
コンゴ民主共和国の「小児感染症予防計画」のためのユニセフに対する無償資金協力について
平成17年3月2日
-
わが国政府は、コンゴ民主共和国における「小児感染症予防計画」(Project for Infectious Diseases Prevention for Children in the Democratic Republic of the Congo)の実施に資することを目的として、ユニセフ(国連児童基金)に対し、3億3,400万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が3月2日(水)、キンシャサにおいて、わが方柳谷俊範コンゴ民主共和国大使と先方セルジオ・ソロ駐コンゴ民主共和国・国連児童基金(UNICEF)代表代理(Dr.Sergio Soro a.i., Representative of the United Nations Children's Fund (UNICEF) in the Democratic Republic of Congo)との間で行われた。
- コンゴ民主共和国では、長期に亘る紛争状態、国内情勢の悪化および経済の疲弊等により、乳幼児に対する予防接種体制が整備されておらず、児童の死亡率は開発途上国の平均と比較しても劣悪な状況にある。このような状況の中、ユニセフは特に大きな人口を有する同国が、ポリオを撲滅しつつある近隣諸国にとってポリオ「輸出国」として深刻な脅威となっているとの認識の下、同国を重点国に指定し「ポリオ・ワクチン全国一斉投与」(NID)体制を構築するなど積極的に協力してきた。1998年に始まったNIDは着実に実施され、2000年には28件報告されたポリオの症例も2001年は1件の報告もなく、大きな効果を上げてきた。しかしながら、現在のポリオ接種率は60%と依然として低く、特に中央アフリカ共和国およびスーダンに接する東部州、赤道州においては、ポリオ接種率は40%と極めて低いため、今後はこの2州を含め、これまで接種活動が十分に行えなかった行政区を対象に接種活動を継続することが必要とされている。
また、コンゴ民主共和国における麻疹の蔓延に鑑み、ユニセフは1999年よりポリオ撲滅支援と同時並行的に麻疹の予防接種体制の整備強化を積極的に進めてきた。このため1990年代に20%台にまで落ち込んでいた麻疹ワクチン接種率は2004年には60%にまで回復した。しかしながら、麻疹が依然として蔓延しており、また、治安が悪く調査ができない地域があることから、麻疹の件数および死亡数の報告自体が実際の状況を十分に反映していないと言われており、引き続き麻疹の接種活動の強化が不可欠である。
このような状況の下、コンゴ民主共和国政府およびユニセフは、2005年のNIDを実施すべく「小児感染症予防計画」を策定し、ポリオ撲滅および麻疹抑制のための予防接種に係るポリオおよび麻疹ワクチンの調達並びに注射器等の調達に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
- この計画の実施により、コンゴ民主共和国におけるポリオおよび麻疹ワクチンの接種率が大幅に向上するとともに、乳幼児の感染症発症数が減少し、上記疾病による死亡率が低下することが期待される。
- なお、この無償資金協力は、2000年7月の九州・沖縄サミットにおいて、森喜朗総理大臣(当時)が「沖縄感染症イニシアティブ」を発表し、同イニシアティブにおいてHIV/エイズ、結核、マラリア、寄生虫およびポリオ等の感染症対策のためにODA(政府開発援助)を通じて5年間で総額30億ドルを目処に協力を行う旨表明されたことを踏まえ、また、第三回アフリカ開発会議(TICADIII)において小泉純一郎総理大臣が表明したアフリカ支援の一環として実施されるものである。
(参考)
- わが国は同国に対してユニセフを通じ、2000年度、2001年度には「ポリオ撲滅計画」としてポリオ・ワクチンを供与、2002年度、2003年度には「小児感染症予防計画」として、ポリオおよび麻疹ワクチンを供与してきた。2000年度から2003年度までの供与額の合計は、11億8,600万円に上る。
- コンゴ民主共和国は、中部アフリカ地域に位置する国で、総人口が5,380万人(2003年)で、一人当たりGNI(国民総所得)が90ドル(2003年)の低所得国(世銀ランク)である。