平成18年5月17日
- わが国政府は、ヨルダン・ハシェミット王国政府に対し、「南部地域拠点病院及びアルバシール病院医療機材整備計画(the project for Improving Medical Equipment of Southern Region's Hospitals and Al-Basheer Hospital) 」の実施に資することを目的として、総額5億2,300万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が5月17日(水曜日)、アンマンにおいて、わが方加藤重信駐ヨルダン国大使と先方先方スハイル・アリ計画・国際協力大臣(H. E. Mrs. Suhair Al-Ail, Minister of Planning and International Cooperation)との間で行われた。
- ヨルダンでは、経済発展に伴い人々の生活の改善が進むとともに基礎的な保健医療指標の改善も見られるが、乳幼児や女性の健康保健といった母子保健、リプロダクティブヘルスの向上等の基礎サービスの課題が多く残されている。また、同国では、南部・北部および首都アンマンの経済格差が大きく、貧困層の多い南部・北部地域では保健医療分野でも格差が開いている。特に南部では民間医療施設がない地域もある他、1万人当たりの病床数も低くなっており(南部のカラク、マアン県では18~19床、アンマン首都圏では26床)、これら地域の住民は十分な医療保健医療サービスを受けられない状況にある。
ヨルダン政府は「国家保健戦略」において公平な医療サービスの提供と医療資源の効率的な活用を重視し、プライマリーヘルスケア、病院医療サービス等重点項目に対する具体的な取り組みを示し、保健省は保健医療サービスの都市部と地方部の地域間格差を是正するため、全国にある保健省管轄の基幹29病院中17病院の整備を計画してきた。こうした状況を受け、ヨルダン政府はわが国に対し、ヨルダンの第3次病院であるアルバシール病院および地域格差の是正の観点から貧困層の多いカラク、マアン県の第2次病院に対する無償資金協力を要請してきたものである。
- この計画の実施により、画像診断(X線・超音波)関連機材が整備され診断精度が向上することで、3病院で画像診断を受ける患者(年間約30万件)に対して適切なサービスが可能となるとともに(3病院の診療圏の人口は合計約232万人)、ヨルダンにおいて特に生活基盤インフラの整備が遅れている南部地域での外科手術を中心とした医療サービスの改善が期待される。
(参考)
ヨルダンは中東の非産油国で、面積は8.9万Km2(日本の約4分の1)、約535万人の人口の約7割以上をパレスチナ系住民が占めている。ヨルダンは中東地域の安定確保の鍵を握る重要な国であり、中東和平プロセスに積極的な役割を果たす一方で、パレスチナ情勢やイラク情勢等の影響を受けやすい脆弱な社会・経済構造を有している。わが国は同国の経済構造改革への積極的な取り組みを評価するとともに同国を中東におけるわが国援助の重要国と位置付け援助を実施している。