2025年版開発協力白書 日本の国際協力

巻頭言

国際社会および日本を取り巻く国際情勢の変化は、様々な分野で加速度的に進んでいます。ロシアによるウクライナ侵略や不安定な中東情勢は、国際社会の課題解決に向けた各国の協力を一層困難なものとしています。一方で、国際社会で発言力を強めるグローバル・サウスとの連携強化もますます重要となっています。

このような情勢の下、世界から日本への期待が、より高まっています。様々な分野で、国際社会から期待される日本の役割と責任を果たしていくことで、国益を守り、国際社会でより存在感を高める「力強く、視野の広い外交」を展開すべく、日本外交を展開するための重要なツールであるODAを戦略的に活用し、開発協力大綱の重点政策に基づき、相手国のニーズも踏まえ、きめ細やかな協力を進めていきます。

第一に、日本と開発途上国の双方における新しい時代の「質の高い成長」を実現することです。日本は、資源の多くを海外に依存しており、一国のみで繁栄を続けていくことはできません。ODAを通じて相手国、さらに国際社会の平和と繁栄に貢献することは、資源の安定供給の確保にも直結し、ひいては日本の平和や安全、さらなる繁栄といった国益につながります。ODAを含めた日本らしい外交によって、相手国の信頼を得ること、そして相手国の経済成長を促し購買力が向上することは、様々な日本製品・サービスや農林水産品の輸出を後押しすることにもつながります。

これまでの方式に加えて、オファー型協力や民間投資を促す新しいODAの仕組みも使い、各国のニーズに沿った重点投資を行うことにより、エネルギー、重要鉱物の安定的確保を始めとする、経済安全保障等の重要課題にも対応していきます。

2025年8月に横浜で開催した第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)では、「革新的な課題解決策の共創」というテーマの下、日本の技術や知見を活かしながら、日本とアフリカ双方の繁栄につながる課題解決策について議論しました。発表した取組を着実に実施し、日本とアフリカの関係を一層深化させていきます。

第二に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化です。「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を日本外交の柱として、時代の変化に合わせて進化させていきます。FOIPは、インド太平洋地域の連結性を高め、力や威圧とは無縁で、自由や法の支配が尊重される、豊かな地域にすることを目指すものです。日本は、インド太平洋の中心に位置し、FOIP実現の要であるASEANの連結性強化に向けた取組をハードとソフトの両面で支援し、南西アジア地域でも道路、港湾などのインフラ整備を進めてきました。TICAD 9で発表した「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」を含め、引き続き地域の平和と安定、繁栄に取り組むべく、同志国や官民のパートナー等とも連携し、連結性の強化や地域の人材育成、能力構築支援といった実践的かつ多面的な協力を進めます。

ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であり、日本としても、G7と連携し、ウクライナのニーズを踏まえながら、復旧・復興支援を含め、日本の知見や技術を活かした支援を継続していきます。

中東においても、ガザ情勢を始め、依然として不安定な状態が続いています。日本はこれまで築いてきた中東各国との信頼関係に基づき、関係国とも連携して、中東の平和と安定のために、引き続き様々な外交努力を積み重ねていきます。ガザ情勢についても、人道状況の改善や、早期の復旧・復興に関する国際的な取組に積極的に貢献していきます。

第三に、複雑化し、深刻化する地球規模課題への国際的取組を主導することです。2024年9月の国連「未来サミット」の結果も踏まえ、人間の安全保障の理念の下、2030年までの国際社会全体でのSDGs達成に向け、気候変動・環境、国際保健、自然災害、食料・エネルギーといった各分野の課題解決に取り組みます。

これらの取組を力強く進める上では、ODAを支える制度と基盤の改善、強化が不可欠です。開発途上国に向けた民間投資の増加や開発ニーズの多様化といった環境変化を踏まえ、2025年、独立行政法人国際協力機構(JICA)法の一部を改正しました。引き続き、ODAを呼び水とした民間投資の拡大も促してまいります。

2025年、JICA海外協力隊は発足60周年を迎えました。「日本らしい顔の見える開発協力」の担い手として活躍するJICA海外協力隊は、これまで99か国に5万8,000人以上が派遣されています。生活環境が厳しい地域において、現地の人々に寄り添い、草の根レベルで地域社会の発展に取り組み、大きな成果を積み重ねてきました。こうした日本らしい開発協力を通じて築き上げられてきた開発途上国、国際社会との間の絆と信頼は、日本にとってかけがえのない財産です。また、帰国後の隊員による、派遣先での経験を活かした国内外の様々な分野における活躍も、非常に高く評価されています。協力隊の活動が一層意義のあるものとなっていくよう、引き続き支援してまいります。

2025年版開発協力白書は、日本の開発協力の1年間の概要を国民の皆様にご報告するものです。公的資金を原資とするODAには、国民の理解と協力が不可欠です。ODAが相手国のみならず、日本の経済や国民生活にも寄与することなど、ODAの意義や成果について国民の皆様のご理解と共感を得られるよう、より一層力を入れてまいります。一人でも多くの方々が本書を手に取って頂き、日本の開発協力の取組や意義に対する理解の一助となることを願っています。

2026年3月

外務大臣 茂木敏充

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