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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成15年12月19日
評価責任者:無償資金協力課長 山田彰


1.案件名

1-1.供与国名
 パキスタン・イスラム共和国

1-2.案件名
 「ポリオ撲滅計画」
2.無償資金協力の必要性

2-1.二国間関係
 パキスタン・イスラム共和国は、99年の無血クーデター以来軍政が続いているが、非同盟やイスラム諸国との連帯を重視しつつインドとの対抗上中国との関係を重視しており、また西側諸国との友好関係を強化する路線をとっている。我が国との関係では、我が国はパキスタンにとって最大の貿易相手国であるなど、貿易・経済関係を軸として伝統的友好関係を維持している。
 我が国は、1998年5月の核実験実施に伴う経済制裁措置により、人道的支援を除きパキスタンに対する無償資金協力を停止していたが、我が国の措置が相応の成果をあげたこと、テロとの戦いにおいて国内的に大きな困難を抱えている同国を中長期的な観点から支援していくことが必要であることから、わが国は、2001年11月、経済制裁措置を解除し、パキスタン政府の貧困削減の努力を支援するため2年程度に亘り3億ドルの無償資金協力を行う旨発表している。

2-2.対象国の経済状況
 1990年代後半、財政の破綻、輸出の停滞等により、財政赤字と経常赤字が深刻化するとともに対内・対外債務が激増したが、1999年のムシャラフ政権の発足以降、税収増加と慎重な支出管理により財政赤字の大幅な低減(2003年GDP比4.5%)に成功しているほか、貿易収支の改善、移転収支の増加等により、経常収支も黒字に転換した。さらに、外貨準備高の急増(2003年10月末現在114億ドル超(輸入の11か月分相当))に、財務省債務局の設置、財政安定化と公的債務削減を義務付けた財政責任・債務管理令の制定、高利子対外債務の期限前償還等債務管理能力強化のための努力があいまって、累積債務残高及び債務管理能力は急速に持続可能なレベルに改善している。
 他方、これら財政構造の改善に伴う開発予算の増加にもかかわらず、依然として貧困率は高く(2003年31.8%、一人当たりGDP約450米ドル)、継続して貧困削減のための取り組みが必要な状況にある。

2-3.対象国の開発ニーズ
 パキスタン政府は、ユニセフの協力の下、1994年より毎年継続的にポリオワクチンの全国一斉投与(NID:NationalImmunizationDays)を実施し、ポリオ撲滅に向けて取り組んできている。この結果、ポリオの報告例は1993年の1,803件から2002年の90件へと年々減少してきているが、依然としてその数は世界的に見ても高い水準にある。具体的には、ポリオ未撲滅国の中でも発生件数の多い4ヶ国(インド、パキスタン、ナイジェリア、ニジェール)の一つであり、2002年の全世界における報告例(1,919件)のうち5%(90件)がパキスタンで発生している。このため、ユニセフは、パキスタンにおけるポリオ撲滅の早期実現に向け一層積極的な取り組みが重要であるとして、今後、さらにNIDを強化することを指導している。
 しかしながら、パキスタンの財政難により、自国だけでNID実施に必要となる多量のワクチンを確保することが困難となっている。
 このような状況の下、パキスタン政府およびユニセフは「ポリオ撲滅計画」を策定し、この計画の実施のためのポリオワクチンの購入に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。

2-4.我が国の基本政策との関係
 1996年に策定・公表された対パキスタン国別援助方針の援助重点分野の一つである「社会セクターに対する支援」に合致している。

2-5.無償資金協力を実施する理由
 貧困(一人当たりGDP約450米ドル)、高い人口増加率、低い識字率、失業の増大、エネルギーの不足、財政赤字等困難な経済社会問題に直面しながら積極的に国内開発・貧困削減に取り組んでおり、無償資金協力の必要性が高い。
3.案件概要

3-1.目的
 本計画は、パキスタン全土の5歳以下の乳幼児約3,800万人に対するポリオワクチンの全国一斉投与に必要なワクチンを確保することを目的としている。

3-2.案件内容
 供与限度額は10億8,300万円。全国一斉投与に必要な経口ポリオワクチン2億2,000ドースのうち9,300万ドースの調達を行うもの。

3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
 パキスタン政府により接種対象乳幼児への確実なワクチン投与が行われる必要があ る。

3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) 本計画の実施によって、ポリオ・ワクチン全国一斉投与(5歳以下の全乳幼児3,800万人が対象)の実施が可能となり、パキスタンのポリオ撲滅に資するとともに、同国の乳児死亡率、5才未満死亡率の低減等乳幼児の健康の改善が図られる。
(2) ポリオ撲滅活動により、予防接種の重要性が国民に浸透し、その他の疾患(破傷風、百日咳、結核等)に対する予防接種活動(EPI)が促進される。
(3) パキスタンとの二国間関係を増進させる。
4.事前評価に用いた資料、有識者の知見等

(1)ユニセフからの要請書
(2)第8回無償資金協力実施適正会議にて検討。


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