平成17年7月11日
- わが国政府は、セルビア・モンテネグロ政府に対し「ベオグラード市上水道整備計画」(the Project for the Improvement of Water Supply System in Belgrade City)の実施に資することを目的として、総額7億5,400万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が7月11日(月曜日)、ベオグラードにおいて、わが方田邊隆一駐セルビア・モンテネグロ国大使と先方プレドラグ・イバノビッチ対外経済関係大臣(Mr. Predrag Ivanovic, Minister of International Economic Relations of Serbia and Montenegro)との間で行われた。
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(1)セルビア・モンテネグロ(旧ユーゴスラビア連邦共和国)は、90年代のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争やコソボ問題等により国際的に孤立し、経済制裁等の影響により、現有施設の維持管理や新たな設備投資が行われなくなったため、水道施設を含め、あらゆる経済社会インフラの老朽化が進んでいる。
(2)同国では、「国家水計画」を策定し、将来の水需要に対する水源の確保と施設の整備を進めることとしている。この国家水計画を受け、ベオグラード市では「ベオグラード市上水道開発計画」を策定し、「市内の水需要を満たし、衛生的に安全な飲料水を供給する」ことを目的に、配水能力の増加、モニタリングシステムの構築、水質管理の強化等の取組を実施することとしている。
(3)しかし、これまで、人口の増加に伴う給水地域の拡大に対して、水道施設の計画的な拡張・新設を適切に実施してこなかったため、同市の水道施設はポンプ場、配水池、配水管が複雑に接続した状況にあり、適切な給水を行うために必要な流量、水圧、水量等の給水管理が行われておらず、給水量等の適切な調整ができない状況にある。現在、約10万人(給水人口の8%)の住民が適切な配水を受けられず、恒常的な水不足が発生していることに加え、水道需要が増加する夏季には、給水状況はより逼迫し、適切な給水が受けられない人口が拡大している(約15万人)。
(4)このような状況のもと、同国政府は、わが国に対し、ベオグラード市の水道施設の機能強化を図り、衛生的で安全な飲料水を安定的に供給するために必要な機材の整備について、無償資金協力を要請してきたものである。
- 本件支援により、実施機関の運転管理能力が強化され、水道施設の適切な運用が図られることが期待される。上水道の適正な給水管理が行われることを通して、現在、給水不足地域に居住している約10万人に対して、安定した給水を行うことができる。また、飲料水の水質管理も適切に行われることになることから、各家庭に配水される飲料水の水質も向上することが期待でき、同市の給水対象人口である130万人に対しても、同国の飲料水基準に適合した安全な給水を行うことができる。
(参考)セルビア・モンテネグロは、中東欧地域に位置し、人口は約1,050万人、一人当たりGNI(国民総所得)は約1,400ドルの国である。