評価年月日:平成15年7月15日
評価責任者:無償資金協力課長 山田彰
1.案件名
1-1.供与国名
中華人民共和国
1-2.案件名
「西安市廃棄物管理改善計画」 |
2.無償資金協力の必要性
2-1.二国間関係
我が国と中国は、地理的に隣接し、政治的、歴史的、文化的に密接な関係にある。経済関係も1972年の国交正常化以降着実に進展し、相互依存関係が一層発展している。中国にとって我が国は最大の貿易相手(2002年のシェア16.4%)であり、我が国にとって中国は第2番目の貿易相手(2002年のシェア13.5%)である。
2-2.対象国の経済状況
(1) |
中国の一人当たりGDPは約911ドル(2001年)で、低中所得国に属する。主な産業は農業のほか、エネルギー産業、鉄鋼、繊維、食品産業である。 |
(2) |
1978年に始まった改革・開放政策は、1992年の鄧小平による「南巡講話」以降加速され、中国経済の「市場経済化路線」が定着し、2002年にはWTOへの加盟を実現している。その結果、経済成長の加速や貿易・対中投資の大幅な伸びがもたらされ、国民の生活水準の向上、対外経済関係の拡大が進みつつある。このような流れの中、2002年の中国経済は、政府の景気対策、海外からの直接投資の増加等により8%の経済成長を達成している。 |
(3) |
他方、市場経済化の進展に伴う課題への対応も急務となっており、中国政府によって、三大改革(国有企業改革、金融体制改革、行政機構改革)を始めとする取組が積極的に進められている。さらに、長期的に社会的な不安定要因となりうる問題(例:地域間格差、雇用問題、人口増加)も顕在化しつつある。中国経済、特に内陸部を中心とした貧困層・貧困地域への対策は未解決の課題であり、2001年から開始された第10次5ヶ年計画においては、東部沿海地域と中西部内陸地域の経済格差を是正するために、「西部大開発戦略」が最重要テーマとして位置づけられている。 |
2-3.対象国の開発ニーズ
(1) |
2001年3月、2005年までを対象期間とした「国民経済と社会発展の第10次5ヶ年計画綱要」が報告・採択された。同計画は、今後5年間の中国の国民経済と社会発展のあり方について、成長、構造調整、改革・開放、科学技術の発展、国民の生活水準の向上、経済と社会の協調的発展などを主題に課題を述べ、それぞれについて達成目標(例:経済成長率年平均7%など)を掲げている。 |
(2) |
上記2-2.で述べたとおり、市場経済化の進展に伴う課題や長期的に社会的な不安定要因となりうる問題等も顕在化しており、第10次5ヶ年計画などを踏まえた中国における社会・経済分野における開発上の主要課題は以下のとおり。
(イ)市場経済システムの形成と成長の持続
(ロ)持続可能な発展の実現
(ハ)地域間格差の是正
(ニ)教育振興と人材育成
(ホ)雇用・社会保障制度の拡充 |
2-4.我が国の基本政策との関係
(1) |
2001年に策定された対中国経済協力計画は、以下の分野を重点分野としてい
る。
(イ)環境問題など地球的規模の問題に対処するための協力
(ロ)改革・開放支援
(ハ)相互理解の増進
(ニ)貧困克服のための支援
(ホ)民間活動への支援
(ヘ)多国間協力の推進
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(2) |
本案件の対象地域である西安市は、中西部内陸地域に位置づけられているが、現在西安市で発生する都市生活廃棄物は3,000トン/日であり、今後、市の発展に伴いさらに増加することが見込まれており、効率的な中継輸送システムの構築、最終処分場の浸出水処理施設の建設、環境モニタリング体制の確立、最終処分場機材の更新といった適正な廃棄物処理システムの構築が必要となっている。
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(3) |
西安市における廃棄物処理システム構築は、対中経済協力計画が重点分野としている環境問題など地球的規模の問題に対処するための協力に該当する。
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2-5.無償資金協力を実施する理由
中国は低中所得国であり、本案件の実施について中国政府から高い優先順位を付して要請が行われている。 |
3.案件概要
3-1.目的
本計画は、我が国の実施した開発調査「西安市生活廃棄物処理計画」の結果を反映させて西安市が策定した「西安市環境衛生施設発展計画」に基づくプロジェクトのひとつであり、西安市の廃棄物管理システムの改善により、西安市の生活環境の改善を図るものである。
3-2.案件内容
供与限度額は13.23億円。西安市における廃棄物中継輸送基地用機材、環境モニタリング機材、廃棄物最終処分場機材の整備及びこれら機材の運営・維持管理技術の移転。なお、中継輸送基地用建屋等施設の建設については西安市が実施。。
3-3.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点
次の事項が中国政府(西安市)によって確保されること。なお、本件施設の建設に当たり必要な環境影響評価については、既に中国側により実施済みである。
・ |
本計画により整備された機材の維持管理を適切かつ継続的に実施すること。 |
・ |
本計画により整備された環境モニタリング機材により、適切かつ定期的な環境管理を実施すること |
3-4.無償資金協力の成果の目標(アウトカム)
(1) |
中継輸送の実施により不法投棄が減少し、ごみ収集量が2,885t/日(2000年)から3,774t/日(2005年)に増加する。 |
(2) |
収集ごみ量の増加により、全体の発生量に対するごみ収集率が94%(2000年:市街区全区)から100%(2005年:同)に向上する。 |
(3) |
本計画の実施により実現する廃棄物の中継輸送システムが、廃棄物管理のモデル事例として中国中西部のみならず中国全土への技術移転が図られる。 |
(4) |
中国との2国間関係を増進する。 |
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4.事前評価に用いた資料等及び有識者等の知見の活用
(1)先方政府からの要請書
(2)第5回無償資金協力実施適正会議にて検討。
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