ODA評価年次報告書2022 | 外務省

ODA評価年次報告書2022

2021年度外務省ODA評価結果

東ティモール国別評価

評価主任 長谷川 祐弘
日本国際平和構築協会理事長
アドバイザー 山田 満
早稲田大学社会科学総合学術院教授
コンサルタント 学校法人早稲田大学
評価対象期間 2016年度~2020年度
評価実施期間 2021年8月~2022年2月
現地調査国 東ティモール(オンライン調査実施)

評価の背景・対象・目的

東ティモールは、2002 年5 月の独立を機に外交関係を開設し、2022 年5 月をもって約20年が経過する。同国はASEAN加盟を目指しており、日本が推進する自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の観点からも外交的な重要性を増している。

本評価は、過去5年間(2016~2020年度)の日本の対東ティモール政府開発援助(ODA)政策及びそれに基づく支援を評価し、今後の日本の対東ティモールODA政策の立案や実施のための提言や教訓を得るとともに、評価結果の公表を通じて、国民への説明責任を果たすことを主な目的とする。

評価結果のまとめ

● 開発の視点からの評価

(1) 政策の妥当性

> 検証項目1:日本の上位政策との整合性

日本の東ティモール支援政策は、国別援助方針(2012)で掲げた重点支援分野(経済活動活性化のための基盤づくり、農業・農村開発、政府・公共セクターの能力向上)、国別開発協力方針(2017)で掲げた重点支援分野(経済社会インフラの整備・改善、産業の多様化の促進、社会サービスの普及・拡充)のいずれも基本方針である持続的な国家開発の基盤づくりを支援してきたという点で整合している。

> 検証項目2:東ティモールの開発政策・ニーズとの整合性

日本の対東ティモール支援政策は、「戦略開発計画SDP」(2011~2030)と概ね整合しており、とりわけインフラ開発、農業の産業化・市場化、日本での研修・留学など人材育成と整合性が高い。

日本の東ティモールに対する復興・支援政策の重点分野は一貫して、インフラ整備、農業、人材育成であり、社会の安定化と石油収入による経済水準の向上にともない、開発ニーズもより高度化した。

> 検証項目3:国際的な優先課題との整合性・他ドナー支援との関連性

日本の支援の重点分野はSDGsに一致している。インフラ整備分野においては世銀、ADBとの協力が特に整合的であり、インフラ整備を重視するADB案件(国道1号線)の協調融資においての協力関係が特に顕著であった。

> 検証項目4:日本の比較優位性

東ティモールにおける日本の比較優位性が発揮された分野(高等教育支援など)とそうでない分野(道路建設など)で差異がみられた。
(評価結果:高い)

(2) 結果の有効性

> 検証項目1:重点分野における日本の支援実績(インプット)

日本の対東ティモール支援は、支援金額の観点から大きな貢献をしている。

> 検証項目2:開発課題ごとの日本のODA実績と貢献(アウトプット)

各開発課題は実現途上にありアウトプットが一部目に見える形で実現しつつある一方で、事業レベルでは費用超過や期限延長を行っており、効率性・持続性に一部課題が残る。

> 検証項目3:重点分野に対する効果(アウトカム、インパクト)

各開発課題に対する取り組みを通じ、経済社会基盤(インフラ)の整備・改善、産業の多様化の促進、社会サービスの普及・拡充について一部効果が発現している。
(評価結果:高い)

(3) プロセスの適切性

> 検証項目1:日本の対東ティモール国別開発協力方針策定プロセスの適切性

日本の対東ティモールODA政策は、おおむね適切なプロセスを経て策定された。

> 検証項目2:日本の対東ティモールODA実施プロセスの適切性

日本の対東ティモールODAの実施プロセスは、基本的な実施体制の整備・運営と、ニーズ把握、日本の対東ティモール支援重点分野にもとづく個別案件の実施、モニタリング・評価、広報が適切に行われていた。

> 検証項目3:日本の対東ティモールODAの実施における協調・連携

開発他アクターとの協調・連携が適切に行われていた。
(評価結果:高い)

(注)レーティング: 極めて高い/高い/一部課題がある/低い

● 外交の視点からの評価

(1)外交的な重要性

日本の対東ティモールODAは、自由で開かれたインド太平洋 (FOIP)、質の高いインフラ、人間の安全保障に貢献しうる。さらに、日本の資源安全保障外交のツールとしてODAは引き続き実施する意義がある。

過去の二国間の首脳会議・閣僚会議において、日本のODAに対する感謝の意が東ティモール側から示されており、両国の友好関係促進にとって重要な役割を果たしうる。

(2)外交的な波及効果

東ティモール政府の国際社会における日本の立場の支持、日本の東ティモールにおける可視化、友好関係の促進には一定程度の効果をもたらした一方、両国の経済関係強化や民間企業の進出については一部課題が残る。

評価結果に基づく提言

(1)「質の高い」ODA供与による、東ティモール経済の離陸支援
(2)LDC卒業を見据えた環境インフラへの支援拡充
(3)外国人技能実習制度と連携した、職業人・産業人の育成
(4)「投資先として選ばれる国」づくりのための環境整備と観光資源の推進
(5)「強靭なインフラ」づくりのため、インフラセクター全体を俯瞰した政策的貢献
(6)東ティモールの統治能力を強化するために日本のODAの戦略的拡大

東ティモール国立大学工学部での授業風景の写真。

東ティモール国立大学工学部での授業風景

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