平成16年11月1日
- わが国政府は、パレスチナ自治区における「予防接種拡大計画」(the project for the Expansion of Immunization Program in the Palestinian Administrated Areas)に資することを目的として、ユニセフ(国連児童基金)に対し、2億9,000万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が10月29日(金)、エルサレムにおいて、わが方横田淳駐イスラエル国大使と先方ダン・ロハマン・ユニセフ・パレスチナ占領地域特別代表(Mr.Dan Rohrmann, Spacial Representative, UNICEF/Occupied Palestinian Territory)との間で行われた。
- パレスチナ占領地では、1993年のオスロ合意以前からイスラエル民生当局により感染症の予防接種が積極的に進められ、その政策は、同合意により発足したパレスチナ暫定自治政府にも引き継がれた。この結果、1960年代には約60パーセントであった子供の予防接種率は1997年度には約95パーセントにまで上昇し、破傷風を中心とする妊産婦の予防接種率も約30パーセントに上昇した。しかし、その後、イスラエル軍による封鎖等によるパレスチナ経済の破綻から来るパレスチナ自治政府の財政難や急激な人口増加による保健サービス需要の増大等により、十分なワクチンの投与の実施が困難になりつつある。
このような状況の下、パレスチナ暫定自治政府およびユニセフは、「予防接種拡大計画」を策定し、来年(2005年)に予定される麻疹、風疹、ポリオ、破傷風等の予防接種の実施に必要なワクチンおよび関連機材の購入に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
- この計画の実施により、パレスチナ自治区内の約41万人の子供(15歳以下)および婦人約8万3,000人が予防接種を受けることが可能になり、感染症の予防による乳幼児および妊産婦の死亡率の低下が期待されるほか、パレスチナ自治区における人道状況の改善にも貢献することが期待される。
(参考)
パレスチナ自治区は、地中海の東岸に位置し、イスラエルとヨルダンに挟まれた西岸地区およびイスラエルとエジプトに挟まれたガザ地区とから成る。中東戦争の結果1967年以降イスラエルにより占領されていたが、1993年のオスロ合意によりパレスチナ人による暫定自治が認められている。両地区を合わせた人口は約340万人(2003年世銀)であり、1人当たりの国内総生産は925ドル(2003年、世銀)と推定されている。