平成17年4月30日
- わが国政府は、パキスタン・イスラム共和国政府に対し、「タウンサ堰水門改修計画」および「ファイサラバード上水道整備計画(2/2)」の実施に資することを目的として、総額83億9,300万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が4月30日(土)、イスラマバードにおいて、パキスタン訪問中の小泉純一郎首相とショーカット・アジズ・パキスタン首相(Mr. Shaukat Aziz, Prime Minister)の立会いの下、わが方田中信明駐パキスタン国大使と先方シュジャ・シャー経済省次官(Mr.Shuja Shah, Secretary to the Government of Pakistan, Economic Affaires Division)との間で行われた。
本プロジェクトの実施により、平成13年にわが国が実施を表明したパキスタン政府のテロとの闘いおよび貧困削減の努力を支援するための同国への3億ドルの無償資金協力は、すべて実施されることになる。わが国は、今後ともパキスタン政府の貧困削減の努力を支援するため、同国に対する経済協力を行っていく予定である。
(1)「タウンサ堰水門改修計画」(the project for the Rehabilitation of Gates of Taunsa Barrage) 51億6,500万円
(2)「ファイサラバード上水道整備計画(2/2)」(the project for Improvement of Water Supply System in Faisalabad) 32億2,800万円
- (1)「タウンサ堰水門改修計画」
パキスタンでは農業生産の90%を灌漑農業が占めるなど、灌漑施設は極めて重要なインフラであるが、人口増加に伴う水資源の不足、灌漑システムの老朽化による灌漑効率の低下等、灌漑セクターにおける問題を多く抱えている。
タウンサ堰は、パンジャブ州南西部に位置し、インダス川両岸の約110万ha(主に綿花、小麦、水稲、果樹を作付け)を灌漑するために1958年に建設されたインダス川本流を全面的にせき止める全幅約1,300mの超大規模の堰であるが、ゲートおよび付帯施設の老朽化による著しい漏水(灌漑水路流量の約50%相当)のほか、ゲート操作装置の不具合により増水時の円滑な放水操作ができずに堤防決壊を招く事態を発生させている。現在の状態で放置した場合には、堰自体の崩壊を招く危険性も指摘されている。
このような状況の下、パキスタン政府は、1997年にわが国により実施された開発調査の結果を踏まえて、「タウンサ堰水門改修計画」を策定し、ゲートおよびゲート開閉器等の改修に必要な機材整備に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画を実施することにより、タウンサ堰のゲート開閉がスムーズとなり増水時の周辺堤防の崩壊・堰自体の崩壊の危険性が軽減されるとともに、取水量が確保され、周辺地域により安定した灌漑用水が供給される。
(2)「ファイサラバード上水道整備計画(2/2)」
パキスタンにおいては、上水道普及率が人口の63%(2001年)にとどまっており、肝炎、下痢、チフス等水因性疾患が5歳未満乳幼児死亡数の60%を占めるなど、安全な飲料水の普及が課題となっている。パンジャブ州中央部に位置し、パキスタン第3の都市であるファイサラバード市(人口230万人)では、予想を超える人口増加や取水量の減少により、市内の給水は1日3回各1~2時間の時間給水に限定されているほか、市郊外の地区ではほとんど取水ができないなど、最低限必要な飲料水等の供給が困難な状態に陥っている。
このような状況の下、パキスタン政府は、「ファイサラバード上水道整備計画」を策定し、取水井、送水管、浄水場等の建設および市内配水管の改修に必要な資金につき、わが国に対し無償資金協力を要請してきたものである。今回の協力では、平成16年度の協力に引き続き、取水井、送水管、浄水場等の建設を行うこととしている。
今回の協力により、ファイサラバード市の市民約230万人が、安全かつ安定した量の給水を受けることが可能となり、肝炎・下痢・チフス等の水因性疾患が軽減され、市民の保健・衛生環境改善が期待される。
(参考)
パキスタン・イスラム共和国は、南西アジアに位置し、人口1億4,900万人、国民1人あたりのGNI(国民総所得)は約652ドルである。