開発協力トピックス1
「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のための新たなプラン

インド世界問題評議会において政策スピーチを行い、FOIPのための新たなプランを発表する岸田総理大臣(写真:内閣広報室)

動画「インド太平洋の未来~自由で開かれたインド太平洋(FOIP)のための新たなプラン」
アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域は、世界人口の半数を擁する世界の活力の中核です。この一帯の各国・地域、そして、理念を共有する幅広い国際社会のパートナーと共に法の支配に基づく自由で開かれた秩序を構築するため、日本は2016年に「自由で開かれたインド太平洋(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)」を提唱し、その実現に向けた取組を進めてきました。
2023年3月20日、インドを訪問した岸田総理大臣は「インド太平洋の未来~『自由で開かれたインド太平洋』のための日本の新たなプラン~“必要不可欠なパートナーであるインドと共に”」と題する政策スピーチを行い、(1)「平和の原則と繁栄のルール」、(2)「インド太平洋流の課題対処」、(3)「多層的な連結性」、(4)「『海』から『空』へ拡がる安全保障・安全利用の取組」をFOIP協力の4つの柱とする、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のための新たなプランを発表しました。
新たなプランでは、国際社会の歴史的転換点において、「自由」、「開放性」、「多様性」、「包摂性」、「法の支配」を中核とするFOIPの理念を改めて示しつつ、FOIPを実現するための取組を強化することとしています。そうした取組の一つとして、岸田総理大臣から、2030年までにインフラ面で官民合わせて750億ドル以上の資金をインド太平洋地域に動員し、各国と共に成長していく旨を発表しました。
2023年6月に改定された開発協力大綱においては、日本の開発協力の重点政策として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を掲げています。その中で、特に、FOIPのビジョンの下、こうした取組を進めるとともに、開発途上国がそれに主体的に関与し、力や威圧の影響を受けず、その果実を享受できるようにするための協力を行うことを力強く打ち出しました。
日本は、FOIPのための新たなプランの4つの柱にも沿う形で、様々な取組を推進してきています。インドネシアのジャカルタ首都圏東部パティンバンへの新港の建設もその一例です。パティンバン港のコンテナターミナルは、自動車ターミナル等を建設することにより、首都圏の物流機能強化を図るものです。これにより、ジャカルタ首都圏の港湾の容量不足の解消や貨物物流の効率化を通じた輸出の促進を図り、地域・国際経済の連結性強化等を後押ししていきます。パティンバン港は、日系工場を含む自動車関連企業からのアクセスも良く、インドネシアからの輸出の活発化に寄与し、日本企業にも裨(ひ)益することが見込まれています。
この例からも分かるように、連結性の確保を通じて、物流の円滑化を促進することは、日本企業の域内輸出、海外展開の促進にもつながります。また、インド太平洋における連結性の実現に向け、日本は「質の高いインフラ」整備を支援しており、開発途上国への日本独自の技術協力や人材育成を通じて、日本企業のODA受注力や日本の信頼の向上にもつながるよう取り組んでいます。
また、日本は、海洋の平和と安全の確保にも貢献しています。例えば、非常に多くの日本関連船舶が航行する物流の要所であるマラッカ・シンガポール海峡において、日本はODAを活用し、沿岸諸国の海賊取締り能力向上を支援し、発生件数の減少につなげています。また、インド洋においても、海難救助のための海上保安機関の能力向上支援、海図作成のための技術協力、船舶通行支援サービス(VTS)に関する支援を実施し、海上交通の安全の確保に貢献しています。
さらに、日本は、法制度整備支援や司法改革支援により、開発途上国における法の支配の普及・定着も強化しています。国際社会が複合的な危機を迎える中において、こうした取組はますます重要です。開発途上国におけるグッド・ガバナンスの確立、持続的成長の実現のために不可欠な基盤作り、日本企業の海外展開に有効な貿易・投資環境の整備へ貢献しています。
島国である日本は、世界第4位の貿易大国であり、その産業と生活は、海上輸送物資に大きく依存しています。こうした観点からも、連結性の確保、シーレーンの安全確保は、日本の経済、エネルギー、食料の安全保障の観点からも重要です。透明性の高いルールに支えられ、様々な人・物・知恵が活発に行き交う「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の存在なくして、日本およびこの地域の安定と繁栄はあり得ません。日本はこれからも、ODAを中核とした開発協力のインパクトの最大化を目指しつつ、FOIPの実現を進めていきます。
インドネシア・パティンバン港のアクセス道路(写真:株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル)

JICAおよび海上保安庁によるマレーシア海上法令執行庁向け逮捕術コース研修の様子

カンボジアにおける「法・司法分野人材育成プロジェクト」での裁判官、検察官学校の学生を対象としたセミナーの様子(写真:JICA)