(1)「ヨルダン南部・北部消防救急機材整備計画」
ヨルダンは年率2.8%の人口増加と急速に進みつつある社会経済の発展により、全国的に交通事故、火災、救急出動、レスキュー事案の発生率が急速に増えており、緊急時に対応しうる体制、とりわけこれまでに不十分であった救急活動、レスキュー活動に係る機材の整備が急務になっている。
ヨルダン政府は、2001年に5ヶ年計画(消防・災害救助局開発計画(2002-2006))を策定し、消防署その他の施設の整備、消防・救助・救急車両・資機材の整備、人材の育成により国民のニーズに応えうる消防・救助及び救急力の確立をめざしている。本5ヶ年計画の上位計画の「経済社会開発計画(2004-2006)」においても、アンマン首都圏に比べ社会基盤整備の立ち後れている南部・北部地域における市民への公共サービスの向上は重視されており、ヨルダン政府は消防・災害救助関連予算を着実に増額し(2000年から2002年の伸び率24%)各種の災害から国民を保護するための整備を推し進めている。しかし、その多くは人件費などに費消され、消防機材、救急機材の整備に充当することができない状況にある。このような状況を踏まえ、ヨルダン政府は、わが国に対し、無償資金協力による南部4県北部4県の消防施設整備に必要な機材調達を要請してきたものである。
この計画の実施により、対象8県において適正な消防車両が配備され、消防救急体制が整備されることで、国内で生活水準の低い対象地域の人口約197万人(南部50万人、北部147万人)の住民生活の安全性が向上し、地域格差が是正される。
(2)「ヨルダン渓谷北・中部給水網改善・拡張計画(詳細設計)」
ヨルダンの地勢は大別して、西部の南北に走る山岳地帯と東部の平坦な砂漠地帯に分かれ、国土の80%以上が砂漠または荒地である。本計画対象地域であるヨルダン渓谷は、山岳部の西部に位置し、その底部をヨルダン川が流れ、流域は肥沃な農業地帯になっている。一方で同地域における失業率は極めて高く、同国における最貧困地域とされている。
ヨルダンにおける年間平均降雨量は山岳部で400mm、本計画対象地域を含むヨルダン渓谷部は200mm、また砂漠部では降雨は雨季に限られる。このように利用可能な水資源が絶対的に不足する中、本計画対象地域においては、25年以上前に敷設されたアスベスト管を含む配水管網の老朽化により、50%を越える不明水(漏水・盗水等)が発生している。また、アスベスト管については健康面への影響も問題視されており、早急な交換が求められている。さらに、水源である深井戸についても、揚水量が限られる中、ブースターポンプ及び配水池の老朽化、容量の不足による非効率な供給が行われ、機材・施設の改修及び拡張による効率化が必要とされている。
このような状況を踏まえ、計画省が策定した「新社会経済開発計画」においても、水供給は最重要課題に位置づけられているほか、ヨルダン水灌漑省は2002年に「水分野開発・投資計画(2002-2011)」を策定し、配水管のリハビリ事業を最重要分野としている。わが国はヨルダンの水供給分野を重点分野とし、これまでにもザルカ市を含む首都圏での給水分野における無償資金協力を実施しているほか、漏水等対策の技術協力も行っており、こうした経緯を踏まえヨルダン政府はわが国に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、同地域の一人あたりの給水量が増加し、地域住民(対象区域の人口は約10万人)の生活環境が改善されるとともに、ヨルダンの希少な水資源の効率活用が可能になる。
(3)「ノン・プロジェクト無償資金協力」
ヨルダン政府は、イスラエル、パレスチナ自治区およびイラクと国境を接するとともに国内総人口の6割強をパレスチナ系が占めるという政治的・経済的事情に鑑み、国内の政治的安定の確保を図るため、1989年から3次にわたって国際通貨基金(IMF)・世銀との合意の下で経済構造調整計画を推進してきており、自由貿易体制の整備、民営化の推進、財政赤字および債務残高の削減等を進めてきている。
今回のノン・プロジェクト無償資金協力は、同国の経済構造調整計画の実施を支援するものであり、ヨルダン政府が経済構造改善努力推進に必要な商品の輸入代金支払い等のために使用される。
(参考)
ヨルダンは中東の非産油国で、面積は9.8万Km2(日本の約4分の1)、約548万人の人口の6 割以上をパレスチナ系住民が占めている。