外務省ODA評価結果フォローアップ
2021年度提言への対応策
2021年度に実施した5件のODA評価における提言への対応策は以下のとおりです。
東ティモール国別評価
提言1:「質の高い」ODA供与による、東ティモール経済の離陸支援
質の高いインフラ・防災を始めとする日本の強みを活かした分野における支援を引き続き実施し、また、無償資金協力と技術協力の連携を図ることにより開発効果を高め、東ティモールの更なる経済発展に寄与していく。案件形成においては、案件選定のプロセスから、日本の技術と強みが活かせるよう留意する。
提言2:LDC卒業を見据えた環境インフラへの支援拡充
引き続き、本邦技術活用条件(STEP)(注)を含む円借款による環境インフラへの支援を検討する。その際には、先方政府と協議を重ね、先方のニーズに合い、また、日本の強みを活かせる分野での支援を検討する。
(注)本邦技術活用条件(STEP)は、我が国の優れた技術やノウハウを活用し、開発途上国への技術移転を通じて我が国の「顔が見える援助」を促進するため、平成14年(2002年)7月に導入されたもの
提言3:外国人技能実習制度と連携した、職業人・産業人の育成
JICAでは2021年4月に設置された外国人材受入支援室を中心に、在外拠点、国内拠点等を通して、開発途上国の経済発展と日本国内の地域活性化に貢献すべく取り組んでおり、東ティモールとの技能実習の受入れ協定の締結状況も確認しながら、今後の取組を検討していきたい。
提言4:「投資先として選ばれる国」づくりのための環境整備と観光資源の開発推進
東ティモールの国づくりに寄与すべく、ガバナンスの分野において毎回の国政選挙の際に支援を実施しているが、法整備についてもニーズを踏まえた支援を継続する。また、産業多様化に資する支援を検討する。
提言5:「強靭なインフラ」づくりのためのインフラセクター全体を俯瞰した政策的貢献
独立回復以降、継続的に支援している道路維持管理分野の一層の能力向上を図るべく、実施中の道路インフラ品質管理に関する専門家派遣を含め、本分野における協力を継続する。他ドナー国や世界銀行、アジア開発銀行のエコノミストとの協議に積極的に参加し、インフラ分野における日本の経験や教訓の共有を行い、政策レベルでの対話に今後一層貢献できるよう努める。
提言6:東ティモールの統治能力を強化するための日本のODAの戦略的拡大
次回の国別開発協力方針の改定の際には、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を始めとする上位外交政策で定めている重点分野について明確化することを検討する。また、引き続き、それらを意識して案件形成する。
ペルー国別評価
提言1:基本方針「持続的経済発展への貢献」の維持
現在の2017年9月付け国別開発協力方針を改定する際に、基本方針「持続的経済発展への貢献」の維持の適切性につき、提言を踏まえ検討する。
提言2:「選択と集中」:3つの重点分野への各種ODAスキームによる支援の継続
現在の2017年9月付け国別開発協力方針を改定する際に、3つの重点分野「経済社会インフラの整備と格差是正」、「環境対策」、「防災対策」に対する支援を継続する必要性につき、提言を踏まえて検討する。
提言3:多様な主体の資金・活動との連携強化
今後の支援においては、民間セクターや国際機関との連携並びに効果的なODAスキーム間(有償、無償、技術協力)の連携について、引き続き積極的に可能性を追求する。
提言4:長期的な人材育成につながる技術協力の継続の必要性
ペルーでは、これまでもSATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)のスキーム等を通じ大学・研究機関との連携案件を積極的に採択しているが、今後の支援においても、引き続き官学連携をより進化させることに資する案件の実施の可能性を追求する。
提言5:日系人社会との連携の維持
各種ODAスキームでの案件形成において、日系人社会との連携が可能な要素の有無に着目し、右要素のあるものについては、連携の可能性を追求していく。
提言6:ペルーの自然環境及び気候変動の影響を踏まえたインフラニーズへの対応
今後、インフラニーズに対する支援を検討する際には、対象地域の自然環境や気候変動の影響、地方分権化の状況、環境社会配慮の適切な実施に十分配慮する。
マラウイ国別評価
提言1:日本の中小企業やNGOの進出、投資環境の整備に資する措置を強化
マラウイへの海外からの企業・NGOの進出や投資の参入障壁につき検証した上で、対応の必要性・妥当性が認められる場合、対応可能な専門家の数の制約やアフリカ内の優先順位を考慮した上で、技術協力案件による法律専門家の派遣や課題別研修の実施を検討する。「ABEイニシアティブ」の選考基準の修正提案については、既に民間企業関係者や起業家は含まれるため、選考基準の見直しではなく、提言に留意しつつ、適切な選考を行っていく。
提言2:留学生・研修員の人材バンクを設置し、ネットワーク構築と活用を強化
過去の留学生・研修員の情報をオープンソースとして提供・活用することは個人情報保護の観点から適当ではないが、引き続き元留学生・研修員の同窓会の活動促進を通して効果的なネットワーク構築を促進していく。(ABEイニシアティブでは帰国研修員と日本企業の交流を目的とした「ネットワーキングイベント」や帰国研修員の活動報告及び日本企業との交流を目的とした帰国報告会・ネットワーキングイベント等のプログラムを実施している。)
提言3:JICA海外協力隊とマラウイ側中核人材の戦略的・継続的活用を図る
マラウイのシニア海外協力隊員や専門家選考では、ポストに求められる能力本位で選考していくが、同国での協力隊経験が有用と判断されるポストについては、協力隊経験を考慮する。
既に、マラウイの元日本支援事業担当者や元研修員が日本の支援案件に関与しているケースは多々あり、今後の両国関係のキーパーソンとなる可能性があると認識。提言に留意し、予算の制約も踏まえつつ、ケースバイケースで高い効果が見込まれる場合は、更なる関係強化を検討する。
提言4:マラウイの一般市民に向けた外交広報戦略の強化を図る
マラウイにおいては、依然として新聞やラジオ等の既存の広報媒体の影響力が強いと認識。そうした事情を踏まえつつ、提言を踏まえた対外発信強化のため、JICA現地事務所による、発信力のある元マラウイ研修員・留学生の特定、彼らに対するSNSなどでの情報発信依頼の可能性を検討していく。
インフルエンサーやアーティストの活用を含め、ケースバイケースで効果的な情報発信のあり方を検討していく。
教育協力政策の評価
● 日本の協力教育政策内容への提言
提言1:重要分野の優先順位付け
次期政策策定時に、重要分野に掲げている支援の優先順位付けが可能かどうか、検討する。
提言2:期間・目標の設定
次期政策策定時に、政策の実施期間、達成すべき目安や目標の設定をどのように盛り込めるか検討する。
提言3:政策内容(目的・対象分野の表記、他アクター・事業との連携推進、他)
次期政策策定時に、協力の目的、対象分野などを分けて記載できるか検討する。本政策では、地域内の情報交換や相互協力、多様なアクターとの効果的な連携・協力、効果促進のための各種援助スキームの活用、他開発セクターの活動の取り込みにおいて数多くのグッドプラクティスが出てきており、「みんなで支えるみんなの学び」に貢献しているとの評価を得たところ、そのような取り組みを継続し、引き続き、教育協力効果を拡大し、持続性を高めるとともに、日本の支援の効果を確かなものとすべく、被援助国との長期的な信頼関係の構築・維持に努力する。また、引き続き多様な援助モダリティを維持できるよう努力する。
● 日本の教育協力政策の策定・実施過程への提言
提言4:政策策定時の既存のプラットフォームの有効活用
教育協力政策の策定においては、関連省庁、JICA、有識者等の意見を聴取しながら策定されてきてはいるものの、より開かれた透明なプロセスで議論できるよう、既存のプラットフォームを有効活用することを検討する。
提言5:政策実施の点検における既存のプラットフォームの有効活用
これまで国際教育協力連絡協議会において政策の実施状況は確認されてきているが、開催頻度が限定的であったため、今後は年に複数回開催することで、政策の実施状況を確認する機会を増やせるよう努力する。また、適切なタイミングで第三者評価を実施できるよう、政策の実施期間等の設定につき検討する。
提言6:文科省の知見・協力の取り込み
国際教育協力連絡協議会に外務省、文部科学省、JICAの三者が出席し、情報共有を行っているところであるため、別途三者のみの定期会合の開催が必要かどうかについては、文部科学省及びJICAに相談し、検討する。
提言7:リーダーからの発信とODA実施機関への継続的周知
これまで、日本のリーダーから国際社会に対し、適切なタイミングを捉え、同政策の発信を行ってきている。また、同政策の周知に関し、省内、在外公館、JICAへの継続的な周知について検討する。
提言8:個別案件のモニタリングにおける外交の視点
案件の採択段階において外交的重要性について確認し、案件の実施段階から、現地在外公館やJICA在外事務所と情報交換をしながら、協力の波及効果について外交の視点を持ってモニタリングや各種調査を行うことを検討する。案件の評価においては、相手国政府、大使館・総領事館、JICA在外事務所への聞き取りなどを通して、外交的重要性や波及効果に関する情報収集と確認を行い、関連する情報があれば報告書に記載することを検討する。
平成29年度スリランカに対する経済社会開発計画の評価
● プロジェクトへの提言
提言1:大使館員による現地モニタリングの早期実施
新型コロナウイルスの感染状況及び経済危機により不安定化する社会経済情勢・治安を十分に考慮し、早期に行うべく調整中。
提言2:トリンコマリー港周辺の開発支援に向けた戦略の検討
トリンコマリー港周辺地域の経済開発支援として、例えば円借款「復興地域における地方インフラ開発計画」(2017年4月E/N署名、129億5,700万円)を実施しているが、引き続き同港周辺地域の経済開発支援について検討していく。
● 外務省が実施する無償資金協力(経済社会開発計画)への提言
提言3:プロジェクトに関するより積極的な情報発信
今後、現地モニタリングや完工式のタイミングも踏まえ、本案件の広報を積極的に行っていく。他の無償資金協力(経済社会開発計画)案件に関しても、時宜を得た情報発信の更なる強化に努める。
提言4:プロジェクトの目的や効果発現に向けたロジックの明確化
「経済社会開発計画」の案件形成に際し、目的や効果発現に向けたロジックを明確化するための具体策につき、検討している。