評価年月日:平成18年4月17日
評価責任者:無償資金協力課長 鈴木秀生
1.案件名
1-1.供与国名
カンボジア王国
1-2.案件名
「国道1号線改修計画」 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
(1) |
我が国とカンボジアの交流は古く、17世紀初めには日本人が同国のアンコール・ワット寺院に参詣している。内戦中は両国の交流は途絶えたものの、カンボジア国内和平達成以降、両国関係は政府・民間双方のレベルにおいて全般的に拡大した。 |
(2) |
1970年以降内戦が続いたカンボジアにおいては、1991年10月のパリ和平協定署名を経て、1993年5月に制憲議会選挙が実施され、同年9月に新生カンボジア王国が誕生した。その後2度の総選挙を巡って二大政党であるフンシンペック党と人民党の確執も見られたが、2004年7月には両党による第三次連立政権が発足して今日に至っている。この間、1999年4月にASEAN正式加盟が実現する等、国際社会との関係が正常化するとともに、反政府組織クメール・ルージュの完全な崩壊もあって内政の安定度は高まっており、現在、国の復興と開発を進める上でこれまでにない良好な環境が生まれている。 |
(3) |
我が国は、カンボジアの和平プロセス、選挙監視及び復興・開発に人材面及び資金面で積極的に貢献してきたところであり、これまで我が国は最大のドナー国である。
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2-2.対象国の経済状況
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主要産業は農林水産業であり、労働人口の約7割を占めており、工業に約1割、サービス業に約2割が就労している。 |
(2) |
所得水準(1人当たりGDP)は321米ドル(03年・世銀資料)であり、後発開発途上国(LDC)の一つである。 |
(3) |
1960年代には食糧自給を達成し、米やゴムの輸出を行っていたが、70年代以降の長期にわたる内戦と混乱、とりわけポル・ポト(クメール・ルージュ)政権下における恐怖政治により国土は大きく荒廃した。1991年の和平達成以降、国際社会の支援を得て国の再建が本格化し、94年から96年にかけて高い経済成長率を達成したものの、その後の政変やアジア経済危機によって外国からの援助や投資が減少し、経済の悪化が顕著となった。1998年の第2回総選挙後に内政が安定化するに伴って、同国経済は再び回復基調を示しているが、2000年の大規模な洪水被害、恒常的な貿易赤字等により依然厳しい状況にある。
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(4) |
このような状況の中、カンボジア政府は1999年10月より世銀・国際通貨基金との合意の下で経済構造改革を推進しており、司法改革、地方分権を含む行政改革、財政改革、汚職追放等の諸課題に取り組みつつ、こうした「良き統治」を土台とする農業セクター振興、インフラ整備、民間セクターと雇用の拡大、人的資源開発等の国家開発戦略の推進を図っている。
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2-3.対象国の開発ニーズ
(1) |
カンボジアの幹線国道は首都プノンペンを中心として放射状に展開しているが、1970~1980年代の内戦時に維持管理が行われず、また、洪水被害や爆撃・地雷によって大規模な損壊を被った。1993年以降、日本を始めとするドナー国や国際金融機関の融資により復旧が進められて来ているが、近代的な規格への改修を終えているのは約60%に過ぎず、幹線国道の整備は引き続き同国政府の重点施策の一つとなっている。 |
(2) |
国道1号線は、プノンペンとベトナム国境バベットを結ぶカンボジアの最重要道路の一つであるとともに、ベトナムの商都ホーチミンへと接続し、メコン地域開発の観点から重要な第二東西回廊を形成する国際幹線道路でもある。同道路のネアックルン~バベット区間(約105km)はアジア開銀の融資により改修が実施されたが、残るプノンペン~ネアックルン区間(約56km)はメコン河に平行して横たわる氾濫原に位置することから、損傷が著しく、現在平均時速30km程度の走行しかできない状況にある。 |
(3) |
このような背景の下、我が国が2002年度に実施した開発調査の結果を踏まえて、カンボジア政府より国道1号線プノンペン~ネアックルン区間の改修について、無償資金協力の要請が行われたものである。
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2-4.我が国の基本政策との関係
2002年に策定・公表した対カンボジア国別援助計画の重点分野の一つである「持続的な経済成長と安定した社会の実現(社会・経済インフラの整備)」に合致している。
2-5.無償資金協力を実施する理由
カンボジア政府は、内戦、貧困等困難な政治・経済社会問題に直面しながらも、積極的に経済発展のための諸改革に取り組んでおり、無償資金協力の必要性が高い。 |
3.案件概要
3-1.目的
本計画は、国道1号線のプノンペン~ネアックルン区間の改修事業に対する我が国の第2期の協力として、起点プノンペンから13km地点までの区間を除く約43kmの区間の道路改修を行うことを目的としている。
3-2.案件内容
供与限度額は47億4,600万円(国庫債務負担行為。平成18年度:8億2,700万円、平成19年度:22億7,300万円、平成20年:16億4,600万円。)。上記区間における道路改良のための各種工事(道路舗装修復、道路幅員の拡幅、道路高の嵩上げ、法面浸食対策防護、橋梁建設、カルバート建設、道路排水施設整備等)を行うもの。
3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
以下の事項がカンボジア政府により実施される必要がある。
(1) |
本計画の実施により影響を受ける住民に対して十分な説明を行い、当該住民の同意を得て公正・公平な補償を行うこと。 |
(2) |
改修後の道路施設に対して適切な維持・管理を行うこと。 |
(3) |
交通事故防止のためのスピード制限や道路施設損傷予防のための積載荷重制限等の規制措置の徹底を図ること。
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3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) |
道路の舗装修復や拡幅により、国道1号線の走行性が改善されて、プノンペン~ネアックルン区間の通過所要時間が現行の1時間50分から50分に短縮される。 |
(2) |
道路高の嵩上げやカルバートの増設等により、洪水に対する流下能力が向上し、国道1号線の冠水及びプノンペン市周辺地域への越流被害が防止される。 |
(3) |
幹線道路の機能の向上を通じて、沿道住民の生活上の利便が向上するとともに、物的・人的交流が促進されて、経済・社会活動の発展に資することとなる。 |
(4) |
カンボジア王国との二国間関係を増進させる。 |
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4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等
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