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政府開発援助(ODA)白書
2003年版 概要

平成16年3月


構成


今回の白書においては、昨年改定されたODA大綱を特集し、ODA大綱の改定の背景や新大綱の内容を最近の事例を交えつつ解説。
特に、改定されたODA大綱の下、展開する日本のODAの新たな取組、政府としての考え方を盛り込む。
また、例年の白書にならい、第II、III部において、最近の援助を巡る国際的潮流や我が国の考え方、2002年度の援助実績についても概括的に報告。


ポイント


冷戦後の国際環境の変化、国内の厳しい経済・財政状況、国民のODAに対する厳しい見方、ODA予算の減少傾向などODAを取り巻く状況は大きく変化している。政府は、ODA改革を精力的に推し進め、ODA大綱を改定。
政府は、改定されたODA大綱の着実な実施に向けて取り組んでいる。ODAの目的が「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資する」とされたことを踏まえ、ODAを一層戦略的に活用していくとともに、男女共同参画(ジェンダー)を含む援助の公平性の確保や「人間の安全保障」の視点といった大綱に示された基本方針を個々のODA事業に反映させていくことや、重点課題となった「平和の構築」分野への取組を積極的に行っていく。さらに、ODA改革の成果と方向性に沿って、政府全体として一体性と一貫性のある援助政策の立案・実施、開発途上国との政策協議の強化、現地機能の強化、国民参加の拡大等をさらに進めていく。
新しいODA大綱を踏まえた形で、日本のODAは具体的に展開している。新たな国別援助計画の策定及び改定(スリランカ、ベトナム)、援助実施機関による環境社会配慮ガイドラインの策定・実施、TICADIIIの開催や日・ASEAN特別首脳会議の開催を通じたアフリカ諸国、アジア諸国に対する支援の表明、イラクやアフガニスタンにおける平和の構築支援の推進等、新大綱に沿った取組が進められている。


政府開発援助(ODA)白書
2003年版 要旨

第I部 「ODA大綱」の改定と日本の新たな取組

第1章 日本のODAを取り巻く状況とODA大綱の改定

第1節 岐路に立つ日本のODA


第2節 ODAを取り巻く国際的潮流の変化

  • グローバル化の進展に伴い、貧困削減をはじめとする開発途上国の開発問題が重要課題となっている。また、平和の構築「人間の安全保障」といった新しい開発課題や考え方も出現。
  • 国際社会では、明確な量的目標と達成期限を定めたミレニアム開発目標がとりまとめられ、その実現に向けた取組が強化されている。先進各国は、米国における同時多発テロの発生を受け「貧困がテロの温床になりえる」との認識から、相次いでODAの増額を発表
  • NGO、地方公共団体、大学、研究機関、企業といった援助主体の多様化や現地での援助協調を基調とした援助手法の多様化が進んできている。
    【図表I-1:DAC諸国のODA実績の推移】(PDF)PDF

第3節 ODA大綱改定のプロセス

  • ODA大綱の改定にあたっては、国民と共に歩むODAを目指し、ODA総合戦略会議における論点整理等に加え、有識者、実施機関、NGO、経済界等との数多くの意見交換、インターネット等を通じたパブリックコメント募集や公聴会などを実施。
  • 結果として、過去のODA政策立案過程と比較して例のない形で広く国民各層からの意見を聴取することができた。
    【図表I-10:ODA大綱の改定に関わる関係各方面からの意見聴取】(PDF)PDF

第4節 改定されたODA大綱のポイント

  • 政府は、新しいODA大綱に示された理念と基本方針、援助実施の原則などに従い、幅広い国民参加の下、ODAを活用し、国際社会の平和と発展に貢献していく考え。ODA改革はODA大綱の改定で事足れりとするものではなく、今後とも着実かつ継続的に実施

第2章 新ODA大綱の概説と最近の実施状況

第1節 理念

  • 目的 -なぜODAを行うのか-

    • 途上国を中心に貧困、紛争、テロ、感染症、環境問題、男女の格差など開発課題が山積
    • 国力にふさわしい貢献を行うことは、国際社会からの支援を受けつつ戦後復興を果たし、世界第2位の経済力となった日本の責務である。
    • 政治・経済・社会など様々な面で諸外国との相互依存関係が進展する中、自国の生存と繁栄を確保するためには、平和で安定した国際環境が不可欠となっている。
    • 平和を希求する日本にとって、ODAを通じて途上国の開発支援に積極的に取り組み、日本の姿勢を内外に示していくことは、国際社会の共感を得られる最もふさわしい政策
    • 日本がODAを活用して国際社会の諸課題に取り組むことは、国際社会からの厚い信頼を確保することにつながる。ODAは途上国の発展と福祉の向上のために用いられるものであるが、こうした支援は途上国の利益となるだけでなく、日本自身の利益と深く結びついている
    • 日本外交の基本方針は日本及び日本国民の安全と繁栄を確保することであり、外交の一環として実施されるODAにおいても、それが日本の安全と繁栄の確保に資するものでなければ国民の理解と支持は得られない。
  • 基本方針 -どのようにODAを行うのか-
     ODA大綱に掲げられた5つの基本方針は、ODA政策の政策立案段階から実施に至るまで、あらゆる段階において、日本が常に重視する最も重要な考え方を示したもの。

    • 途上国の自助努力支援は、引き続き重要。人づくり、法・制度構築や経済社会基盤の整備などは途上国の発展の基本。
    • 国家の安全保障という枠組みを再考し、個々の人間に着目し、生存・生活・尊厳を確保するため人々の保護と能力強化を図るという人間の安全保障の視点について、その理念の普及と実践のため努力していく。
    • 公平性の確については、社会的弱者が置かれている状況や貧富の格差地域格差にも考慮し、日本のODAの案件自体が現地の環境や地域社会に与える影響等にも十分注意を払う。同時に、政府は、男女共同参画の視点を重視し、女性の地位向上に一層取り組んでいく考え。
    • 日本には世界でも希有な知識や経験の蓄積があり、こうした日本の経験と知見を活用した援助を推進していく。こうした援助は、相手国国民との親善と相互理解を深める意味でも非常に有効。また、日本の重要な施策との連携を図り、政策全般の整合性を確保する。
    • 1990年代に入り、限られた援助資源の中で援助を効率的、効果的に実施するため、国際社会における連携と協調が活発化。日本としても、南南協力をはじめ独自の援助戦略や考え方を発信すべく、積極的に参画していく。
  • 重点課題 -どのような課題に対してODAを行うのか-
     大綱では4つの重点課題を掲げているが、これらは特定の「分野」ということではなく様々な分野にまたがる分野横断的な課題として位置づけられている。

    • 貧困削減については、ミレニアム開発目標の根幹をなす教育、保健医療・福祉、水と衛生や農業といった分野を重視。東アジアの経済発展の経験に鑑みても、経済成長を通じた貧困削減というアプローチが重要であり、日本はこうした考えに立って貧困削減に貢献していく。
    • 日本は途上国の持続的成長に向けた努力を積極的に支援。そのため、経済社会基盤(インフラ)の整備、政策立案、制度整備、人づくりへの協力を重視するとともに、貿易・投資との有機的な連携に努める。
    • 地球的規模の問題への取組については、国際社会が直ちに協調して対応すべき問題であり、日本は、ODAを通じて環境問題、人口問題、食料、エネルギー、災害、感染症、テロや麻薬・組織犯罪等といった問題に取り組んでいく。
    • 冷戦後、地域・国内紛争が頻発化するに伴い、紛争予防・紛争解決、平和の定着や国づくりといった平和の構築において、ODAの果たす役割が重要視されるようになる。日本は、この分野において積極的な取組を行っていく決意を表明し、イラク、アフガニスタン、スリランカの復興支援等に貢献。
      【図表I-13:平和構築支援の概念図】(PDF)PDF
      【図表I-14:日本の対イラク支援(2003年末現在)】(PDF)PDF
      【コラムI-7:奥大使、井ノ上一等書記官が遺したもの】(PDF)PDF

  • 重点地域 -どのような地域・国に対してODAを行うのか-
    • 日本と緊密な関係を有し、日本の安全と繁栄に大きな影響を及ぼし得るアジアは重点地域。同時に、同地域の経済社会状況の多様化、援助需要の変化に十分留意して重点化を図る。
    • 他方、2003年9月末のTICADIIIの開催やODA大綱における中東、中南米、大洋州に関する記述などに見られるとおり、アジアを重点地域とすることは、決して他の地域に対する援助を軽視するものではない。

第2節 援助実施の原則

  • 4つの諸点(環境と開発、軍事的使用、軍事支出と大量破壊兵器、民主化・人権や市場経済導入の努力など)を含む旧大綱の原則は、今日においてもその妥当性、重要性が失われておらず、基本的に新しい大綱に踏襲された。
  • 個別案件の実施から経済協力に関する方針の策定に至るまで、すべてのODA事業は、「援助実施の原則」を含めたODA大綱全体を踏まえ、これに沿った形で実施されている。

第3節 援助政策の立案及び実施等

  • 援助政策の立案及び実施体制については、一貫性のある援助政策の立案(中期政策や国別援助計画)、関係府省間の連携政府と実施機関との連携を通じて、より効果的・効率的な援助の実施を図る。また、現地機能の強化、開発途上国との政策協議の強化を通じて、日本の援助政策と相手国の開発政策の調和を図り、より効果的・効率的な援助の実現を目指していく(2003年4~11月の間で24か国との政策協議を実施)。NGOをはじめとする内外の援助関係者との連携は引き続き強化していく。
    【図表I-17:ODA関係府省間連携強化のための取組】(PDF)PDF
    【コラムI-9:JICAの独立行政法人化】(PDF)PDF
    【図表I-18 :現地ODAタスクフォース】(PDF)PDF
  • 国民参加の拡大については、国民各層の広範な参加(シニア海外ボランティア派遣事業など)、人材育成と開発研究(大学・研究機関との連携など)、開発教育情報公開と広報(ODA民間モニターなど)を促進していく。
  • 効果的実施のために必要な事項については、評価の充実適正な手続きの確保不正・腐敗の防止援助関係者の安全確保の更なる充実を目指す。


第II, III部 開発問題を巡る国際的な援助潮流、2002年度のODA実績

 最近の開発問題を巡る国際的な援助潮流、日本の対応、2002年度の日本のODA実績を第II部、III部において包括的に報告。


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