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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成15年8月5日
評価責任者:有償資金協力課長 石兼 公博


1.案件名

1-1.供与国名
 インドネシア共和国

1-2.案件名
 「スラバヤ空港建設計画(2)(Surabaya Airport Construction Project(II ) )」
2.当該案件への有償資金協力の必要性

2-1.二国間関係

(1) 日・インドネシア関係は、1958年の外交関係開設以来、主として経済面での相互補完関係を背景として、緊密な友好協力関係を築いてきている。両国間の要人往来も活発であり、また、文化、人物交流の面でも幅広い協力関係が進展している。
(イ) 貿易・投資における相互依存関係
 インドネシアは、貿易・投資等の面で我が国と密接な相互依存関係を有している。
 貿易の面では、インドネシアは我が国にとって、米国、中国、韓国、台湾に次ぐ第5位の輸入相手国であり、インドネシアにとって我が国は輸出入両面で最大の貿易相手国である。特に同国は、我が国にとって石油、ガス等エネルギー資源の供給国であり、我が国のエネルギー安全保障の関点からも重要性が高い。(日本のエネルギー輸入に占めるインドネシアからの輸入の割合:石油4.7%(8位)、天然ガス24.8%(1位)(01年通商白書))
 投資の面では、我が国のインドネシアへの民間直接投資は、1997年のアジア経済危機による同国経済の停滞を背景に減少し、未だ十分な回復には至っていないが、我が国は対インドネシア投資国の中で常に上位を占めてきており、1967年から2001年までの直接投資累積額では、我が国は全体の14.4%と第一位を占めている。これらの直接投資により設立された日系企業は約1,000社に上り、その投資額は承認ベースで約350億ドルに達している。また、これによるインドネシア人雇用者の数は20万人を超えている。
(ロ) 重要な海上輸送路
 インドネシアは中東の石油、豪州の食料品等、我が国にとって極めて重要な輸入品を運ぶ重要な海上輸送路上に位置する。特に、我が国の石油輸入の8割以上がマラッカ海峡、ロンボック海峡、スンダ海峡を通過している。
(ハ) 東南アジアにおける重要性
 我が国にとって決定的な重要性を有する東南アジア地域において、インドネシアは国土・人口・資源の全てにおいて最大規模の国であり、ASEANの中核国の一つとして東南アジアの安定と発展のために重要な役割を担う。また、同国は我が国の対東南アジア外交上の重要なパートナーの一つである。
(2) このように、インドネシアは我が国にとって政治的、経済的、地政学的に極めて重要性が高い。我が国の外交手段の一つであるODAを活用し、同国の安定・発展を支援するとともに、強固な両国関係を構築することは、我が国にとって極めて有意義であり、我が国は同国をODAの最重点供与国の一つと位置付けている。

2-2.対象国の経済状況

(1) 所得水準(1人当たりGNP)は、710ドル(2002年)。
(2) インドネシアは1997年7月のアジア通貨危機において、ASEAN及び韓国の中で最大の経済的影響を受け、1998年のGDP成長率は-13.1%という大幅なマイナス成長となった。その後、GDP成長率は、1999年0.8%、2000年4.9%となり、2000年10月のバリ島爆弾テロ事件の発生により、バリ島を中心とした観光関連産業(ホテル、レストラン、運輸等)が打撃を受けたが、当初予想されたよりもインドネシア経済全体に与える影響は限定的であった。2001年のGDP成長率は世界経済全体の落ち込みの中にあって、好調な国内消費に支えられ3.4%を達成。2002年も3.7%の成長となった旨中央統計局が発表。
(3) しかし、インドネシアにおける外国投資は、通貨危機以降激減し(1997年には337.9億ドルであったが、98年136.5億ドル。)、さらに治安の不安定性やガバナンスの確立の遅れなどから外国投資が回復しておらず(2002年は98.0億ドル)、市場の信任の低迷等状況は依然として厳しい。
(4) インドネシアにおいては、IMFプログラムによる経済の構造改革を進めている。また昨2002年には、財政健全化に向けた取り組みの一環として燃料補助金等の各種補助の削減を段階的に実施している。
(5) インドネシアの対外債務残高は2001年時点で1,331億ドルに達し、対GDP比91.1%、DSRは41.4%と債務返済が財政の負担となっていたが、2002年時点では債務残高は1,313億ドル、対GDP比76.0%、DSRは31.1%と改善してきている。2002年4月のパリ・クラブ会合において、2002年4月1日~2003年12月31日までに弁済期日が到来する元本及び利子の繰延が合意されているが、2003年7月、インドネシア政府は2003年末をもってIMFプログラム及びパリクラブからの「卒業」を表明。

2-3.対象国の開発ニーズ

(1) インドネシアにおける持続的経済成長・貧困削減のためには、改革推進と経済成長との好循環の実現に向けた環境整備が必要であり、経済インフラの整備は、ビジネス環境を整備し、民間投資を回復するために重要である。
(2) インドネシアにおける経済インフラの中で運輸セクターは重点分野であり、広大な国土と多数の島々が点在している同国にとって海上交通や航空の果たす役割は大きい。一方で大都市における交通混雑、陸海空全ての分野の運輸インフラ整備が不十分であること、輸送の安全性の向上や交通公害の低減などへの対策の遅れ等の課題を抱えている。
(3) 本計画は、国家開発計画(PROPENAS)の中で国家開発の優先分野に掲げられている5点の1つである「経済再建と持続的で公正な開発」に寄与するものである。


2-4.我が国の基本政策との関係

 本計画は、対インドネシア国別援助方針に定められた、我が国の対インドネシア支援の重点5分野のうち、「産業基盤整備」に該当する。また、メガワティ政権に対して提示した我が国の対インドネシア支援の3本柱のうち「経済ボトルネックの解消等緊急ニーズへの対応」に該当する。

2-5.当該案件に有償資金協力を供与する理由

 スラバヤ空港は、旅客数、貨物数でインドネシア国内第3位のハブ空港であり、シンガポール、台湾等の東南アジア諸国への路線が就航する国際空港である。同空港の旅客数、取扱貨物量は、通貨危機時に一時低下したものの、その後回復傾向にあり、今後も増加が見込まれる。したがって、同空港の設備を整備・拡張し、将来の需要に備えることで物流の効率化を図り、インドネシアの投資環境整備に貢献するものであり、有償資金協力を実施する意義が認められる。
3.案件概要

3-1.本プロジェクトの目的(アウトプット)

 本計画は、将来の需要に対応するため空港設備(施設容量:旅客数約600万人、貨物量約12万トン)を整備・拡張するもの。主な事業コンポーネントとしては、旅客ターミナル、貨物ターミナル、管制設備等の新設・更新がある。なお、96年に本件第1期事業に対して128億6,700万円までの円借款を供与する旨の交換公文の締結を行っている。

3-2.実施内容

(1) 供与限度額:150.07億円
(2) 供与条件
金  利:年1.8%
償還期間:30年(10年の据置期間を含む)
調達条件:一般アンタイド
借入 人:インドネシア政府
実施機関:インドネシア運輸省航空総局
(3) 支出期間
関係借款契約発効の日から6年

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

(1) 環境社会配慮
 特になし。なお、本計画実施のために必要な住民移転は全て完了済み。
(2) 外部要因リスク
 経済危機等により旅客や貨物取扱量が伸び悩むこと。


3-4.円借款供与の成果の目標(アウトカム)

 旅客・貨物ターミナル等施設の整備により、今後増大が見込まれる国内、国際便の旅客数、貨物数(旅客数が1996年の400万人から2010年は約600万人に、貨物取扱量が1996年の約5万トンから2015年は約12万トンに達する見込み(インドネシア運輸省)。)に対応するために必要な施設キャパシティの不足が解消されること、また、管制・空港保安設備の更新等により安全性が改善されるとともに、離発着回数の増大に対応する管制能力の向上が達成されることが期待される。
4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等

 要請書、F/S、JBICより提供された資料、年次協議結果等


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