ODA評価年次報告書2022 | 外務省

ODA評価年次報告書2022

2021年度外務省ODA評価のまとめ

2021年度は、国別評価3件(東ティモール、ペルー、マラウイ)、課題別評価1件(教育協力政策)、外務省が実施する無償資金協力個別案件の評価1件(平成29年度対スリランカ無償資金協力「経済社会開発計画」)、計5件の第三者評価を実施しました。

開発の視点からの評価

国別評価3件及び課題別評価では、「政策の妥当性」、「結果の有効性」、「プロセスの適切性」のすべてについて、「極めて高い」または「高い」と評価されました。日本の上位政策や相手国のニーズと整合性があり、相手国の抱える開発課題解決に日本の協力が貢献していること、適切なプロセスで政策策定や実施が行われていることが確認されました。
無償資金協力個別案件の評価では、「計画の妥当性」は「極めて高い」と評価されましたが、「結果の有効性」は、地域の経済社会開発や日系企業支援の達成が短期的には確認できないこと、一部の機材が、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、修理や必要な工事が未了であることから、「一部課題がある」と評価されました。

開発の視点からの評価レーティングの表

レーティング基準
極めて高い: 全ての検証項目で極めて高い評価結果であった。
高い: ほぼ全ての検証項目で高い評価結果であった。
一部課題がある: 複数の検証項目で高い評価結果であった一方、一部改善すべき課題が確認された。
低い: 複数の検証項目で低い評価結果であった。

(注1)国別評価、課題別評価の場合

(注2)無償資金協力案件の評価の場合。2020年度に実施した「外務省が実施する二国間無償資金協力個別案件の評価についての分析・評価手法の分析」の結果を踏まえ、2021年度から、開発の視点と外交の視点とを統合し、「計画の妥当性」及び「結果の有効性」の2つの基準を用いて評価を実施。また、「計画の妥当性や結果の有効性が確保されるようなプロセスが取られていたか」を検証する「プロセスの適切性」は、「計画の妥当性」と「結果の有効性」の評価設問の一部とし、独立した評価基準とはしない。

外交の視点からの評価

2015年以降、すべての外務省ODA評価案件において、日本の国益への影響を確認する外交の視点からの評価を実施しており、評価基準として「外交的な重要性」(日本の国益にとってなぜ重要か)と「外交的な波及効果」(日本の国益にどう貢献したか)を設けています。なお、外務省が実施する無償資金協力の個別案件の評価においては、2020年度に見直しを行った結果、2021年度より「外交の視点」を「開発の視点」と統合し、「外交的な重要性」にかかる検証項目は「計画の妥当性」に、「外交的な波及効果」にかかる検証項目は「結果の有効性」に含めています。

2021年度の国別評価においては、外交的な重要性及び外交的な波及効果につき、いずれの国でもその重要性が確認され、一定の波及効果が見られたとされており、重要な外交ツールとして、ODAが二国間関係の強化、日本に対する理解や友好関係の促進等に有効に活用されていることが確認されました。一方、経済関係の強化や民間企業の進出・投資の促進に関しては、まだ成果に結びついていない部分があるとの指摘もなされています。

教育協力政策の評価においても、日本のプレゼンスや信頼感の向上、二国間関係の強化などの外交的波及効果を上げたことが確認されました。

提言

2021年度に実施した5件のODA評価の結果、それぞれの評価案件の個別事情を踏まえた提言がなされました(各提言と提言への対応策は「外務省ODA 評価結果フォローアップ」に掲載)。それらのうち、複数の案件に共通する提言、また、他案件へも適用が可能な提言は以下のとおりです。

複数の評価案件に共通する提言

●人材育成分野における支援の継続・強化

国別評価3件すべてにおいて、人材育成分野に関連する支援の継続や強化に関する提言が出されました。持続的経済成長を遂げるためには人材育成が重要であること(東ティモール)、長期的人材育成につながる技術協力を継続すべきであること(ペルー)、日本は草の根レベルでの人材育成を通じた技術協力に比較優位性をもっていること(マラウイ)などが指摘されました。

●相手国における投資環境の整備・民間連携の促進

ODAにおける官民連携促進は、日本政府の方針のひとつです。国別評価3件すべてにおいて、民間企業の活動促進のための取組や民間セクターとの連携強化についての提言がありました。投資環境整備のための法整備支援(東ティモール、マラウィ)や、民間連携スキームの積極的な活用(ペルー)が言及されています。

●日本の協力についての広報の強化

マラウイ国別評価と教育協力政策の評価において、相手国国民や国際社会に対する日本の協力についての広報の強化が提言されました。

他への適用可能性が見込まれる提言

●政策策定時の達成目標の設定

教育協力政策の評価において、「平和と成長のための学びの戦略」(2015年策定)には、実施期間、達成に関する目安・目標、指標が設定されておらず、何に対して達成度を測るのかが明確でないとの指摘があり、次期の政策策定時には、それらを設定し政策に盛り込むべきと提言されました。教育協力政策に限らず、政策を実施・モニタリングし、客観的な評価を行い、次の政策の改善につなげていくためには、政策の達成目標の設定は重要であり、他のODA関連の政策策定時にも考慮すべき内容です。

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