2020年度外務省ODA評価結果
外務省が実施する二国間無償資金協力個別案件の評価 (第三者評価)についての分析・評価手法の提案
分析主任 | 佐藤 寛 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所研究推進部 上席主任調査研究員 |
シニア アドバイザー | 稲田 十一 専修大学経済学部教授 |
コンサルタント | 株式会社国際開発センター |
業務の背景・目的
● 背景
過去3年間、外務省が実施する二国間無償資金協力個別案件の評価を行ってきた中で、ODA政策を対象とした手法と同一手法では、以下の特徴を有する、外務省が実施する個別案件の評価にはそぐわない点や課題が多数あるとの指摘が評価者・案件関係者双方から出されていた。
- 外務省が実施する二国間無償資金協力は、経済社会開発計画等、物資を購入するための外貨支援をその主たる内容とし、「機動的な実施を確保する必要があるものなど外交政策の遂行上の判断と密接に関連して実施する必要があるもの」と位置づけられており、JICAの実施する個別案件とは性質が異なること。
- 外交戦略上の意義は大きいが、案件単体での外交的な波及効果や定量的な効果の検証には限りがあること。
- 評価基準に含める検証項目や分析内容につき重複する部分があること。
● 目的
外務省が実施する二国間無償資金協力個別案件の特性を十分に踏まえた、評価の枠組み及び評価手法の提案を行うこと。
新たな評価手法の提案の主なポイント
● 評価基準
- 案件の「計画の妥当性」と「実施と結果の有効性」の2つの評価基準とする。
- 「プロセスの適切性」は、「計画の妥当性」と「実施と結果の有効性」の評価設問の一部とし、独立した評価基準とはしない。プロセスについては、手続の透明性などを確認することも目的としている。
- 「外交の視点」を「開発の視点」と統合し、「外交的な重要性」にかかる検証項目は「計画の妥当性」に、「外交的な波及効果」にかかる検証項目は「実施と結果の有効性」に統合する。
● 見返り資金(注)積立義務有の場合
- 基本的に評価の対象に含める。ただし、「積立」と「使途/事業」とは分けて評価小設問を設定し、実際の「使途/事業」は調査の対象とするものの、日本政府として「迅速な使用」を要件とはしていないことを考慮し、評価レーティングの対象に含めるかは案件毎に検討する。
(注)無償資金協力で供与された物資の売却代金を被援助国政府が積み立てた資金のこと。同資金は日本国政府との使途協議を経て、被援助国における経済・社会開発に資する事業や物資の調達等に使用することができる。
● レーティング
- 「教訓」となるべき根拠を明示することを奨励するレーティングの付与方法とする。
- 外務省の政策レベルのODA評価や、JICAの無償資金協力の事後評価の総合評価と同様に、4段階を提案。ただし、個別の評価報告書においては4段階をAからDといったアルファベット表記としない。
● 案件文書資料
- 第三者評価者の契約直後に、厳格な守秘義務の下、基本的な案件文書セットが提供されること。