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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成16年3月30日
評価責任者:有償資金協力課長 石兼公博


1.案件名

1-1.供与国名
 ベトナム社会主義共和国

1-2.案件名
 オモン火力発電所2号機建設計画
2.有償資金協力の必要性

2-1.二国間関係

(1) 政治的・外交的重要性
(a) ベトナムは、東南アジアではインドネシアに次ぐ第2の人口規模を有している(インドネシア2億人、ベトナム8千万人)他、地政学的にも重要な位置を占めており、その政治的安定と経済的発展の達成は、東南アジア全体の安定と発展にとって極めて重要。
(b) ベトナムは、1995年のASEAN加盟後、ASEAN内における地位を高めつつあり、同国との関係の緊密化は、我が国の対ASEAN外交にとっても極めて重要。また、ASEANの中の後発国であるベトナムへの支援は、ASEANにとっても重要な課題となっているASEAN内の経済的格差是正に資する。
(c) 2003年は日越外交関係樹立30周年にあたる。
(2) 経済関係
(a) 我が国による対ベトナム投資は1990年代後半はアジア通貨危機の影響等の要因によって大幅に減少したものの(1995年約11.3億ドル、1999年約0.62億ドル)、2001年の米越通商協定の発効、本年11月の日越投資協定の締結等、投資環境の改善を含めたベトナム経済の開放・改革が今後益々進んでいくことが見込まれていることから、投資先としてのベトナムに対する我が国企業の期待は高まりつつある。
(b) 我が国による対ベトナム投資累積額は、2001年末までに約35.2億ドルで国・地域別の認可額でシンガポール、台湾に次いで第3位である。また、貿易面についても近年着実に拡大傾向にあり、我が国はベトナムにとって最大の輸出相手国となっている(2002年)。

2-2.対象国の経済状況

(1) 1989年頃より「ドイモイ(刷新)」政策の成果が上がり始め、1995~96年には9%台の高い経済成長を続けた。しかし、1997年に入り、成長率の鈍化等の傾向が表面化したのに加え、アジア経済危機の影響を受け、外国直接投資が急減し、また、輸出面でも周辺諸国との競争激化に晒され、1999年の成長率は4.8%に低下した。その後、2001年の成長率は6.8%、2002年は7%を記録し、経済は回復過程に入ったと見られるが、国営企業改革の遅れ、主要農産物の国際価格低下、未成熟な投資環境等、懸念材料も依然残っている。
(2) ベトナムの援助吸収能力について、2000年9月には、ロシアとの間で旧ソ連債権の約85%削減を含む合意が締結されたことにより、ベトナムの債務状況は相当程度改善された。ベトナムはHIPCs(重債務貧困国)に分類されているもIMFはベトナムの債務負担能力は「持続可能」と分析し、世銀も債務救済措置を必要としない国に位置付けている。また、我が国円借款との関係では、2002年度より円借款再開後の本格返済が始まったが、2002年度の元本返済額19億円及び利息入金57億円は期日どおりに支払われている等、これまでのところベトナムの債務負担能力に特段問題は見受けられない。他方、ベトナムにおけるプロジェクト型円借款執行率(期首パイプラインベース)は、2002年度に円借款供与上位5カ国の中で最も低い7.2%と2000年度(17.1%)及び2001年度(9.8%)と比べて低下しており、本年度より改善の兆しはやや見えるものの今後ともベトナム側の改善努力が必要である。


2-3.対象国の開発ニーズ

 ベトナムでは、1986年のドイモイ政策導入後、急激な経済発展に伴ってハノイ市やホーチミン市等の大都市部を中心に電力需要が急増しており、2001年末時点の年間最大電力需要は約5,500MW、1995年から2001年までの全国電力消費量は年平均15.0%の伸びとなっている。
 ベトナム南部では今後2010年までに毎年13.4%の割合で電力消費量が増加すると見込まれており、特にメコンデルタ地域においては、現在、円借款にて同地域で建設中のオモン火力発電所1号機及びベトナム石油公社(ペトロベトナム)の自己資金にて建設中のカマウ火力発電所が予定どおり2007年に運転開始するとしても、2008年には約450MWの電力不足が生じることになる。このように、メコンデルタ地域における将来の電力消費の増加に対応する発電設備の建設が急務となっている。
 また、電力セクター改革の一環として発電部門の競争導入及び発電所運営の効率化の観点からベトナム電力公社(EVN)が取組を始めている発電所の子会社化を本事業のコンサルティングサービスを通じて支援することは、ベトナム電力セクター改革の促進に貢献するものである。

2-4.我が国の基本政策との関係

 新しい対ベトナム国別援助計画案(本年度成立予定)における以下の3つの重点分野のうち、以下(1)に該当する。また、事業内容の一部はセクター改革に寄与するものであり、以下(3)にも該当する。

(1) 成長促進(投資環境整備、中小企業・民間セクター振興、経済インフラ整備、成長を支える人材育成、国営企業改革などの経済分野の諸改革)
(2) 生活・社会面での改善(教育、保健・医療、農業農村開発/地方開発、都市開発、環境)
(3) 制度整備(法制度整備、行政改革(公務員制度改革、財政改革)


2-5.有償資金協力を実施する理由

 対ベトナム国別援助計画の3つの重点分野のうちの一つである「成長促進」を実現するためには、成長の牽引役(民間セクター、外国投資)、それが潜在力を発揮するための制度・政策及び経済活動の基盤(経済インフラ、人材)が重要と考えられるが、いずれも円借款による支援あるいは円借款に関連した支援・提言が有効となりうる分野と考えられる。本案件は、経済インフラ整備及び制度・政策の改善支援に該当し、経済活動の基盤強化の観点から、ベトナムの開発のボトルネック解消に大きく貢献する。  
3.案件概要

3-1.目的(アウトプット)

 ベトナム南部カントー市から約18kmメコン河を遡上した地点に最大出力300MWの火力発電所を建設するもの。また、オモン火力発電所の子会社化に係る知的支援を行うことで、ベトナム電力セクター改革を推進する。

3-2.実施内容

 供与限度額:275億4,700万円
 金  利:年1.3%
 償還期間(据置期間):30(10)年
 調達条件:一般アンタイド
 借入人:ベトナム社会主義共和国
 実施機関:ベトナム電力公社

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

(1) 発電所に係る環境影響評価(EIA)報告書は1998年10月科学技術環境省(MOSTE)承認済。
(2) 用地取得及び住民移転は発生しない。
(3) 石膏/灰処理については、セメント工場への売却・海外輸出を計画している。


3-4.有償資金協力の成果の目標(アウトカム)

 ベトナム南部における発電能力の向上と安定的な電力供給が可能となり、地域住民の生活水準の向上、ひいては二国間関係の増進に資することが期待される。
4.事前評価に用いた資料等及び有識者の知見の活用

 要請書、F/S、国際協力銀行から提出された資料等


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