
ネパールに対する無償資金協力(食糧増産援助)について
平成17年3月7日
- わが国政府は、ネパール王国政府に対し、3億0,100万円を限度とする額の無償資金協力(食糧増産援助)を行うこととし、このための書簡の交換が3月7日(月)、カトマンズにおいて、わが方平岡邁駐ネパール国大使と先方バヌ・プラサド・アチャリヤ大蔵省事務次官(Mr. Bhanu Prasad Acharya, Secretary, Ministry of Finance, His Majesty's Government of Nepal)との間で行われた。
- ネパールにおける農業は、国内総生産(GDP)の約4割を占め、就労人口の約66%が従事する基本産業となっている。しかしながら、国土の約8割が山岳地帯であり、また農業基盤が未整備であることから、農業は天候の影響を受けやすく、生産性が低い状況にあるため、急激な人口増加に生産量が追いつかず、食糧生産の向上が緊急課題となっている。
このため、ネパール政府は、「農業開発20ヵ年計画(1995年から2014年)」を策定し、持続的な経済成長、貧困緩和、地域格差の是正を目的として、農業分野の成長率を高めるべく各種施策を実施しているが、山岳地帯が多くを占め、農地拡大が困難なネパールにおいては、灌漑の普及や肥料等の農業資機材の投入が農業生産性の拡大には不可欠である。一方、農業用肥料の国内工場はなく輸入に頼らざるを得ず、輸送コストの高い輸入肥料については、財政的な理由により十分な量の調達が困難な状況にある。
このような状況の下、ネパール政府は、肥料による単収増加等による農業生産性の向上を目的とする「食糧増産計画」を策定し、この計画に必要な肥料の購入のための資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
- わが国は、食糧生産の向上を目指す開発途上国の自助努力を支援するために、食糧増産援助を実施しており、この計画の実施により、ネパールにおける食糧の安定的な生産に寄与することが期待される。
なお、本件については、ネパールにおけるマオイスト問題の根底にある貧困・社会不平等等の軽減を通じた貧困削減および和平達成のための環境作りに大きく貢献するものであるとの観点から実施を決定したものである。
(参考)
- ネパール王国は約14万7,000平方kmの国土と約2,321万人の人口を有し、北はヒマラヤ山脈をはさんで中国と、南はタライ平原と呼ばれる東西に広がる平坦地でインドと国境を接する内陸国である。一人当たりのGNI(国民総所得)は約240ドルと発展段階の低い後発開発途上国であり、貧困削減が政府の最重要課題の一つである。
- 2月1日のネパール国王による内閣の解任と、これに伴う政党指導者等の自宅拘束、通信手段の制限、新聞等への検閲等については、わが国としてはネパールにおいて多党制民主主義および立憲君主制の基本に則って平和と安定が回復されることを強く望んでおり、ネパール側にこうしたわが国の立場を伝達するとともに、引き続き情勢の推移を注視していくこととしている。