ODA評価年次報告書2018 | 外務省

ODA評価年次報告書2018

2016年度 外務省ODA評価結果フォローアップ

外務省では、第三者評価から得られた提言について、その対応策を策定した上で、その実施状況の確認を行っています。2016年度の第三者評価から得られた主な提言に対する対応策の実施状況(2018年8月時点)を紹介します。

2016年度評価報告はこちらからご覧いただけます。 new window

パラグアイ国別評価

提言

日本のODAは、両国の緊密な外交関係や活発な文化・経済交流に寄与しており、今後も積極的に継続していくべきである。

今後のODAの実施に際しては、南南協力(開発途上国同士の協力)への支援や広域協力(近隣の複数の開発途上国に対する協力)といった様々な援助の手法を活用して効率を高めるべきである。

国内の格差を是正するためには、戦略的な支援を行う必要がある。貧困農民、農村女性、シングルマザー、先住民族女性など、特に支援を必要としている対象を特定し、そのグループが直面している社会的・経済的困難に直接応えるような支援を行うことが効果的である。

パラグアイにおいて日本の「質の高いインフラ支援」を効果的に推進するためには、建設仕様を共通化する必要がある。他の支援国や世界銀行に加え、米州開発銀行、ラテンアメリカ開発銀行、ラプラタ河流域開発基金、メルコスール基金、南米インフラ建設イニシアティブ等の地域開発のための金融機関や基金と戦略的に連絡・調整を進めていく必要がある。この点に関しては、対南米支援全体の課題としての改善を提案する。

対応策の実施状況

パラグアイに対する日本の支援を効率性も考慮した上で継続していくための方法を両国の関係者で協議している。

保健医療サービス体制を強化するため、かつて実施した日本の技術協力案件「プライマリーヘルスケア体制強化プロジェクト」の成果を全国普及させることを目的とし、2018年度より、個別専門家を派遣して事業の範囲を拡大した。

格差是正を目指し、2016年9月から農村女性を対象として生計向上の支援を行っている。また、2017年度からは、農村女性の自立を促進させる人材育成に向けた支援を開始した。更に、2017年12月からは、輸出農作物の安全性を向上するために小規模農家への支援を開始した。

「質の高いインフラ支援」に関しては、現在、水分野における支援の実施可能性を検討中であり、米州開発銀行やラテンアメリカ開発銀行などと支援に関する情報共有を行っている。

プライマリーヘルスケア体制強化プロジェクトの写真

プライマリーヘルスケア体制強化プロジェクト
写真提供:JICA

小規模農家の輸出農作物安全性向上プロジェクトの写真

小規模農家の輸出農作物安全性向上プロジェクト
写真提供:JICA

タンザニア国別評価

提言

日本が実施してきたインフラ支援はタンザニアの経済成長の基盤となった。今後も経済の成長基盤強化と産業化促進のための支援を継続・強化することが必要である。

既に実施されたアルーシャ・ナマンガ・アティ川間道路改良事業など、周辺国を含む広域協力は東アフリカ共同体域内の経済統合推進と経済活性化及び域内住民の生計向上及び貧困削減に寄与し、有意義であった。このような広域協力を今後一層拡大していくべきである。

日本は、すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる社会の実現に貢献することを国際的に明言している。タンザニアの保健行政を支援することにより、国際社会とタンザニアの期待に応える必要がある。

対応策の実施状況

今後も経済の成長基盤強化と産業化促進のためのインフラ支援を継続していく。

具体的には、ダルエスサラーム市及びその近郊における渋滞緩和を目指し、主要道路の拡幅や立体交差点の整備を実施しており、引き続き質の高いインフラ整備を推進していく。

また、産業分野について、「産業開発アドバイザー」を2018年5月から派遣し、産業政策の具体化に向けた協力を実施中である。

東部アフリカ地域における経済統合と経済活性化に貢献すべく2009年3月から派遣している東アフリカ共同体への専門家を今後も継続して派遣する予定である。また、東アフリカ共同体5か国(ケニア、タンザニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ)を対象に、国境における税関手続き等の円滑化・業務効率化を目的とした技術協力を実施中であり、貿易円滑化の促進を目指している。

新たに作成したタンザニアに関する国別開発協力方針では重点分野であるガバナンス・行政サービスの向上の中で、保健医療サービスの改善に取り組むとしている。現在、保健政策アドバイザーを派遣して保健医療サービスの強化に協力している。

地方自治強化のための参加型計画策定とコミュ二ティ開発強化プロジェクトの写真(キリマンジャロ州ルグル村)

地方自治強化のための参加型計画策定とコミュ二ティ開発強化プロジェクト:キリマンジャロ州ルグル村:村人が村の開発の現状を議論 
写真提供:JICA

地方自治強化のための参加型計画策定とコミュニティ開発強化プロジェクトの写真(キリマンジャロ州ウィリ村)

地方自治強化のための参加型計画策定とコミュニティ開発強化プロジェクト:キリマンジャロ州ウィリ村:県職員が計画プロセスの意義を説明
写真提供:JICA

内部監査能力強化プロジェクトの写真

内部監査能力強化プロジェクト:東アフリカ協力省で内部監査人に説明する専門家 
写真提供:JICA

環境汚染対策への日本の取組の評価

提言

支援を受ける開発途上国との政策対話や協議を通じ、日本の経験を踏まえた持続的な経済成長における環境対策の重要性に関する理解を促し、幅広い観点から開発途上国における環境保全と環境汚染対策の主流化実現に向けた働きかけと支援を実施する必要がある。

日本はこれまで実施した環境分野での開発協力から得た知見や教訓を分析・整理して知識ネットワークを構築している。このネットワークに、他の先進国や開発途上国、各国の地方自治体、国際機関、非政府機関の参加を促し、過去の知的支援の経験を有効に活用する必要がある。

環境問題は国際的な課題であり、日本の自らの経験に基づく環境汚染対策分野での貢献は国際的に認知されている。日本は環境問題に関する国際的な枠組み作りや議論の場で指導力を発揮する必要がある。

対応策の実施状況

引き続き幅広い観点から開発途上国における環境保全と環境汚染対策の主流化実現に向けた働きかけと支援を実施していく。

モンゴル、イラン、コソボにおいては大気汚染対策に関係する様々な利害関係者を取り込み、包括的な対策の検討・実施に向けた体制を構築している。

横浜市、鹿児島県志布志市、北九州市、滋賀県等の地方自治体と連携し、専門家や調査団派遣、日本への研修員受入等で協力を得ている。 また、カンボジアにおいては、排水路に堆積する汚泥やごみの除去のための技術・製品の普及・実証事業を東京都の企業と協力し、ベトナムにおいては、バイオトイレを活用した環境改善技術の普及・実証事業を北海道の企業と協力して実施している。

引き続き様々な団体・組織の強み等も考慮し、具体的な協力の実施に際して有効と思われる知見の共有や連携を検討していく。国際機関との情報交換も随時行っており、日本の強みの発信や他の協力団体の経験を踏まえた協力事業の形成にも取り組んでいく。

環境汚染対策分野における日本の国際協力について、引き続き積極的な対外発信を行っていく。

2017年の第3回国連環境総会では、日本は公害経験を克服して培ってきた環境技術やノウハウを提供することにより世界の環境問題の克服に貢献できるとの考えを発信した。

2017年に発効した「水銀に関する水俣条約」の第1回締約国会合において、日本は「水俣が有する様々な知見や人的なリソースを活用し、水俣に根ざした貢献をより一層実施」していくことを表明した。

 

ウランバートル市の様子の写真(モンゴル)

モンゴル:ウランバートル市の様子 
写真提供:JICA

温水ボイラの運転員向けワークショップの様子の写真(モンゴル)

モンゴル:温水ボイラの運転員向けワークショップの様子 
写真提供:JICA

モンゴル大気環境モニタリングの様子の写真

モンゴル大気環境モニタリングの様子 
写真提供:JICA

無償資金協力「日本方式」の普及(注)

(注)「今後一層の市場拡大が見込まれる新興国・開発途上国」に対して日本の「優れた製品」を供与してその普及を図ることにより、「開発途上国の開発と日本経済の活性化を両立させることを目指す」日本政府が実施する特定のODA案件群。

提言

個別の事業を実施するに際しては、地域・分野別にニーズ等を整理し、案件の目標を明確化した上で、計画の具体化に努める必要がある。

「無償資金協力『日本方式』の普及」は、ODA を日本の経済面における国益のためにより戦略的に用いることが意図されており、日本の産業振興の側面が他の支援形態に比べても強くなっている。一方でODA の本来的な役割は、国際的な課題や開発途上国の発展を目指すことであり、その点から批判されかねないという懸念がある。この点を改善していくため、「無償資金協力『日本方式』の普及」は日本の経験や技術を用いて、環境、エネルギー、医療、防災といった国際社会に共通する課題の解決に貢献するものであることを明確にする必要がある。

対応策の実施状況

2017年度以降、年度当初に在外公館や現地ODA実施関係者が収集した支援のニーズを整理し、案件実施に関する見通しを高め、在外公館による現場での外交活動においても一層有意義な事業の形成に努めている。

支援の対象候補となる事業については、開発途上国におけるニーズ、当該政府からの要請、当該国の開発計画との整合性等を前提とし、その上で、日本方式の普及と日本企業海外展開支援の側面を確保するという検討を徹底する。

また、実施段階の対外広報では、支援の背景、内容、開発効果等をできる限り具体的数値を付して紹介するとともに、持続可能な開発目標(SDGs)を踏まえた国際的連携枠組「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ2030」、気候変動分野における開発途上国支援策「美しい星への行動2.0」等、国際的な開発課題への貢献についても言及することとしている。

タイの産業人材育成分野への支援の評価

提言

日本は支援対象国への国別の援助計画として、国別援助方針や事業展開計画を策定し、それに沿った支援を進めている。策定にあたっては、より支援対象国の発展段階を意識することや、支援対象国の自立を目指し、有用な人材や情報を如何に引き継いで活用していくかという検討も必要である。

日本の支援の有効性や適切性、及び外交的な効果を高めるにあたり、タイの知日派産業人材が果たした役割は極めて大きい。知日派産業人材を戦略的に活用・育成する仕組みを構築する必要がある(有能な人材の特定・活用、人材に関する情報の引き継ぎ、組織横断的な共有等)。

日本の産業人材育成支援は、他の援助国・援助機関と比較して際立った特徴と長い歴史がある。日本の産業人材育成支援の特色をとりまとめた媒体を作成し、比較優位性の発信や援助国・援助機関同士の協調に活用していく必要がある。その際、国際的な援助潮流との関係性も留意した情報発信をすることが重要である。

タイへの支援から得られた教訓・経験に基づき、産業人材育成支援のモデル化を図り、タイや他国における今後の支援、タイによる南南協力(途上国同士の協力)を通じた支援において役立てていく必要がある。

 

対応策の実施状況

2017年の両国外務副大臣会談で、産業人材育成に係る協力覚書を締結し、タイの産業高度化を前提としての産業人材育成の必要性及びこの分野の支援における日本の方向性について合意した。その後もタイにおける大臣級対話を通じ、意見交換を実施してきている。

知日派産業人材を戦略的に育成すべく、その特定・発掘も視野に、情報収集・確認調査を国際協力機構が実施している。その結果を活用し、引き続き、日本への国費留学生の戦略的な人選や国際協力機構の研修を受けた人材の追跡調査を検討する。

2017年の日ASEAN外相会議において、産業人材育成協力イニシアティブの取組状況を含む日本の貢献についての現状をまとめた資料を作成して紹介した。また、総理大臣や外務大臣が産業人材育成に協力していくことに言及した。

現在タイにおける産業人材育成計画に関する情報収集・確認調査を国際協力機構が実施中である。その結果を踏まえて具体的な協力を検討していく。また、第三国協力(ある国の発展のために、日本が他の援助国・援助機関と共同で協力事業を実施すること)に関しては、既に計量基盤整備、素材加工技術等複数分野での協力を実施してきているが、これからもタイ政府の意向を踏まえつつ将来的な南南協力(途上国同士の協力)への支援について検討していく。

アセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクト:国際会議(電気電子工学分野)の写真

アセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクト:国際会議(電気電子工学分野) 
写真提供:JICA

アセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクト:国際会議(土木工学分野)テクニカルツアーの写真

アセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクト:国際会議(土木工学分野)テクニカルツアーの様子 
写真提供:JICA

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