2019年版開発協力白書 日本の国際協力

(5)諸外国・国際機関との連携

ア.諸外国との連携

日本は、幅広い開発課題に関して他のドナーとの協調を推進しています。2019年にはイギリス、オーストラリア、米国およびEU等との間で対話や意見交換を実施しました。また、これら主要ドナーとの間では首脳レベルのコミットメントのもと、アフリカを含むインド太平洋等の第三国において、連結性強化のためのインフラ整備、海洋の安全、防災といった、様々な分野において具体的な協力や連携が進められており、ODAもその重要な一翼を担っています。日本のODAを効果的に活用し、幅広い国際社会全体で開発課題に取り組むためにも、他のドナーとの協力や連携は引き続き重要であり、積極的に推進していきます。

開発協力はこれまで、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)のメンバー、いわゆる伝統的なドナーが中心的な提供者となっていましたが、近年、中国、インド、サウジアラビア、ブラジル、トルコなどの新興国も開発途上国に対して支援を行い、開発課題に大きな影響力を持ち始めています。自らが援助を受ける側から提供する側へと主要ドナーへの道を歩んできた経験を持つ日本は、新興国を含む諸国とも連携し、新興ドナーから途上国に対する援助(南南協力)が効果的に促進されるよう、新興国への支援(三角協力)も行っています。特に中国について、日本政府は、2018年10月に対中ODAの新規採択終了とあわせて、日中を対等なパートナーとする新たな次元の協力を進めていくことを発表しました。これを受けて、2019年5月には、中国との間で開発協力政策に関する協議を行い、互いの開発協力政策や体制、監督・評価、他国や国際機関との協力実績等について情報交換を行いました。日本政府としては、中国が援助供与国として存在感を増す中、中国の援助が国際的基準や取組と整合的な形で、透明性を持って行われることが重要であると考えており、こうした対話の機会も活用し、中国政府に働きかけています。

イ.G7・G20開発問題における連携
G7開発大臣会合およびG7教育大臣・開発大臣合同会合での写真撮影に臨む阿部外務副大臣(当時)(前列右から2番目)(2019年7月)

G7開発大臣会合およびG7教育大臣・開発大臣合同会合での写真撮影に臨む阿部外務副大臣(当時)(前列右から2番目)(2019年7月)

2019年7月4日および5日、フランス・パリでG7開発大臣会合およびG7教育大臣・開発大臣合同会合が開催されました。両会合には、G7各国およびEUやアフリカ諸国の閣僚のほか、国際機関の代表なども参加し、開発大臣会合において、持続可能な開発のための資金調達、危機の予防と脆弱(ぜいじゃく)性との闘(たたか)い、サヘル諸国における課題とG7・サヘル諸国との協働などの開発分野の諸課題が議論され、教育大臣・開発大臣合同会合において、職業技術教育訓練(TVET:Technical and Vocational Education and Training)、女子教育、サヘル地域の教育状況が議論されました。日本からは、阿部俊子(あべとしこ)外務副大臣(当時)および柴山昌彦(しばやままさひこ)文部科学大臣(当時)が出席し、2019年6月開催のG20大阪サミットの成果および同8月開催のTICAD7などにおける日本のイニシアティブを紹介しました。

また、2010年のG20トロント・サミット(カナダ)において立ち上げが合意されて以降、毎年開催されているG20開発作業部会では、開発課題に関する議論が行われています。2019年に日本が議長国を務めた開発作業部会では、①持続可能な開発に向けた連結性強化のための質の高いインフラ、②人的資本投資(教育)、③2030アジェンダ(SDGs)、④説明責任の4つが優先議題とされ、各議題について成果文書が策定されました。

ウ.国際機関との連携

近年、貧困、気候変動、防災、保健など、国境を越える地球規模課題に対して、国際社会が一致団結して取り組むことが強く求められている中、日本は国際機関との連携も行っています。

日本は、様々な開発課題に対応するべく、日UNDP協力を進めるため、毎年UNDPと戦略対話を実施しています。2019年は、11月に戦略対話を実施し、地域別の取組やテーマ別取組について意見交換を行いました。

具体的な日UNDP協力の一例としては、防災の面での協力があり、アジア太平洋地域の津波の発生リスクが高い国を対象とした津波避難計画の策定および津波避難訓練事業を実施しています。本事業は、日本が主導して2015年12月の国連総会において制定された「世界津波の日」(11月5日)に基づき、津波防災啓蒙および各国の防災能力強化や体制強化を現場における実践的な観点から支援を行っており、津波に脆弱(ぜいじゃく)な地域の子どもを含むコミュニティの住民が、津波に備え、自然災害が発生した時にどう行動すべきかを学ぶことを目的としたものです。

2019年4月時点で、対象18か国のすべての国で、計115校において避難訓練が実施され、約61,000人が避難訓練に参加しました。なお、参加者は、実際の避難訓練に参加するだけではなく、避難経路の決定、誘導や人数確認といった担当者の指名、けが人が発生した場合を想定した応急措置の準備など、計画段階から参画することで、いずれは支援がなくとも各国が自ら避難訓練を実施できるよう能力強化を行っています。

引き続き、支援対象国が自力で実施できるような避難訓練のスケールアップや制度化を目指すとともに、特に大洋州地域のうち津波のリスクや避難訓練のニーズの高い国を対象とし、2018年12月からはフェーズ2が開始されています。

DACでは、2030アジェンダを含む今の時代に即した開発協力のため、新興国や民間部門などの多様な主体との連携強化も含めた様々な取組が実施されています。具体的には、各国のODA実績が正当に評価されるための測定方法の改定や、ODAを活用した民間の開発資金の動員の方策、民間や新興ドナー国などのODA以外の開発資金を幅広く統計として捕捉(ほそく)する方策などについて議論が行われています(ODA計上方式の変更について、「開発協力トピックス」も参照)。さらには、人道と開発と平和の連携や、開発および人道支援における性的搾取、虐待、ハラスメントの撲滅に関する議論も行われ、2019年にこれらに関するDAC勧告が採択されました。

2019~2020年にはDACメンバーが互いの開発協力政策、体制、予算等をレビューし合う開発協力相互レビューの対日レビューが6年ぶりに実施されており、日本の開発協力の長所を共有し、またより良い開発協力のあり方を学ぶべく、対応を行っています。

2016年、日本は、開発途上国の開発問題に関する調査・研究を行うOECD内の独立機関であるOECD開発センターに復帰しました。同センターは、OECD加盟国のみならず、OECDに非加盟の新興国・途上国も参加し、様々な地域における開発について政策対話を行う場として、重要な役割を持っています。2019年、日本は同センターとの共催により、三角協力に関するセミナーやTICAD7の事前広報を兼ねたアフリカとのハイレベル政策対話等を開催しました。また、TICAD7の機会には開発センターとAU委員会との共催により、「ハイレベル政策対話:アフリカ開発ダイナミクス2019に向けて:生産構造転換に向けた政策」を開催しました。このように、日本と同センターは緊密に協力しており、引き続き同センターとの関係を強化していく考えです。

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