
南アフリカ共和国の「リンポポ州小・中学校建設計画」に対する無償資金協力について
平成15年11月14日
- わが国政府は、南アフリカ共和国政府に対し「リンポポ州小・中学校建設計画」(the Project for Construction of Primary and Junior Secondary Schools in the Limpopo Province)の実施に資するため、8億3900万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が11月14日(日本時間14日)プレトリアにおいて、わが方花田吉隆在南アフリカ臨時代理大使と先方カダ・アズマル教育大臣(The Honourable Professor Kadar Asmal, Minister of Education)との間で行われた。
- 南アフリカ共和国は、長きに亘って、アパルトヘイト(人種隔離)に基づく人種差別政策が執られており、1994年に成立したマンデラ新政権は、人種間の社会的・経済的格差を是正するための上位計画「復興開発計画」を策定し、重点分野の一つである教育分野においては「平等で統一された良質な教育システムの再構築」を目指している。しかしながら、最貧困州の一つであるリンポポ州では特に、旧ホームランドが州面積の3割を占め、過去の負の遺産から教育施設環境面での遅れは大きく、既存施設の多くは老朽化が著しく、また教室不足問題も深刻であり、2000年時点では9,071教室が不足している。
このような状況の下、南アフリカ共和国政府は、リンポポ州の中でも、最も優先度の高い旧ホームランドの3教育区(ボッホム、コネクウェナ、ベッケンベルグ)に対する、「リンポポ州小・中学校建設計画」を策定し、小・中学校32校に対する教育施設(204教室、32管理諸室、45便所棟等)を建設し、教育機材(机、椅子等)の整備するために必要な資金につき、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
- この計画の実施により、対象となる3教育区の204教室が整備され、対象教育区の就学生徒1万1,673人に対する教育環境が整備される。
(参考)
- 南アフリカは、総人口が4,420万人で、一人当たり国民総所得が2,900ドル(2001年)の低中所得国(世銀ランク)である。
- ホームランドとは、旧白人体制下におけるアパルトヘイト政策に基づく黒人自治地域のこと。1994年の南ア民主化時に4つの独立ホームランドと6つの自治ホームランドがあった。
- わが国は、マンデラ、ムベキ両政権による南アフリカ共和国の再建復興努力を支援するために、貧困層が裨益する支援を中心として、これまで無償資金協力を実施してきており、本件実施はその一環である。
- この計画は、教育への投資が、途上国の貧困を削減し、経済成長を促進する有効な手段であるとの認識から、わが国が今後の基礎教育分野での支援のあり方として平成14年6月に発表した「成長のための基礎教育支援イニシアティブ(BEGIN: Basic Education for Growth Initiative)」および本年9月に小泉純一郎総理大臣がアフリカ開発会議(TICAD III)の際に発表したわが国の5年間で10億ドルを目標とする対アフリカ無償資金協力の具体例として位置付けられる。