平成18年6月15日
- わが国政府は、インドネシア共和国政府に対し、「海賊、海上テロ及び兵器拡散の防止のための巡視船艇建造計画」(the project for Construction of Patrol Vessels for the Prevention of Piracy, Maritime Terrorism and Proliferation of Weapons)の実施に資することを目的として、総額19億2,100万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、6月15日(木曜日)、ジャカルタにおいて、わが方海老原紳駐インドネシア共和国大使と先方プリモ・アルイ・ジュリアント外務省アジア・太平洋・アフリカ総局長(Mr.Primo Alui Joelianto,Director General for Asia Pacific and Africa Affairs,Department of Foreign Affairs)との間で行われた。
- マラッカ海峡は通過船舶が1日に200隻以上、我が国の関係船舶が年間約14,000隻往来する国際的な海運の大動脈である。その一方で、全世界の1割以上の海賊事件が同海峡にて多発しており、海上警備体制の強化は喫緊の課題となっている。昨年3月に発生した日本船への襲撃もまさに同海域での事件であり、わが国にとっても、マラッカ海峡の安全確保は緊急に解決すべき課題である。
また、このような頻繁な通行のあるマラッカ海峡では、武器密輸も問題となっており、兵器不拡散の観点から、水際での武器密輸阻止も海上保安の重要な課題となっている。
インドネシア共和国政府は、海賊船等の追跡に必要な高速船艇の不足や管轄する海域が広大であること等の理由により、十分な対応がとれないことから、巡視船の建造による海上警備体制の構築が急務となっている。
このような背景の下、2003年6月にメガワティ大統領(当時)より、また、2004年2月にハッサン外相より、海上警備能力強化のための船舶整備のための資金協力につき要請があったものである。
計画の概要
(1)船艇の用途
本計画により整備される船艇3隻は、それぞれリアウ州および北スマトラ州警察海上警察部ならびに国家警察本部海上警察局(ジャカルタ)に配置され、マラッカ海峡における海賊、海上テロおよび兵器拡散の防止のための取締りに使用されることとなる。
(2)実施機関
インドネシア共和国国家警察本部海上警察局
(3)機材の仕様
主寸法:全長約27m
船速:約30ノット(最大/満載)
乗組員:10名+2名(拘留者)
- この計画の実施により以下の効果が期待される。
(1)新たに供与される巡視船と既存の保有船とを組み合わせることにより、海賊多発地帯における警備活動が24時間可能になる。
(2)各基地からの警備範囲が各基地から現状半径170マイルから250マイルまで延長可能となり、海賊多発地域をほぼカバーすることができる。
(3)マラッカ海峡を中心とするインドネシア海域の海上保安体制の強化に貢献する。
(4)マラッカ海峡を航行する船舶輸送(日本船も含む)の安定化を図ることができる。
(5)上記の貢献によって、我が国とインドネシア共和国との友好的な二国間関係を増進させることができる。
- 政府開発援助(ODA)と武器輸出三原則等との関係
現在、世界各地においてテロ、海賊行為等が多発している。
我が国の経済活動や国民の安全に直結したテロ・海賊行為等への対応は、国際社会の平和と発展にとっても益々重要な課題であり、国際社会が一丸となって取り組むべき課題であり、我が国として開発途上国の政府等が行うテロ・海賊行為等の取締り・防止に対し積極的に支援を実施していくこととしている。
なお、本計画は、この新たな援助手法の第一号案件となる。
この計画の実施により輸出されることとなる巡視船は、乗務員を保護するための防弾措置を施した結果、輸出貿易管理令に規定される「軍用船舶」に該当し、武器輸出三原則等上の武器等に当たるものである。この計画の実施に係るインドネシア共和国政府との取極の締結に関する閣議決定時に内閣官房長官談話を発出し、目的外使用の禁止・第三者への移転の制限を国際約束にて担保することにより、武器輸出三原則等の例外とすることとしたものである。
(参考)
インドネシアは、面積約190万5,000平方キロ、人口2億2,260万人(2004年)、人口1人当たりのGNI(国民総所得)約971米ドル(2003年)である。