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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成15年4月11日
評価責任者:無償資金協力課長 山田彰


1.案件名

1-1.供与国名
 スリランカ民主社会主義共和国

1-2.案件名
 「マータラ上水道整備計画(国債1/3期)」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
 スリランカは伝統的な親日国であり、特に大きな政治的懸案もなく良好な関係が続いている。1996年5月にはクマーラトンガ大統領が元首として17年ぶりに公式訪日し、2000年にはカディルガマール外相が訪日し、伝統的友好関係を再確認した。また、2002年の停戦合意、同年9月の和平交渉の開始を受け、同国が本格的な紛争解決に向かう中で、2003年1月には川口外相が外務大臣としては16年ぶりにスリランカを訪問し、停戦中の北・東部地域の視察も行った。同年6月には我が国が「スリランカ復興開発に関する東京会議」を主催し、51カ国、22国際機関が参加し「東京宣言」が採択され、総額45億ドルに上る支援の意図表明のうち、我が国よりは今後3年間に最大10億ドルの支援を行うことを表明した。

2-2.対象国の経済状況
 伝統的に米と3大プランテーション作物(紅茶、ゴム、ココナッツ)を中心として農業に依存していたが、近年工業化による経済多角化に努力している。内戦の激化により経済がダメージを受けたことは否めないが、1990年~99年には年平均5%台の成長を維持している。輸出の主な分野としては、繊維・衣料、紅茶等があげられ、輸出先は米国、英国、ロシア、中東等である。2002年度の一人あたりの名目GNPは836ドルであり、失業率は低下傾向で推移している。

2-3.対象国の開発ニーズ
 本案件実施予定地域であるマータラ地区は、スリランカ国南部州の行政の中心地であり、人口的にも全国で6番目に大きな都市である。しかし、同地域は農業のみに依存し、発展可能性のある第二次産業がないため、貧困率はスリランカ国の全17県のうち6番目に高い。また、20年以上紛争が続き現在停戦合意がなされている北東部地域の兵士の多くは南部地域の貧困層出身であり、今後数万人規模の帰還兵が南部地域に戻ることが想定されている。
 スリランカの水道普及率は約65%であるが、本件実施予定地域では一部の地域を除き30%という低い状況にある。同地域では、人口増加に伴う需要の増加により、新規給水加入者の制限が行われ、ほとんどの地域で時間給水がなされている(都市部では1日4~18時間給水)、農村部では2日に4~6時間給水)。また、農村部においては井戸から取水された地下水が処理されないまま利用されているため、赤痢等の感染症が多発し衛生的にも重大な問題となっている。また、南部地域はここ数年干ばつが多発し、乾期には約4ヶ月に亘って断水となるなど深刻な被害を受けている。このような状況に鑑み、スリランカ政府は「マータラ上水道整備計画」を策定した。

2-4.我が国の基本政策との関係
 我が国は、「平和の定着」のためのODA活用を提唱しており、スリランカへの支援はこれに合致する。また、対スリランカ援助の重点分野の一つとして「経済基盤の整備・改善」が掲げられており、本件はこの主旨に合致する。

2-5.無償資金協力を実施する理由
 スリランカは低中所得国であり、本案件の実施について、スリランカ政府より高い優先順位を付して要請が行われている。
3.案件概要

3-1.目的
 本計画は、スリランカ政府の「2025年までに全ての国民が安全な水にアクセスできるようにする」という政府計画の一部を構成し、水道普及率の向上及び保健・衛生状況の改善を目的としている。

3-2.案件内容
 供与限度額は14億9,800万円(平成15年度:2.13億円、平成16年度:11.27億円、平成17年度:1.58億円)。1年目は、浄水場の造成、パイプの調達。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
 次の事項がスリランカ政府によって確保される必要がある。
 施設維持管理費用の確保。

3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) 新たに給水地域となるディヤガハ配水区において、衛生状況が格段に改善する
(2) ガンダーラ配水区及び以東の給水区域では、水道普及率が上昇し、給水人口が大幅に増加する。また、現在1日12~18時間の時間給水が行われている状況であるが、案件実施後には24時間給水が可能となる。
(3) ガンダーラ以西の給水区域では、水道普及率が上昇し、現在1日20時間程度の時間給水を行っている状況であるが、案件実施後には24時間給水が可能となる。
(4) スリランカとの二国間関係を増進する。
4.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用

(1)先方政府からの要請書
(2)第3回無償資金協力実施適正会議にて検討。


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