 以下の事項がエクアドル政府により実施される必要がある。
(1) 本計画により整備された施設の維持管理を適切かつ継続的に実施すること
(2) 上水供給に必要な経費に関して必要な料金設定及び体制整備を行うこと

3-4.無償資金協力供与の成果の目標(アウトカム)
(1) 両市への給水量が増加する(ワキージャス市:3,460m3/日→9,500m3/日、アレニージャス市:1,900m3/日→4,500m3/日)。
(2) 配水池の建設により配水調整が可能となり、時間給水が解消され、24時間給水が可能となり、給水圧も確保できる。
(3) 浄水場を経由すること等により、水道水質が改善され、衛生的な水が両市市民に対して供給される。
(4) 本計画の実施により、わが国とエクアドルの友好関係が促進される。
4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1) エクアドル政府からの要請書
(2) JICAの基本設計調査報告書(平成17年11月)(JICAを通じて入手可能)
(3) 第25回無償資金協力適正会議(同会議の概要については外務省ODAホームページ参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/kaikaku/ugoki.html


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