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パキスタンの「ライヌラー河洪水予警報システム整備計画」他2件に対する無償資金協力について

平成17年8月10日

  1. わが国政府は、パキスタン・イスラム共和国政府に対し、「ライヌラー河洪水予警報システム整備計画」、「イスラマバード小児病院改善計画」および「環境監視システム整備計画」の実施に資することを目的として、総額25億4,600万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が8月10日(水曜日)、イスラマバードにおいて、わが国有償資金協力の書簡の交換とともに、わが方東博史駐パキスタン国臨時代理大使と先方カリード・サイート経済省次官(Mr.Khalid Saeed, Secretary to the Goverment of Pakistan, Economic Affairs Division)との間で行われた。

    (1)「ライヌラー河洪水予警報システム整備計画」
    the project for the Improvement of the Flood Forecasting and Warning System for Lai Nullah Basin
     6億6,100万円

    (2)「イスラマバード小児病院改善計画」
    the project for the Renovation of Islamabad Children's Hospital
     6億4,700万円

    (3)「環境監視システム整備計画」
    the project for the Establishment of Environmental Monitoring System
     12億3,800万円

  2. (1)「ライヌラー河洪水予警報システム整備計画」
     パキスタンは、そのほとんどが亜熱帯に属しており、降雨のほとんどは7月から9月に集中し、パキスタンの40%を占める丘陵地帯へのモンスーンによる集中豪雨がインダス河およびその支流における急激な洪水流出量の増加につながっている。過去50年間に洪水による直接被害は、約100億ドル、約6千人の死亡に上っている。特に、首都イスラマバードを集水域としラワルピンディ市(人口約140万人)内を流れるライヌラー河は、イスラマバード地区の急激な都市化に伴い洪水時の水量が増大し、しばしば洪水が発生している。01年7月の洪水では、ラワルピンディ市内において死者74人、家屋倒壊3,000戸、橋梁損壊等の甚大な被害が生じた。パスタン政府は、連邦洪水委員会を中心として国家洪水防御計画を策定し、1978年から堤防、渓流砂防施設などを順次建設してきているが、財政の逼迫等により十分とはいえない状況にある。
     このような状況の下、パキスタン政府は、わが国により実施された開発調査の結果を踏まえて、「ライヌラー河洪水予警報システム整備計画」を策定し、雨量観測計、水位観測計、洪水警報局の整備に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
     この計画を実施することにより、ライヌラー河の洪水予報の精度が向上するとともに、警報の伝達網が強化されることにより、ラワルピンディ市の洪水被害が軽減され、安全な生活が確保されることが期待される。

    (2)「イスラマバード小児病院改善計画」
     パキスタンでは、1,000人当たりの乳幼児死亡率が82、1,000人当たりの5歳児未満時死亡率が105と近隣諸国と比べて保健水準が劣悪な状況にある。このため、パキスタン政府は、「保健政策10年計画」を策定し、保健水準の向上を図るべく基礎医療施設の拡充、貧困層への医療サービスの拡充等の施策を推進しているところであるが、十分とはいえず、更なる対策が求められている。
     連邦保健省パキスタン医科学研究所の直轄病院であるイスラマバード小児病院は、小児医療サービスの向上と同医療従事者の養成を目的としてわが国の無償資金協力により1985年に完成したものであり、230床を有する国内でも有数の公的小児専門病院として医療活動を行っているが、同病院には手術室が2つしかなく年々増加する患者・手術件数に対して対応が困難となっているほか、当該手術室が1室2床であり術後回復室等の必要な衛生設備も有していないため、感染症のリスクを抱えつつ手術を行わざるを得ない状況にある。また、機材の不足・機能低下などから、適切な医療サービスの提供が困難な状態に陥っている。
     このような状況の下、パキスタン政府は、「イスラマバード小児病院改善計画」を策定し、イスラマバード小児医療病院の新手術棟の増築、既存手術部の改修、医療機材の整備に必要な資金につき、わが国に対し無償資金協力を要請してきたものである。
     この計画を実施することにより、イスラマバード小児病院の手術室が増設されるとともに、医療機材が整備されることにより、イスラマバードを始めとしたパキスタンの医療環境が改善することが期待される。

    (3)「環境監視システム整備計画」
     パキスタンでは、自動車の排ガスや工場からの汚染物質により大量の浮遊粒子物質を含む排ガスの放出が問題となっているとともに、下水排水の放出による水質汚濁が深刻化していることから、国民の健康被害が懸念されている。このため、パキスタン政府は従来より「国家環境行動計画支援プログラム」等を通じて環境対策を行っているところであるが、近年の急速な都市化に伴い大気汚染・水質汚濁は深刻な状況となっていることから、「国家環境政策2005-2015年」および「中期発展フレームワーク2005-2015年」を発表しより重点的に環境改善に取り組む予定としている。
     パキスタンでは、従来より連邦環境保護局および各州政府に所属する環境保護局を通じて大気汚染状況、水質汚濁状況等の環境モニタリングを行って来ているところであるが、所有するモニタリング用機材の数、能力不足を始めとした実施体制の未整備により、全国的で定時的な環境モニタリングが行われておらず、有効な環境対策を行うために必要な分析も行えない状況にある。
     このような状況の下、パキスタン政府は、「環境監視システム整備計画」を策定し、パキスタンの環境対策の基盤となる環境監視網を整備するとともに、観測された汚染状況データを科学的に分析する中央環境分析ラボラトリーセンターを設立するために必要な資金につき、わが国に対し無償資金協力を要請してきたものである。
     この計画を実施することにより、パキスタン全土の環境汚染の現状把握・分析、環境基準が整備され、効果的な環境対策の推進が行われることを通じて、同国国民の健康改善に資することが期待される。

(参考)
パキスタン・イスラム共和国は、南西アジアに位置し、人口1億4,900万人、国民1人あたりのGNI(国民総所得)は約652ドルである。

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