平成18年3月10日
- わが国政府は、コンゴ民主共和国における「小児感染症予防計画」(the Project for Infectious Diseases Prevention for Children in the Democratic Republic of the Congo)の実施に資することを目的として、ユニセフ(国際連合児童基金)に対し6億円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が3月10日(金曜日)、首都キンシャサにおいて、わが方柳谷俊範駐コンゴ民主共和国大使と先方アンソニー・ブルームベルグ・ユニセフ事務所代表(Mr.Anthony BLOOMBERG Representative of the United Nations Children's Fund in the Democratic Republic of the Congo)との間で行われた。
- コンゴ民主共和国は、1960年に旧宗主国ベルギーからの独立以降、独裁政権下の汚職や内政の混乱、周辺国を巻き込む地域紛争に見舞われ、2002年の和平合意に至るまで長期に亘る不安定な情勢が続いた。その結果、国内経済は極度に疲弊し、一人当たりGNI(国民総所得)は120ドル、国民の8割以上が1日1ドル以下で生活しているなど、国民生活は劣悪な状況に置かれている。
わが国は、9ヶ国もの国と国境を接するコンゴ民主共和国の地理的重要性と人道支援の必要性に鑑み、これまで同国の「平和の定着」に資する支援を実施してきている。
- コンゴ民主共和国は、開発途上国の中でも保健医療事情が最も劣悪な国のひとつであり、乳幼児(1歳未満児)死亡率は1,000人中129人、5歳未満児死亡率は205人と、サブ・サハラ・アフリカ諸国の平均(1,000人中104人及び179人)に比しても非常に高い。5歳未満児死亡要因は、マラリア、麻疹、栄養失調及び貧血症であり、特にマラリアは死亡要因の約40%を占めておりその大部分が5歳未満といわれている。5歳未満児死亡率の削減は、ミレニアム開発目標でも掲げられているが、2015年までにコンゴ民主共和国の5歳未満児死亡率を3分の2減少させるには、広範かつ効率的な対策が必要であるとして、同国保健省およびユニセフは、5歳未満死亡の上位要因に対し包括的に取り組む「マラリア・麻疹・貧血症及び栄養失調削減促進キャンペーン」を策定し、2006年4月および10月の2期に亘り実施する予定である。かかる背景の下、ユニセフはマラリア対策に必要な長期残効性蚊帳(LLIN)、麻疹対策に必要な麻疹ワクチンおよび注射器関連機材、貧血症の原因となる回虫症対策に必要な駆虫薬を調達するために必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
- 本件の実施により、同国で最もマラリア感染率の高いバ・コンゴ州の妊産婦12万人および5歳未満児55万人に対し、長期残効性蚊帳(LLIN)が供与されることとなり、同州のマラリア感染率の低下に資することが期待される。麻疹予防接種については、これまで対象となってこなかった地域および年齢層を対象に、バンドゥンドゥ州、バ・コンゴ州、キンシャサ州、カサイ・オリエンタル州、北キブ州の児童595万人に、駆虫薬の供与については、全国の1歳~5歳未満児1,050万人に対して行われ、同国の麻疹感染率および貧血症改善に資することが期待される。
- なお、本支援は、アフリカにおけるマラリア対策のためにわが国が表明した1,000万帳の蚊帳の供与の一環としても位置づけられる。さらに、本支援は2月のTICAD平和の定着会議でわが国が発表したアフリカの平和の定着に向けた「新たなイニシアティブ」の下での、当面の支援の一環として行われるものである。
(参考)
コンゴ民主共和国は、中部アフリカ地域に位置する国で、総人口が5,440万人(2004年)で、一人当たりGNI(国民総所得)が120ドル(2004年)の低所得国(世銀ランク)である。