平成17年8月16日
- わが国政府は、ネパール王国政府に対し、「「万人のための教育」支援のための小学校建設計画(3/3期)」(the project for Construction of Primary Schools in Support of Education for All)に資することを目的として、5億8,100万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が8月16日(火曜日)、カトマンズにおいて、わが方平岡邁駐ネパール国大使と先方バヌ・プラサド・アチャリア大蔵省事務次官(Mr. Bhanu Prasad Acharya, Secretary, Ministry of Finance, His Majesty's Government of Nepal)との間で行われた。
- ネパール政府は、貧困削減を最終目標とする第10次5ヵ年計画において、教育を国家開発、経済・社会開発の重要な手段として位置づけており、より質の高い初等教育の提供を目指し、初等教育純就学率90%の達成を目標としている。
また、これに先立ち、基礎初等教育への取組を網羅するプロジェクトとして、「第二次基礎初等教育プログラム(BPEP II)」を策定し、教育へのアクセス向上にかかわる重要項目として「小学校施設の整備」をわが国を含む各国・機関の支援の下に実施しており、これまで約8,000教室が建設された。
BPEP IIは2004年7月に終了したが、多くの小学校では学習環境は未だに過密、劣悪な状況であり、既存の15万8,000教室のうち5万4,000教室は建て替えが必要な危険、あるいは仮設的なものであるなどの理由から、さらに多くの教室建設が必要とされている。このためネパール政府は、BPEP IIの後継プログラムとして、1万教室の建設をはじめとする小学校施設整備を内容とする「Education for All 2004-2009」を策定し、基礎初等教育のさらなる普及と質の向上を目指しているが、財政上の制約により実施が困難な状況にある。
このような状況の下、ネパール政府は「「万人のための教育」支援のための小学校建設計画」を策定し、小学校教室等の建設のために必要な資金につき、わが国に対し無償資金協力を要請してきたものである。なお、本計画は、わが国の協力により小学校教室等の建設に必要な資機材を調達し、小学校教室の建設は周辺地域の住民自らの参加により実施されるものであり、これはネパールに対するわが国の援助重点分野(人材資源開発)にも合致するため、実施することとしたものである。
- 今回の3期目においては、750教室等の建設が行われるものであり、この計画の実施により、過密、劣悪な学習環境の改善、初等教育の質の向上とともに、住民参加の教室建設による学校教育に対する地域住民の意識啓発が図られることが期待される。
- 本件の書簡の交換に際して、平岡邁駐ネパール国大使より先方に対して、ネパール国において多党制民主主義および立憲民主制の基本に則って平和と安定が早急に回復されることを要請した。なお、本件援助は、ネパールにおけるマオイスト問題の根底にある貧困問題・社会不平等等の軽減に大きく貢献するものとなるとの認識の下、供与されるものである。
(参考)ネパール王国は約14万7,000平方kmの国土と約2,321万人の人口を有し、北はヒマラヤ山脈をはさんで中国と、南はタライ平原と呼ばれる東西に広がる平坦地でインドと国境を接する内陸国である。一人当たりのGNI(国民総所得)は約240ドルと発展段階の低い後発開発途上国であり、貧困削減が政府の最重要課題の一つである。