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カンボジアの「第四次地雷除去活動機材整備計画」ほか2件に対する無償資金協力について

平成16年8月11日

  1. わが国政府は、カンボジア王国政府に対し、「第四次地雷除去活動機材整備計画」、「国立医療技術学校改修計画」および「感染症対策計画」の実施に資することを目的として総額27億6,700万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、8月11日(水)、プノンペンにおいて、わが方?橋文明駐カンボジア王国大使と先方ハオ・ナムホン副首相兼外務国際協力大臣(H. E. Mr. HOR Namhong,Deputy Prime Minister, Minister of Foreign Affairs and International Cooperation)との間で行われた。

    (1)「第四次地雷除去活動機材整備計画」
    (the Project for Improvement of Equipment for Demining Activities(Phase IV))
    17億6,100万円
    (2)「国立医療技術学校改修計画」
    (the Project for Renovation of Technical School for Medical Care)
    7億7,400万円
    (3)「感染症対策計画」
    (the Project for Infectious Disease Control)
    2億3,200万円


  2. (1)「第四次地雷除去活動機材整備計画」
     カンボジアでは、20年以上に及ぶ内戦時に埋設された地雷・不発弾が住民の安全な生活や地域経済の発展を妨げている。これらの地雷・不発弾は、現在も約600万個残っていると推定されており、年間約800人がこれら地雷・不発弾による被害を受けている。このため、住民の安全な生活を確保し、帰還、再定住を促進することや地雷被災者の支援は、社会経済を発展させる上で緊急の課題と認識されている。
     このような状況の下、カンボジア政府は国家地雷活動戦略プランを策定し地雷除去活動を重要政策の一つと位置付け、1992年に設立されたカンボジア地雷対策センター(CMAC)等による地雷除去活動や住民に対する啓蒙活動を行ってきた結果、地雷被災者は減少している(2,957人(1996年)から799人(2002年)に減少)。しかしながら、同センターの機材の多くは国連暫定統治時代に調達されたもので、老朽化が激しく、機材の不具合のため作業効率が低下している状況にある。
     このような状況の下、カンボジア政府は、地雷除去をより効率的かつ安全に行うため「第四次地雷除去活動機材整備計画」を策定し、地雷除去関連機材の調達に必要な資金につきわが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
     この計画の実施により、地雷除去活動が促進され、カンボジア国民の安全な生活の確保に資するほか、地雷処理により国土の再利用が可能となり、帰還・再定住の促進、社会経済の発展が図られることが期待される。

    (2)「国立医療技術学校改修計画」
     カンボジアでは、1970年代の20年以上に及ぶ内戦と混乱により国土が荒廃し、農業等生産手段の破壊、技術者・知識人の喪失、労働人口の減少等に見舞われ経済社会活動が著しく落ち込んだ。医療従事者についても、1975年当時487人いた医師が内戦直後の1991年には43人、看護師も342人となるなど著しい人的資源の損失が生じ、基本的な保健医療サービスを提供するための体制が壊滅的な打撃を受けた。カンボジア政府は、このような状況を改善するため、「第2次社会経済開発計画(2001年~2005年)」および「保健従事者開発計画(1996年~2005年)」に基づき、医療従事者の育成に努めてきたものの、依然としてその質と量の面での不足が否めない。特に、X線技師は最も人材育成が遅れており、専門の知識を有さない医師や看護師が自らの経験のみでX線検査等を実施している状況にある。
     1950年に設立され、4職種の医療従事者(看護師、衛生検査技師、理学療法士、助産師)の育成コースを運営する国立医療技術学校は、カンボジア唯一の衛生検査技師、理学療法士の養成機関として、また、全国の在職看護師等に対する幹部看護師の育成や精神看護、麻酔看護等の教育、研修の機能を有する機関として、カンボジア国内の医療従事者育成の中核機能を果たしてきた。
     しかしながら、国立医療技術学校では、各診療科目の診断治療能力を高める上で欠かせない職種であるX線技師の育成コースがないほか、狭小な施設や機材の老朽化、不足により、学生に対し適切な水準の技術指導を行うことが困難な状況に陥っている。
     このような状況の下、カンボジア政府は、わが国プロジェクト技術協力の支援の下、X線技師の育成コースを含めた医療技術者の育成体制を整備するため「国立医療技術学校改修計画」を策定し、同学校の老朽化した校舎を新築・改築するととも、各コースの運営に必要な機材を整備するために必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
     この計画の実施により、X線技師を含む医療従事者の育成が促進され、カンボジア国民に対し適切な保健医療サービスが提供されることが期待される。

    (3)「感染症対策計画」
     カンボジア王国では、結核の患者数が6万3,000人(人口10万人あたり539人)を数えており、WHO(世界保健機構)により結核対策最重点国に指定されている。また、HIVウィルス感染により結核の合併感染の爆発的増加も懸念されている。このため、カンボジア政府は、国家結核対策戦略5ヵ年計画において2005年までに患者発見率70%、治癒率85%を達成・維持することを目標として掲げ、DOTS戦略(喀痰塗抹検査で患者を発見し、保健従事者の監視のもと患者の抗結核薬服用を実施する保健サービスにより感染拡大の防止を図るもの)の更なる強化を目指しているものの、抗結核薬等の不足によりDOTS戦略の継続が困難となっている。
     また、カンボジア王国では、乳児死亡率および5歳未満児死亡率がそれぞれ86および122(共に対1,000人出生)と東アジアの諸国と比較して非常に悪い状況にあり、その主な原因は、下痢疾患、急性呼吸器感染症、栄養失調のほか、麻疹、ポリオなどワクチンで予防可能な疾患とされている。このため、カンボジア政府は、国家予防接種戦略5ヵ年計画において、2005年までに完全予防接種率80%を達成することを目標として掲げ予防接種の実施に取り組んでいるものの、コールドチェーン(ワクチンを保冷・冷凍したまま接種現場まで保管・搬送するための資機材)等の機材の老朽化により予防接種率が低下傾向にある。
     このような状況の下、カンボジア政府は、抗結核薬、ワクチン、コールドチェーン等を購入するため「感染症対策計画」を策定し、この計画に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
     この計画の実施により、結核治療に不可欠な医薬品の必要量が確保され約3.2万人の患者の治療が可能となるとともに、乳児約14万人および19歳から49歳までの妊娠可能女性約317万人に対し、適切な温度で管理されたワクチンを接種することが可能となる。

    (参考)
     カンボジア王国は、東南アジアに位置し、人口1,250万人、国民1人あたりのGNI(国民総所得)は約300ドルである。
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