ODA評価とは?
ODA評価は、日本政府が国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に貢献することを目的として行う「政府開発援助 (ODA:Official Development Assistance)」の実施状況とその効果を確認・分析する作業です。
ODA評価の目的は2つあります。1つは、ODAの実施状況や効果の検証から得られた提言や教訓を ODA 政策策定や案件形成・実施監理にフィードバックすることで、ODAをより効果的かつ効率的なものとして管理・改善することです。もう1つは、評価結果を公表することで、国民への説明責任を果たすとともに、 ODAに対する国民の理解を促進し、その支持を高めることです。2023年6月に改定された開発協力大綱でも、ODA評価について、「協力の効果・効率性の最大限の向上に加え、国民への説明責任を果たす観点からも重要であることを踏まえ、(中略)適切に評価を行う」と謳われています。
日本のODA評価は、2002年に施行された「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(政策評価法)に先立つ1975年から着実に実施されており、経済協力開発機構開発援助委員会(OECD/DAC)をはじめとする国際的なODA関連機関による評価基準や実践を踏まえ、その方法を発展させてきました。
この年次報告書は、政策評価法に基づく評価とは別に、外務省大臣官房ODA評価室が独自に実施するODA評価(第三者評価)を扱っています。
実施体制
日本のODAは、外務省が政策を企画・立案し、主に独立行政法人国際協力機構(JICA)が個別案件の事業実施を担っています。ODAの評価についても、外務省とJICAが相互に連携しながら役割を分担して実施しています。
現在、外務省は、主にODA政策面を対象とした評価を外部の有識者などに委託する第三者評価の形で実施しています。一方、JICAは、実施監理を担う個別案件の事業を対象とした評価を中心に実施しています。
また、外務省は、開発途上国の評価能力向上を目的とした支援も実施しています。
ODA 評価結果の活用

ODA評価により得られた結果及び提言は、ODA政策の企画・立案を担当する外務省や、個別案件の事業実施を担当するJICAなどの関係者に真摯に受け止められ、将来のODA政策の企画・立案及び事業の実施監理に活用されることが重要です。
このため、評価終了時には、評価者が直接外務省関係者に対して、評価結果と提言を報告します。評価実施の翌年度には、外務省とJICAが連携し、提言を受けて具体的にどのように対応していくかという「対応策」を策定しています。また、評価実施から2年後には、対応策がどのように実現されたかを確認し、いずれの内容もこの年次報告書の中で公表しています。
これらを通じ、外務省は、ODA評価の目的である「ODAの管理・改善」と「国民への説明責任」を果たしています。
評価対象
外務省が実施するODA評価(第三者評価)は、個別の国・地域に対するODA政策を評価する「国別・地域別評価」と、教育、保健、環境等の開発課題に対するODA事業や、技術協力、無償資金協力等の協力形態(スキーム)による ODA事業を評価する「課題・スキーム別評価」に分類されます。
また、2017年度からは、外務省が実施する無償資金協力のうち供与限度額が10億円以上の個別案件を対象とした評価も、第三者評価の形で実施しています。なお、供与限度額2億円以上10億円未満の個別事業については内部評価を実施しています。
<ODA 個別評価報告(内部評価)>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/oda/page24_000056.html
さらに、2021年度からは、日本NGO連携無償資金協力によって実施された個別案件も対象に、外務省が第三者評価を実施しています。
<日本NGO連携無償資金協力第三者評価>
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/shien/j_ngo_musho.html
評価の視点/評価基準
外務省によるODA評価(第三者評価)は、被援助国の経済社会開発にどの程度役立っているか(開発の視点)に加え、評価対象であるODA政策が日本の国益にとってどのような利益をもたらしているか(外交の視点)という視点から評価を行っています。評価基準は以下のとおりです。
1 開発の視点からの評価
国際的に認知されている経済協力開発機構開発援助委員会(OECD/DAC)の設ける6つの評価基準(妥当性、整合性、有効性、効率性、インパクト、持続性)を踏まえ、日本のODA政策を評価するのにふさわしい以下の評価基準を設けています。また、それぞれの評価基準ごとに具体的な検証項目を設定しています。
政策の妥当性
日本の上位政策や、被援助国のニーズ、国際的な優先課題と合致していたか、また、他国と比較して日本が優位性を持つ内容であったか、など。
結果の有効性
当初の目標・目的がどの程度計画どおりに達成され、具体的にどのような効果があったか、など。
プロセスの適切性
ODA政策を企画・立案・実施するプロセスや実施体制は適切であったか、他ドナー国・機関、NGO等との効果的な連携は行われていたか、など。
2 外交の視点からの評価
外交的な重要性
国際的な優先課題の解決、二国間関係の強化、日本の安全・繁栄などにとってどのような点で重要であったか。
外交的な波及効果
国際社会における日本のプレゼンス向上、二国間関係の強化、日本の安全・繁栄などにどのように貢献したか。
ODA 評価ガイドラインとハンドブック
外務省は、外務省が実施するODA評価の指針として「ODA評価ガイドライン」と具体的な評価実施の流れや手法について記載した「ODA評価ハンドブック」を作成しています。これらは、主にODA評価の実務に役立てることを目的に作成していますが、ODAやその評価に関心のある方々にとっても有益な情報を掲載しています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/hyoka/siryo_3_a.html