広報・資料 ODA関連報道

ラオス地下水開発案件における井戸建設コスト等について(一部報道における指摘事項について)

平成18年11月14日

問1.11月9日付読売新聞(38面)によれば、我が国の無償資金協力により建設された井戸の建設単価が、日本企業が現地業者を活用して建設した井戸に比べ、10倍以上割高だったことがわかったとのことですが、事実関係はどうなっているのですか。

(答)

  1. 記事において、質が異なっている井戸をコストのみで単純に比較し、我が国により建設された井戸を「問題の井戸」とする報道は、正確さを欠いており不適切だと考えます。
  2. 同記事で指摘されている案件は、1998年から2000年にかけて、ラオスチャンパサック、サラワン両県の189村に対し、村落給水整備を目的として、我が国無償資金協力により305本の深井戸建設を行った事業です。本案件においては、井戸建設に加え、給水施設の運営・維持管理体制強化を図るため、各県に維持管理センターの建設及び井戸の建設・修理・維持管理・啓蒙活動等に必要な資機材の調達を行っており、我が国ODAで建設された井戸が事業実施後も持続的に活用されています。
  3. 同記事において、コストの比較対象としている日本企業が現地業者を活用して建設した井戸についてその詳細はわかりませんが、一般に我が国が一般プロジェクト無償により建設している井戸と、現地業者により建設された井戸とを比較すると、(1)井戸自体が長期間使用できる、(2)付帯施設が丈夫で長持ちする、(3)小さな労力で安定的に揚水できる、(4)乾季でも水位が低下せず年間を通じて安定的に揚水できる、という点で質が大きく異なっているため、それらをコスト面のみで比較することは不適切だと考えます。

問2 財務省が今春調査したJICAの技術協力事業において、各年度の見積書や概算内訳書が適正に作成されていたのは調査対象46件中7件のみであったとのことでありますが、外務省としてはどのように考えているのですか。

(答)

  1. 技術協力は、途上国において人材育成や制度構築のための支援を行う事業であり、実施中の様々な要因により投入量が変更される場合が少なくないため、事前に正確な見積を算出することは困難という事情があります。
  2. しかしながら、近年JICAは事業費概算を含む事業事前評価表や投入積算を盛り込んだ実施計画書の作成等を制度化し、事業費積算の精度向上に努めています。さらに、本年度からは事業管理支援システム等を立ち上げ、個別事業に係る予算の執行状況をリアルタイムに把握・管理することが可能となり、改革努力を行っています。
  3. また、今年度の財務省予算執行調査の対象となった46件中、39件はこれらの措置を講ずる前に開始されたプロジェクトであるという事情も考慮する必要があると考えています。
  4. いずれにせよ外務省としては、上記執行調査の結果も踏まえ、JICAによる適正な予算管理が一層確保されるよう、JICAに対する指導を行っていきたいと考えています。
(参考)事業予算管理に係る近年のJICAの改革努力の例
取組 概要
事業事前評価表の作成 事業の有効性、効率性などを評価、投入の概略や必要な金額の概算
事業計画書の作成 達成目標、活動内容、計画、協力先の関係機関と役割分担などを明確化
実施計画書の作成 事業計画書に基づき投入の積算を盛り込むもの
事業管理支援システム、経理業務統合システムの導入 標準単価を利用して事業積算を行うとともに、実施計画書における各投入要素の調達状況をリアルタイムで管理

問3.コスト削減目標を定めているのは「アフリカの学校建設案件」だけにとどまっているとの報道がありますが、事実関係はどうなっているのですか。

(答)

  1. 外務省では、平成17年12月、無償資金協力のより効果的・効率的な実施に向け、コミュニティ開発支援無償を通じて、平成18年度から平成22年度までの5年間で、アフリカにおける学校建設案件において、30%以上のコスト縮減を目指すというコスト削減目標を設定しています(詳細は外務省HP参照
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index/kaikaku/ugoki.html))。
  2. また、その他類型(分野・地域)についても、コスト縮減の数値目標を順次検討・拡大していくことを通じて、無償資金協力全般のコスト削減に取り組んでいくこととしています。
  3. なお、コミュニティ開発支援無償は、現地仕様による設計及び現地業者の積極的な活用を可能とするスキームとして、平成18年度より導入しているものです。同スキームでは、アフリカにおける学校建設案件のみを対象としているのではなく、個別の案件毎に精査し、他の地域における学校建設、地下水開発、道路建設案件等、現地業者の活用が可能なものについては、積極的に対象として実施していく方針です。
このページのトップへ戻る
目次へ戻る