ODA評価年次報告書2025 | 外務省

ODA評価年次報告書2025

2024年度外務省ODA評価結果

「日ASEAN連結性イニシアティブ」を中心としたASEAN連結性支援の地域別評価

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評価者
(評価チーム)
評価主任:藤村 学 青山学院大学経済学部教授 
アドバイザー:木村 福成 慶應義塾大学名誉教授・シニア教授 
コンサルタント:株式会社国際開発センター
評価対象期間 2020年度~2023年度
評価実施期間 2024年6月~2025年2月
現地調査国 カンボジア、インドネシア

評価の背景・対象・目的

日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)は、アジア太平洋地域の平和と安定、発展と繁栄のために緊密な協力関係を築いており、2023年には友好協力50周年を迎えた。本評価は、日本がASEANに対して実施している協力の中で、「日ASEAN連結性イニシアティブ」(2020年11月発表)に基づき実施したASEANによる連結性強化の取組の支援に係る援助政策及びそれに基づく協力を対象として実施したものである。評価対象は、「日ASEAN連結性イニシアティブ」に掲載された「陸の回廊」22件、「海と空の回廊」9件、連結性強化に資するソフト面での協力34件の合計65件で、ケーススタディとしてカンボジアおよびインドネシアにおいて、関連する事業の視察やインタビューを実施した。

評価結果のまとめ

● 開発の視点からの評価

(1) 政策の妥当性

日ASEAN連結性イニシアティブは、ASEANの政策の中でも特に物理的連結性に寄与する形でインフラ整備案件が形成、実施されるとともに、制度的連結性や人と人との連結性に寄与する形で技術協力等のソフト面での協力が行われている。同イニシアティブは、日本の外交政策である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」および、ODAの上位政策である開発協力大綱に記載された重点政策とも整合的である。

日ASEAN連結性イニシアティブそのものは、他ドナーとの協調が意図されたものではないが、同イニシアティブの下で実施された各案件の中には、日本の持つ比較優位性を意識しながら他ドナーとの協調や差別化が行われた案件が含まれていることが確認された。同イニシアティブに基づいて実施された日本のODA事業の比較優位性としては、ハード(インフラ建設)とソフト(維持管理や技術協力による人材育成等)を効果的に組み合わせた包括的な支援、透明性が高く持続可能なインフラ整備、上流のマスタープラン調査に基づいた案件実施、多層なレベルにおける人材育成への支援などが挙げられる。
(評価結果:極めて高い)

(2) 結果の有効性

日ASEAN連結性イニシアティブは、ASEAN加盟国10か国における、「陸の回廊」22件、「海・空の回廊」9件、「連結性強化に資するソフト面での協力」34件の合計65件の事業から構成されている。今回ケーススタディ国としたカンボジア・インドネシアでは計画された事業が着実に実施中あるいは実施済であることが確認できたほか、他のASEAN加盟国でも着実に実施中あるいは実施済であると理解される。その成果としての域内GDPの増加や国際的生産ネットワークの深化も確認できた。また、長期的な人材育成への貢献、日本の民間企業への裨益、他援助機関の政策立案への影響も確認できたことと併せて、当該イニシアティブが目指した目標の達成に着実な進展が見られる。
(評価結果:極めて高い)

(3) プロセスの適切性

日ASEAN連結性イニシアティブの政策策定・実施・モニタリングを始めとしたプロセスは、ASEAN連結性を重視するASEAN加盟国に寄り添いながら、より付加価値の高い支援をハード・ソフトの両面から「質の高いインフラ投資」に継続して貢献してきている。そのため、各国レベルでは、本イニシアティブの対象事業についての評価は高い。ただ、二国間の案件がASEAN連結性を支援する案件として十分に認識されてはおらず、MPAC2025において本イニシアティブの貢献を整理することが今後の課題として考えられる。
(評価結果:高い)

(注)レーティング: 極めて高い/高い/一部課題がある/低い

● 外交の視点からの評価

(1) 外交的な重要性:日本の国益に関する重要性と「政策連携の呼び水」効果

2019年にASEANはASEANの一体性・中心性を掲げた「インド太平洋に関するASEANアウトルック」(AOIP)を発表したが、AOIPはFOIPと本質的な原則を共有するものであることから、日本はいち早くAOIPへの支持を表明した。その後、2023年までに米国、オーストラリア、EU、インド、韓国が続き、中国までがAOIPへの支持を表明したが、日本のいち早い支持の表明は他国のAOIP支持への呼び水(いわば「政策連携の呼び水」)になったと言える。さらに、日本の国益3項目である①「日本の存立」(中東や欧州などインド以西との輸出入の中継点・通過点)、②「日本の繁栄を実現」(日本にとって市場と生産拠点の両面から直接貢献)、③「国際秩序の維持」(法の支配、航行の自由、自由貿易といった価値観を共有)にとってASEAN連結性イニシアティブに基づく支援は重要であった。

(2) 外交的な波及効果:最も信頼できるパートナーおよび「経済的な呼び水」効果

日本ASEAN友好協力50周年の共同ビジョン・ステートメントにおいて「信頼のパートナー」(Trusted Partners)という表現が見られるほか、ASEANの有識者アンケートの報告書(シンガポールの独立研究機関のISEAS(Yusof Ishak Institute)発行)では「日本が最も信頼できるパートナー」であると6年連続で報告されている。今回の現地調査を含めて、産業の裾野産業が広がっている様子が共有されたが、これは日本による援助の波及効果であり、「経済的な呼び水」効果が実現していると言える。さらに、政府レベルや民間・市民レベルの交流の拡大も確認された。

評価結果に基づく提言

<開発の視点>

(1) 複数国にまたがるインフラ整備の支援の計画および知的支援
(象徴的交通インフラ、電力グリッドの支援の計画、研修などの知的支援)

(2) 国際輸送ネットワークの制度面の改善支援
(通関のデジタル化、複数国の制度共通化)

(3) ハードとソフト(人材育成)の組み合わせ支援
(現場・高度人材の育成、政策研究の支援)

(4) 協働パートナーとして共通の課題への取組
(気候変動、自然災害、公衆衛生、高齢化社会、第三国研修活用)

(5) ASEANにとってわかりやすい日本の支援の整理・説明・広報

<外交の視点>

(6) ASEANの一体性・中心性の支持・尊重
(日本に対する信頼の維持・増進につなげる)

(7) 「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)で普遍的価値を示して国際社会をリード
(法の支配や自由貿易)

パティンバン港開発計画(評価チーム撮影)の写真。

パティンバン港開発計画(評価チーム撮影)

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