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中国の「第二次黄河中流域保全林造成計画」ほか3件に対する無償資金協力について

平成16年7月6日

  1. わが国政府は、中華人民共和国政府に対し、「第二次黄河中流域保全林造成計画(第3期)」、「第四次貧困地域結核抑制計画」、「リプロダクティブヘルス・家庭保健研修センター機材整備計画」および「新疆ウイグル自治区医療水準向上計画」の実施に資することを目的として、総額22億6,900万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、7月6日(火)、北京において、わが方阿南惟茂駐中国大使と先方易小準商務部部長助理(Yi Xiaozhun, Assistant Minister, Ministry of Commerce)との間で行われた。

    (1)「第二次黄河中流域保全林造成計画(第3期)」
    (the Project for Afforestation for Conservation of Middle Stream of Huang He (Phase II))
     供与限度額     4億2,700万円

    (2)「第四次貧困地域結核抑制計画」
    (the Project for Tuberculosis Control in Poor Areas (Phase IV))
     供与限度額     4億0,500万円

    (3)「リプロダクティブヘルス・家庭保健研修センター機材整備計画」
    (the Project for Improvement of Equipments for ReproductiveHealth/Family Health Training Center)
     供与限度額     2億7,900万円

    (4)「新疆ウイグル自治区医療水準向上計画」
    (the Project for Improvement of Medical Care Level in the Xinjiang Uygur Autonomous Region)
     供与限度額    11億5,800万円

  2. (1)「第二次黄河中流域保全林造成計画(第3期)」
     中国には1億6,000万ヘクタールの砂漠を含む2億6,000万ヘクタールの荒廃地が存在しており、特に黄土高原を中心とした黄河中流域では4,500万ヘクタールにも及ぶ荒廃地が広がり、土砂流出、飛砂、風蝕等による農業生産の低下、農地の縮小などの被害が発生している。さらに、中流域の荒廃は下流域にも影響を及ぼしており、夏季の集中豪雨による洪水、冬季の少雨による流下水の消滅等の災害をもたらしている。
     このため山西省では、同国政府の政策に沿って「山西省生態環境建設計画」を策定し、森林被覆率を2050年までに45%とする目標を立てて植林を推進しているが、広大な荒廃地に広がる貧困地域においては、財政難のため計画どおりに植林活動が進んでいない状況にある。
     このような状況の下、中国政府は山西省における荒廃地緑化のため「第二次黄河中流域保全林造成計画」を策定し、保全林の造成等に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものであり、わが国の対中経済協力計画の重点分野である環境分野への支援にも合致するため実施することとしたものである。
     なお、今回の3期目においては、約1,300ヘクタールの植林と、植林地の維持管理施設(林道、谷止工等)の整備等を行うものであり、この計画の実施により、荒廃地の復旧、現地住民への植林技術および植林地の維持管理技術の普及・向上ならびに周辺地域への黄砂の飛散の抑制等が期待される。

    (2)「第四次貧困地域結核抑制計画」
     中国は、WHO(世界保健機関)の2004年報告によると、インドについで世界第2位の結核患者保有国である。また、結核患者の8割近くは青年・壮年層であるため、結核に感染・死亡した場合には患者本人のみならず家族への経済的負担が大きくなり、効果的な治療が受けられない貧困地域の社会発展を阻害する重大な要因となっている。さらに、中国における感染症は、結核のほかに伝染性下痢症、肝炎、性病が主なものであったが、近年HIV/AIDSが流行し始め、エイズ結核も今後顕在化することが予想される。
     このような中、中国衛生部は2005年までにDOTS(医師の対面指導により毎回の服薬を確認しながら数カ月に亘り薬剤投与を施すことにより完治を目指す治療法)の対象地域を人口の90%までに拡大することにより、2010年までに結核患者を2001年の水準から半減させることを目標に結核対策に取り組んでおり、中国衛生部によるこうした取組に対し、WHO、世銀、民間支援団体、わが国等がそれぞれ連携、協調して支援を行っている。
     このような状況の下、中国政府は、貧困地域の9省、3自治区(四川省、青海省、河南省、江西省、陝西省、安徽省、貴州省、雲南省、山西省、広西壮族自治区、チベット自治区、内モンゴル自治区)における結核患者の抑制を目的とする「第四次貧困地域結核抑制計画」を策定し、対象地域における結核患者の治療に必要な抗結核薬および検査機材の購入に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものであり、わが国の対中経済協力計画の重点分野である感染症対策および貧困層を対象とした保健分野への支援にも合致するため実施することとしたものである。この計画の実施により、対象地域において約22万人の結核患者の治療が可能となり、患者本人の結核の治癒とともに、結核の予防および患者の家族の経済的負担の軽減等が期待される。

    (3)「リプロダクティブヘルス・家庭保健研修センター機材整備計画」
     中国の人口は1950年代以降急激に増加を始め、これを受けて政府は人口抑制政策に取り組み、1979年にはいわゆる「一人っ子政策」を施行した。その結果、人口増加率は1960年代初頭の2.3%から1%程度に抑制されたものの、絶対的な人口増加数は依然として大きく、人口増加が経済社会における重要な課題となっている。一方、改革・開放政策の導入により、中国経済は著しい発展を遂げているが、人口総数が多いことを背景に、特に中西部の貧困地域において、個人レベルの生活水準は依然として低迷している。こうした背景を踏まえ、人口問題の解決が経済と社会の持続可能な発展、国民生活の質的向上に資するものであるとの認識の下、中国政府は家族計画をさらに推進することとし、1984年からは、家族計画、母子保健、寄生虫予防等異なるプロジェクトを、衛生機関、教育機関等異なる実施機関および専門家、行政職、NGO(非政府組織)等異なるレベルの要員が、有機的に結合することで統合的に実施するインテグレーション・プロジェクト(IP)を、わが国NGOである財団法人家族計画国際協力財団(JOICFP)の協力により導入している。IPは現在、全国31省・自治区等において実施され、地域住民の保健衛生に対する意識向上とともに自発的な家族計画が図られるといった成果が得られており、こうした成果を背景に、中国政府はIP活動をさらに全国的に推進することとしているが、そのための要員の育成・確保が急務となっている。このような状況の下、中国政府はIPの全国展開に必要な人材の育成を目的とする研修センターの設立を計画するとともに、「リプロダクティブヘルス・家庭保健研修センター機材整備計画」を策定し、同センターの研修機材及び医療実習用機材を整備するための資金につき、わが国政府に無償資金協力を要請してきたものであり、わが国の対中経済協力計画の重点分野である感染症対策および貧困層を対象とした保健分野への支援にも合致するため実施することとしたものである。この計画の実施により、中国におけるIP活動を実施する人材の育成が強化・拡大され、中西部を中心とする地域においてIPの普及・促進が図られることにより、当該地域の住民の保健衛生レベルの向上が期待される。

    (4)「新疆ウイグル自治区医療水準向上計画」
     新疆ウイグル自治区は中国の北西部に位置し、ロシア、モンゴル、アフガニスタン、インド等の国家と隣接する面積約160万km2、人口約1,800万人を有する中国で最大の省級自治区であるが、内陸性の厳しい乾燥気候もあり、経済は全般的に立ち遅れており、自治区内における北部と南部の経済格差も著しい状況にある。
     このような状況から、中国政府は、新疆ウイグル自治区を含む西部地区(12省・自治区)の開発が国全体の経済・社会発展に不可欠であるとの認識の下、「西部大開発計画」を掲げて様々な施策を実施しているが、その中において、辺境・貧困地域に暮らす住民の医療サービスへのアクセス改善、医療サービスの質的向上を目標に掲げている。これを踏まえ新疆ウイグル自治区においても、「新疆医療衛生事業第10次5ヶ年計画(2001から2010年)」の中で、農村地域の医療衛生サービスの整備や、都市部の医療サービスの改善を計画している。
     一方、新疆ウイグル自治区の保健医療状況は、感染症罹患率が10万人当たり332.9人(全国平均188.6人)、妊産婦死亡率が10万人当たり462.8人(同61.9人)と劣悪な状況にあるほか、地理的・風土的・社会的な特性から、循環器・呼吸器疾患、婦人科疾患等が多い状況にあり、医療サービスの向上、地域間格差の是正等総合的な医療水準の向上が必要とされているが、医療財政の不足により十分対応できていないのが現状である。
     このような状況の下、中国政府は「新疆ウイグル自治区医療水準向上計画」を策定し、新疆ウイグル自治区人民病院と、南部地域の和田市人民病院における医療機材整備に必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものであり、わが国の対中経済協力計画の重点分野である感染症対策および貧困層を対象とした保健分野への支援にも合致するため実施することとしたものである。
     この計画の実施による老朽化した医療機材の更新により、診療精度の向上をはじめとする患者に対する医療サービスの向上が改善され、患者に対する医療充足度の向上が期待される。

    (参考)
     中国は、約960万平方キロメートルのアジア一の国土と、約12億8,000万人の世界一の人口を有し、56の民族(うち約92%が漢民族)からなる多民族国家である。「改革・開放政策」の下、近年著しい経済的発展を遂げてきており、2003年には9.1%の経済成長を達成しているが、一人当たりのGNI(国民総所得)は約940ドルと開発途上にある低中所得国であり、経済過熱、農業・農村問題、財政・金融問題、環境問題、国有企業改革、近年発展の目覚ましい沿海地方と内陸部との経済格差の解消といった多くの課題も抱えている。
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