2018年版開発協力白書 日本の国際協力

巻頭言

グローバル化の進展に伴い、格差・貧困、テロ、難民・避難民、気候変動、プラスチックごみを始めとする海洋の問題、感染症など、地球規模課題への対応が急務となっています。こうした国境を越えた課題は、一国のみでは解決することが困難であり、日本を含む国際社会全体が取り組んでいく必要があります。

日本は長年にわたって、人間一人ひとりに着目し、人々が恐怖や欠乏から免れ、尊厳を持って生きることができるよう、個人の保護と能力強化を通じて、国・社会づくりを進めるという「人間の安全保障」の理念を掲げ、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、日本の近代化の経験を踏まえつつ、その国に寄り添った支援を実践してきました。

2015年の国連サミットにて全会一致で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、開発途上国のみならず先進国を含めた全ての国において、「誰一人取り残さない」社会を実現することを目標としています。「誰一人取り残さない」という考え方は、「人間の安全保障」の理念を反映したものであり、この理念を長年提唱してきた日本だからこそ、国際社会におけるSDGs推進のリーダーシップを発揮できると確信しております。

また、インド太平洋地域で法の支配に基づく自由で開かれた秩序を維持・強化し、質の高いインフラ整備により連結性を向上するため、米国、豪州、インド、ASEAN諸国、英仏、EUなどの関係国と緊密に連携しながら重層的な協力関係を築き、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた取組を加速させてまいります。

一方で、2018年は、日本国内でも豪雨や地震などの多くの自然災害に見舞われた年であり、国内の被災地への支援が求められました。厳しい財政状況の下でも、日本は国際社会の一員として、引き続き日本にも影響を及ぼし得る地球規模の課題に取り組み、開発途上国を含む国際社会に平和、安定及び繁栄のために積極的に貢献してまいります。政府としては、限られたODA予算を戦略的かつ効果的に活用し、そしてきちんと結果を出すよう一層努めつつ、開発途上国へのODA実施がひいては日本の国益に資するものであることにつき、国民の皆様の御理解を得ていきたいと思います。

そのためにも、ODAに関する有識者懇談会の提言も踏まえて、政府や国際協力機構(JICA)が中心を担ってきたODA実施体制からさらに前進し、民間企業、NGO、地方自治体、大学など多様な実施主体とそれぞれの長所を活かしながら緊密に連携し、様々な開発課題に取り組んでまいります。また、JICAボランティアの制度見直しも行いました。

今回の白書では、2018年の開発協力をめぐる取組を紹介するとともに、地方の産官学が連携して開発途上国に支援を行った結果、これらの地域の活性化にも繋がった例などを紹介しています。また、「日本の顔の見える支援」を体現している国際機関で働く日本人職員やJICA海外協力隊の方々の活躍ぶりも掲載しています。こうしたコラムにより、開発協力の第一線で活躍されている方々への理解をより一層深めていただくきっかけとなり、将来、国際舞台で活躍することを目指す方々へのエールとなれば、これ以上の喜びはありません。

2019年は、日本においてG20大阪サミット及び第7回アフリカ開発会議が開催され、また9月には国連で初のSDGs首脳級会合が予定されています。国民の皆様の御理解、御支援を頂きながら、こうした国際的な場を通じ、地球規模課題の解決に向けて、日本としてさらなるリーダーシップを発揮してまいります。

2019年3月

外務大臣 河野太郎

このページのトップへ戻る
開発協力白書・ODA白書等報告書へ戻る