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世界食糧計画(WFP)を通じたアフリカ諸国に対する食糧援助について

平成17年10月28日

  1. わが国政府は、世界食糧計画(WFP)を通じ、「世界最悪の人道危機」と呼ばれるスーダン西部ダルフール紛争被災民(スーダンおよびチャド)、干魃等による深刻な食糧危機に直面する南部アフリカ諸国、リベリア等不安定な移行期の中で食糧を必要とする国など、アフリカ7ヵ国に対し、合計12億8,000万円の食糧援助を行うこととし、このための書簡の交換が、日本時間10月28日(金曜日)、ローマにおいて、わが方松原亘子駐イタリア国大使と先方ジャン・ジャック・グレイスWFP上級事務局次長(Mr. Jean-Jacques. Graisse, Senior Deputy Executive Director)との間で行われた。

    今回の食糧援助の対象内訳(カッコ内は供与額)。
     (1)スーダン・ダルフール地域の国内避難民等 (3億3,000万円)
     (2)チャド東部のダルフール難民等 (1億5,000万円)
     (3)コートジボワール被災民 (2億円)
     (4)リベリア被災民 (2億円)
     (5)スワジランド被災民 (1億円)
     (6)ザンビア被災民 (1億5,000万円)
     (7)ジンバブエ被災民 (1億5,000万円)

  2. スーダン西部のダルフール地域では、2003年よりアラブ系民兵とアフリカ系反政府組織の間の紛争が激化し、約7万人が死亡、160万人以上の避難民が発生し、近年継続する旱魃と相まって深刻な食糧不足に陥っている。スーダンでは、本年1月、20年にわたるアフリカ最長の内戦を終結させる南北和平合意が成立し、7月には暫定政府が発足した。こうした南北和平の機運を受け、ダルフール紛争も本年7月に政府と反政府勢力との間で政治解決に関する宣言が署名されたが、停戦違反もあり、状況は依然として流動的且つ不安定である。
     この様な中、本年7月のG8グレンイーグルズ・サミットでは、「世界最悪の人道危機」と呼ばれるダルフール危機を終結させるため国際社会としてさらなる支援を行うことが合意された。WFPはスーダン・ダルフール被災民230万人、チャドに流入したダルフール難民と受け入れ住民35万人を対象とした食糧支援活動を実施し、各国に支援を求めている。こうした要請に応え、わが国は、スーダンおよびチャドのダルフール被災民に小麦を配給するWFPの事業を支援することした。わが国は、本年4月にスーダンにおける平和の定着を後押しするために当面1億ドルの支援を行って行くと表明したが、今回の本件食糧援助は、この取り組みの一環として行われるものであり、今回の支援によって1億ドルのうちのすでに7割近くの供与が決定したことになる。

  3. コートジボワールおよびリベリアは、内戦から和平に向かう移行期の中で食糧不足に直面しており、安定化のために食糧支援の果たす役割が期待される。
     コートジボワールは、2002年9月、政府軍と反政府勢力との対立が発生し、北部と西部は反政府勢力により支配され、国を二分する状況が継続している。国連ミッションが展開する中、数次に亘り成立した和平合意にもかかわらず、武装解除も開始されず、予定されていた本年10月の大統領選挙は延期され、引き続き緊迫した状況が継続している。リベリアでは1989年より14年にわたり内戦が断続的に継続し、15万人が死亡、220万人の難民が発生したと言われる。2003年8月の和平合意により反政府勢力を含む暫定移行政府が発足し、本年10月11日には大統領・国会議員選挙が実施された。来年1月には本格政府が設置されることが期待されている。
     両国では、農業インフラの破壊等があり、未だ農業生産能力が回復していないために食糧不足が発生している。今回の支援によりわが国は、国内避難民、帰還難民、栄養失調児等の国内脆弱者に対するWFPの食糧支援事業のために小麦及びコメを購入する資金を供与する。

  4. 南部アフリカにおいては、昨年来の干魃により1992年以来最悪の収穫となり、深刻な食糧不足が生じている。わが国は、7月にマラウイ、モザンビーク、レソト、アンゴラ(計8億円)に対する食糧援助を決定したところであるが、今回、同様に事態の深刻なスワジランド、ザンビア、ジンバブエに対し、合計4億円(トウモロコシおよびその粉)の支援を実施するものである。
     スワジランドは、食糧不足に加え、HIV/AIDS感染率が38.8%と世界で最も高い。このため、労働生産性や経済発展にとり危機的な状況が生じており、WFPの食糧支援事業は栄養改善による感染・発症の抑制に成果を上げている。ザンビアも干魃により18万人が緊急に食糧を必要とし、収穫の狭間となる来年1月には120万人が食糧不足に陥る見通しである。ジンバブエはかつて大規模農業により「アフリカの穀物庫」とも呼ばれたが、1980年の独立以来、国政にあたるムガべ政権が2000年に導入した土地改革が大混乱を招き、農業生産が激減した。昨年8月来、食糧の市場価格は200-400%も高騰し、干魃も相俟って飢餓を伴う深刻な食糧不足が発生している。わが国は、ジンバブエ政府に対し、機会を捉えて健全な政治経済運営等を申し入れて来ているが、今回の食糧危機に際しては、国連からの要請に応じ、人道的観点からWFP経由による食糧援助を実施するものである。
     なお、わが国は昨年度、上記の南部アフリカ諸国に対し、合計9億5,000万円の食糧援助を供与したところであるが、本年に入り深刻化した同地域の事情を踏まえ、さらなる支援の実施を決定した。本年1月以来の南部アフリカに対する食糧支援は17億5,000万円におよぶ。

  5. 今回の食糧援助により、被災民の食糧不足が緩和され、安定に貢献することが期待される。なお、今回の協力は、本年4月にインドネシアで開催されたアジア・アフリカ首脳会議において小泉純一郎総理大臣が表明したアフリカ支援の一環として実施されるものである。
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